表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
53/168

数日前の話

 数日前……。


 昼食を食べ終えた九条紬(くじょうつむぎ)は図書室へ向かった。

 図書室に入ると一直線にお目当ての棚へ向かう。

 そこには怪ケツぺろりシリーズの本がたくさん並んでいた。


 今日はどれにしようかなと背表紙に人差し指を色っぽくすべらせ、"怪ケツぺろり!恐怖のびっくりおばけ大集合!"を手に取った。


 お昼休みというのに図書室には人はぽつぽつとしかいないくて、大きな長テーブルの席はがら空きだった。

 九条は端っこの席に腰を下ろした。


 色っぽく髪をかき上げ、背筋をピンと伸ばしたきれいな姿勢で本を読み始めた九条。するとどこからか「あ゛ぁ~……」と男の(うな)るような声が聞こえてきた。


 九条は全く気にする様子もなく真剣なまなざしで読書に集中する。

 

 するとまた「う゛ぅぅ~……」と男の声が聞こえてきた。


 それでも気にせず読書を続ける九条。


「はぁ……」また男の声がした。


 それでも気にせず読書を続ける九条。


「ん゛ん~……」


 それでも気にせず読書を続ける九条。


「あ゛う゛っ、あ゛う゛っ……!」

 九条はゆっくりと本を置くと、テーブルを両手でバンッとたたき、シュッと立ち上がって少し離れたところの席で頭を抱えてうつむいている角刈りの図体のでかい男に向かって叫んだ。

「なんなのいったい!? さっきから! 気になって全く集中できないんだけど!」


 男は顔をあげて振り向くと九条を見て顔を輝かせた。

「あ、ムギちゃん!」


「その呼び方はやめてって言ってるでしょ!」


「あ、すまん。つい長年の癖で」


「なんで(さとし)がこんな所にいるの? 部活は?」


「ん? 部活……? 今日は……。休んだ……」

 なんだか歯にものが詰まったような言い方をする智。


(サトシ)が部活を休むなんて珍しい。体調でも悪いの?」


「いや」


「何? サボり!?」 


「まあ……。そんなとこ……」


「え、あんたキャプテンでしょ? もうすぐ大会もあるっていうのに、そんなんでいいの?」


「いや、そうじゃない!」


「だったら何よ」


「まあ、いろいろわけがあって……」


「いろいろって何よ!」


「そこー!! 図書室では静かにしろバカー!!」


 図書室の先生が遠くから二本指をさして睨んでいる。

 九条と郷田智(ごうださとし)はすいませんと軽く頭を下げた。


 九条は読みかけの本を持って郷田のところへ移動すると向かいの席に座り音量控えめに話しかけた。


「何かあったわけ? 悩みがあるなら私が相談に乗ってあげてもいいわよ」


「まじか」


「ええ、何でも言いなさいよ。この私に解決できない問題なんてない――」


「やめとくわ」


「何でよ!」


「やっぱいいわ、うん。ありがとう」


「何よ、言いなさいよ。別に気を使わなくてもいいでしょ!」


「そうか?」


「うん」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ