数日前の話②
「実はな、野救部に新しく入ってきた1年がよ。問題児ばかりで困ってるんだよ」
「へぇ」
「2名入ってきたんだけどよ、その2人ともがものすごくバカなんだよ」
「へぇ」
「そのうちの一人はただのバカだからいいとして、もうひとりの大城っていうやつがさ、態度も悪いし言うことも聞かないし問題ばっかり起こすしでもう手に負えないんだよ」
「どんなことするの?」
「挨拶したらプッておならでかえしてくる」
「やだ~」
「だろ? しかもとっても高い音でプッって鳴らすんだぜ? ブゥ~じゃなくてプゥッって。憎たらしいだろ?」
「憎たらしいわね」
「それで叱ってやったらさぁ、不服そうにして睨み返してくるんだよ」
「へぇ」
「そもそも普通は後輩から挨拶してくるもんだろ?」
「そうよね」
「そこを百歩譲って俺のほうから挨拶してやってるっていうのによ。あいつマジで調子乗ってる」
「そうね」
「このあいだ監督にさ。一年にボール拾いばかりさせたら可哀そうだからたまには試合にだしてあげたらどうだって言われたんだよ。それで練習試合のときに大城、お前も出ろって言ったんだよ」
「うん」
「そしたら『俺に命令するんじゃねえ!』って意味不明にキレたの」
「なんで? 大城くん試合に出たくなかったの?」
「いや。それでさ。そうか、じゃあお前出なくていいんだな? って言ってやったの。そしたら『出る』って」
「へぇ。じゃあ出たのね?」
「うん。でも大城のやつファールなのに全力で走り出すしよ。止まれって言っても止まらないし結局一周してホームまで戻ってきてよ。さっきのはファールだから走ったらダメなんだって注意したら、今度はヒットを打ったのにボールがどこに落ちるか突っ立ってのんきに見てんだよ。それで速く走れーってみんなが怒鳴ったら『俺に指図をするなあああっ!』つって逆ギレしてくるんだぜ? イカレてるだろ?」
「うん」
「この前はさ。トレーニング前に大城が水道の水をがぶ飲みしているのを見かけてさ。そんなに飲んだらお腹がふくれて走れなくなるぞって言ってやったらさ、『余計なお世話だ!!』ってまたキレてよ。で、そのあと準備運動をすることになってさ。案の定、苦しそうにストレッチしてやんの。ほんとバカだよな」
「バカね」
「顔色悪くして今にも吐きそうにしながら『オゥッ、オウッ、オゥッ』って変な声出しながらストレッチしてんだぜ」
「なにそれ、アシカみたい」
「まあそこまでは自業自得でいいんだけど。そのあとさ、ペアになってストレッチをする事になってさ。たまたま相手が大城しか残っていなかったの」
「うん」
「大城めっちゃ不服そうな顔しててマジでムカついたけど仕方ないからペアを組んでストレッチをすることになったんだよ」
「うん」
「それで、二人で背中合わせになってこうやって背中を伸ばすストレッチあるじゃん?」
「え、どんなの?」
「両手首をこうやってつかんで前かがみになって相手の背中を伸ばすやつ」
「え、わかんない」
「やったことないのか?」
「うん」
「ちょっと一回立ってみ?」
「はい」
「後ろ向いてみ」
「はい」
「まっすぐ立って」
「はい」
「両手を上にあげて」
「こう?」
「そう」
郷田智は九条紬と背中合わせに立つと両腕をあげて九条の両手首を握った。
「えっ、何?」
「いくぞ?」
すると郷田はお辞儀をするようにゆっくりと腰を曲げ始めた。
「えっ、ちょ、待って、智、あん、あぁっ! きゃあああああああああああああああああああああああああああああーーーー!!!」




