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数日前の話③

「きゃああああああああああああああああああーーーーーーー!!」


「おっ! ちょっ! ムギっ」


 ズドーン!!


 郷田(ごうだ)の背中の上でエビぞりにさせられた九条(くじょう)はびっくりして身体をひねり、郷田(ごうだ)はバランスを崩し2人一緒に図書室の床に倒れてしまった。


「がははははは!」


「もう~。何すんのよ~! ばか~」


「がははは!」


「そこおおおおおおおおおおおおおー!!」


 突然響いた大きな声にびくっとする二人。


 振り向いたら遠くから図書室の先生がギロリと睨んでいた。


 郷田と九条はすみませんという風に軽く頭を下げた。



 立ち上がって制服についたしわをパンパンとはらう紬。


「あぁ~びっくりした~」


「ハハッ、ごめん。(つむぎ)はストレッチやった事ないのか?」


「知ってるでしょ。私が運動きらいなの」


 二人は再び席に着いた。


「でも背中が伸びて気持ち良かったんじゃないか?」


「まあ、ちょっとはね。で、何の話をしていたんだっけ」


「あ、大城だよ、大城。それで今みたいに大城と背中合わせになって2人でストレッチをやってたの。俺が腰を曲げて、背中に大城を乗せて」


「うん」


「そうしたら大城のやつ『ウッ。アッ! アア! グッ! クアッ!!』って苦しそうに声を出していたからさ、日ごろの恨みを晴らすいいチャンスだと思って。もっと腰を曲げて大城の足が浮くくらいに反らせてやったんだよ。そしたらさ、突然『あぁ……』って大城の吐息みたいなのが聞こえてきてさ、そのあとなんだか背中の方からじゅわ~ってあったかいものがどんどん広がっていく感じがしたんだよ」


「うん」


「なんだったと思う?」


「え、わからない」


「あいつ俺の背中の上でしょんべん漏らしてやがったんだよ!!!」 


「えええー!?」


「しかもそのあとアイツ謝るどころか不服そうな顔してたんだぜ?」


「え~」


「それで俺キレて怒鳴ってやったんだよ。テメェしょんべんしたいんだったら我慢していないでトイレに行ってこいよ! って」


「うん」


「そしたら『ストレッチが終わってから行こうと思っていました』ってがんつけてきたんだよ。あああああああああああああー!! 思い出しただけでムカムカしてきたああああ!!」


 バンバンとテーブルに頭を打ち付ける郷田。


「ちょ!! 落ち着いて! (サトシ)っ!」


「そこのふたりいいいいいいいいいいいああああああああーーーー!!!!」


 2人は図書室の先生に向かって軽く頭を下げた。


 すると先生は、今度うるさくしたら次はないぞとでも言うように目を大きく見開いたまま二本の指を二人の方に向けて突き指すとその指をまっすぐに揃えてそのまま首のところに持ってきてシュっと切るような仕草をして見せた。


 その様子を固まって不安そうにしながら見ていた郷田と九条、2人で顔を見会わせると再び会話の続きをし始めた。


「その後あいつのションベンまみれのまま部活を続けたんだぜ? 最悪だろ?」


「最悪ね」


「まあ、水分をたくさんとっていたおかげなのか水っぽいしょんべんだったからユニフォームに色もつかなかったし、匂いもあまりしなかったからよかったけどな、ガハハハハッ」


「不幸中の幸いね、うふふふ」


「ああ、そうだな。あと他のエピソードといえば―――」


「まだあるわけ?」


「まだまだあるぜ。部室に置いてある監督のデスクチェアに座ってくるくる回して遊んでて壊しちゃった事があってさ」


「大城君が?」


「違う、俺が。それでこのことは監督に言わないでくれ、内緒にしてくれってその場にいたみんなに頼んだの」


「うん」


「みんな監督が怒ったら怖いのがわかっているから『わかった』って承諾(しょうだく)してくれたの。みんな優しいなありがと~ってお礼言って」


「うん」


「それでそのあと監督がやってきてさ。『誰だあああああああああああ!! 私の椅子をこんなにしたのわああああああああ!!!!』ってブチぎれたの」


「こわい」


「それでみんな黙っちゃって。俺のために気まずそうにしていて、悪いな~と思っていたら、大城が『キャプテンがやりました』って何の躊躇もなく言いやがったんだよ」


「あらら」


「そのあと俺のほうを見て『ざまあみやがれ』ってマジであいつ調子乗ってる」


「ふ~ん」


「他にも数えきれないほどムカつくエピソードがあるんだよ。俺の背中に枯れた植物の種をこっそりたくさんつけてたこともあったし、大城が鉄アレイを床に置きっぱなしにていたやつに小指をぶつけて腫れたこともあったし、床に大城が寝そべっていてこけた事もあるし、大城が食べかけのおいしい棒を裸のままベンチに置きっぱなしにしていて知らずにそこに座ってケツを汚したこともあるし、大城が間違えて俺のペットボトルの水を全部飲み干したこともあったし、間違えて俺の鞄を持って帰ったこともあったし、それで怒っても不服な顔して絶対に謝らないし、俺が渾身の一発ギャグを披露してもあいつだけ真顔だし、試合中、同じチームなのに俺がとろうとしているボールをタックルして奪おうとしてきた―――」


「わかったわかった。大城君が問題児って言うことはじゅうぶんわかったから落ち着いて」


「はぁはぁ、わかってくれるか」


「うん。それで監督は何も言わないの?」


「監督は1年に甘いんだよ。俺もいちおう相談はしたけど、今年入部したのが2人しかいないから辞められたら困るって。それに大城はポテンシャルがある、きっとばける、だからお前がキャプテンとしてしっかり教育してほしい、頼むって。それで俺は嫌ですって断って逃げたの」


「そう」


「だからもう部活行きたくねえなと思ってさ」


「そうだったの……」


 机に(ひじ)をつき頭を抱える郷田。


「ああああ~どうにかして大城のやつをぎゃふんと言わせてやれねえかな」


「私に良い考えがあるわ」


「まじで?」


「うん」


「どうするんだ?」


「大城君を犬にしてやるのよ」

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