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復讐の代償(郷田智)

 部活動の最後は1年以外の部員で2チームに分かれて試合をするのがいつものルーティーンだ。


 俺はキャッチャーでピッチャーの田中とアイコンタクトを取りながら股の下で指を動かしてサインを送った。


 ふと視線を感じて遠くの方に目をやると、すごい表情で俺を睨んでいる男がいた。


 大城だ。


(なんだあいつ。また試合に出してもらえなかったことを怒ってんのか?)と思ったがよく見たらタイヤ引きトレーニング中で踏ん張っている表情をしていただけだった。


 パチンッ‼ とムチでたたく音が聞こえた。


「どこ見てんだオウシロウ!! 斜めにずれていってるぞ!! ちゃんと前を向いてまっすぐ進めよ! ゴミィィ!」

「よそ見してんじゃねえぞこのクズがぁぁ!! トレーニングに集中しろ!!」


 大城がロープで引きずっている2つの大型ダンプカーのタイヤに3年の女子マネージャーの内田と田村がそれぞれ乗っていた。


 大城の顔は真っ赤だ。額には血管を浮き上がらせ、歯を食いしばって、真剣なまなざしでタイヤを引っ張っている。


(こうやってみると、大城って結構イケメンじゃねえか。体つきもがっちりしててスタイルもいいし。たまに女子どもが見学に来てキャーキャー言っててうざかったが、今ならそいつらの気持ちもわからないでもない気がする)


 また大城と目が合った。


 キュンッ!


(くっ、なんだ!? なんか今、胸がギュって締め付けられたような……)


 パチンッ‼(ムチの音)


「ウッ……」


「オウシロウ!! お前またコースから外れてんぞ!!」

「よそ見すんなっつっただろ! ちゃんとまっすぐ前見て歩けぇぇ!!」


 パチンッ‼


「アッ!」


「キャハハハハハ!」

「あははははは!」


 大城にムチを打って女子マネージャーたちが愉快に笑っている。


(なんか、楽しそうだな……)


「たらたら走ってんじゃねえぞオウシロウぉぉ!!」

「そうだ! もっと早く走れぇぇ!! そしてもっといやらしく(あえ)げよ!!」


 パチンッ‼ パチンッ‼


「あぁっ……! くっ……!」


「キャハハハハハ!」

「あははははは!」


(いいな……。俺も大城の引くタイヤに座ってあいつの体にムチを打ってみてぇな……)


 その時だっ!


 バチコンッ!!!!


「うわあああああああああああああああああああ!!!」


 突然響いたバチコンッというでっかい音。


 それと同時に俺の下半身にとんでもない衝撃が走った。


 ピッチャーの投げたボールが俺の股間に命中したのだ。


「くわあああああああああああ!!!」


 俺は片手で股間を抑え、もう片方の手は地面についてそのまま横向きに丸まって倒れた。


「あ、ごめーん!」

「郷田ー!!」

「大丈夫かー!?」

「キャプテーン!!」

「大丈夫すかキャプテン!」


 周りに部員どもが集まってきた。


「た、玉が……、中に……、は、入った……かも……しれんっ……くっ……」


「直撃したのか、ぎゃはははは」

「試合中によそ見なんかしているから」

「これはしばらくは動けそうにないな」

「キャプテン……」


 この痛みが早く過ぎ去ってくれるのを願いながらただ目をつぶっていると、遠くで女子マネージャーたちが叫んでいる声が聞こえた。


「おいっ! どこ行くんだオウシロウ!!」

「まだ訓練は終わってねえぞ! 逃げんのかよ! オウシロウ!!」


「お、なんだ? オウシロウ」

「何するんだてめえ!」

「どけ!! 邪魔だ! 道を開けろ!!」


 なんだか騒がしいなと思い、顔をあげ、目をうっすらと開けた。


 すると、周りに集まっていた部員どもをかき分けて一人の坊主頭が俺の目の前に現れた。



 大城旺士朗(オオシロオウシロウ)だ。



「キャプテエエエエエエエエエエエエエエエーーーーーーーーーーーーーン!!!!!!!!!」

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