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復讐の代償⑥(郷田智)

「ただいまー」


「あ、サトシおかえり!」



 家に帰って風呂に入った。


 ぼーっと湯船につかりながら今日あった出来事を思い返していた。

 


   *   *   *   *   *   *



『キャプテエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエン!!!!!!!!!』


 地面に(うずくま)っていた俺にすぐに駆け寄ってきてくれた大城。


 真剣なまなざしで俺の股間をじっと見つめて何かを考えている大城。


『誰だああああ!! キャプテンの大事なタマをこんなにしたのは!!』


『キャプテンの大切な体に傷をつけるやつは誰であっても絶対に許さねえ!』



   *   *   *   *   *   *



 なんか顔が熱くなってきた。

 のぼせたのかもしれん、もうあがろう。


 

 そのあとは両親と一緒に夕飯を食べた。

 今日のメニューは焼き魚と湯豆腐だ。



「おい、どうした。さっきからボーっとして」


「えっ」


「お前魚が大好物だろ? ぜんぜん箸が進んでいないじゃないか。いつもなら一瞬でぺろりとたいらげるのに」


「どこか具合でも悪いの?」


「なんでもない。ちょっと考え事をしていただけだ……」


「食事の時は食べることにだけ集中しろ」


「早く食べないと冷めちゃうわよ」


「はい……」



 俺の事を睨みつけながら田中とフォークダンスを踊ってる姿がかっこよかったな……。


 イカン。また無意識に大城の事を考えてしまっていた。


 飯に集中だ! 


 お箸で白身魚をつまみひょいっと口に放り込んで白米をばくばくと掻き込んだ。


 



 食事が終わったら自室に入って学校の宿題をはじめた。

 

 ……が、全く集中できない。


 なんだか胸が締め付けられるような、くすぐったいような変な感じがして胸に手を当ててみた。


(何だこの感じは……)


 気分を変えようとムギのインスタスタスを開いて今日の投稿を見てみた。


 胸毛とチクビを背景に無邪気な笑顔でピースをするムギの画像がアップされていた。


 タイトルは"Everyday is a new day."だ。


 どういう意味だろうとスマホの画面をボーっと見ていたら、いつの間にかペットボトルの中に入った薄桃色(うすももいろ)の水をみて「きれいっすね」と嬉しそうに目を輝かせていた大城の事を思い出していた。


 かわいいな……。


 イカン! まただ!


 頭を振って想像を振り払い、スマホの画面を消して机に突っ伏した。



 疲れているのかもしれない。

 


 いつもなら宿題を終わらせた後にはゲームをしたりマンガを読んだりテレビを観たりして過ごしているが今日は早めにベッドに入ることにした。


 (まぶた)を閉じると浮かんでくるのは大城の事ばかり。


 落ち着かなくてモゾモゾと姿勢を変えてみる。


 しばらくそんな状態が続いたが、眠くなるどころか体は元気になって頭はさえてフル回転の状態になって

いた。


 スマホで時間を確認したら【22時44分】だった。気づいたらベッドの中で2時間以上も悶々としているじゃないか。


 早く寝ないとと思って再び目をつぶる。



   *   *   *   *   *   *


『大城、おはよう』

 

 プ~!


 こちらに見向きすらもせずにおならであいさつをかえす大城の後ろ姿。


 プリケツなのがまた憎たらしい……。


   *   *   *   *   *   *


 ズザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザーーーーーーーーーーーーーー!!!


 2塁ベースにスライディングをきめてそのまま真っすぐ突き抜けて滑っていく大城。

『おいっ! どこまで行く気だバカあああああ! もどってこーい!!」(監督の叫ぶ声)


 アホだな……。


   *   *   *   *   *   *


『はい、喉乾いてました。ありがとうございます。やった』

 塩水をもらってとても嬉しそうな大城。


 あいつあんな顔もするんだな。いつもむっつり顔をしているかガンつけてるところしか見たことなかったから、なんか意外だ……。


   *   *   *   *   *   *


『俺に命令するんじゃねえ!』

 意味不明にキレる大城。


 まるで怒れる柴犬みたいだ。大切なボールを抱え込んで誰にもとられまいと歯茎を見せて唸っているときの柴犬……。


   *   *   *   *   *   *


 ビシャアアアアアアアアーッ!! ブシャアアアアアアーッ!!! ゴホッ!! ゴホッ!! ゴホッ!!

 むせて地面に塩水を勢いよく噴射する大城。


 おまえは高圧洗浄器かっ……。


   *   *   *   *   *   *


『あ、あ、ああ、あ、あ……』(田中の恍惚(こうこつ)とした声)

 田中のケツにやさしく繊細に触れる大城の指先。


 俺もあんなふうに大城に触れられてみてぇな……。


   *   *   *   *   *   *



「うあああああああああああああああ!!! 何なんだいったいこれわあああああああ!」


 ついにブチギレて体を起こした。


「俺ははやく眠りたいんだあああああああ!!」と叫びながら頭をぶるぶると振って、ベットから飛びおりて、床に手をつき腕立て伏せを開始した。


 煩悩を吹き飛ばそうと思ったのだ。


 ふんっ! ふんっ! ふんっ! ふんっ!


 怒りで鼻息も荒くなった。


「ああああああああああああああああああああああ!!」


 ふんっ! ふんっ! ふんっ! ふんっ!


『どうしたのサトシ! 何かあったの!? 大丈夫?』


 ドアの向こうから母さんの声がした。どうやら俺の声は母さんたちの部屋まで聞こえていたらしい。


「何でもない! ちょっと運動していただけー!」


『なんでこんな夜中に……。 急に大声出すからびっくりしたじゃない』


「ごめん」


『早く寝なさいよ』


「はーい」


 腕立て伏せをやめ、床に寝転がって天井を眺めた。


「なにをしているんだ俺は……」

 ひとりごちた……。



 その時だ。


 ピロリン♪


 スマホのメッセージアプリの通知音が鳴った。


 こんな夜遅くに誰だとおもいながらベッドの上にあったスマホを取って画面を見ると野救部の連絡用のグループチャットのところに1件のメッセージが届いていた。



【キャプテン。明日いっしょに登校しませんか? 大城】


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