放課後、学校近くの公園で
その日の放課後。
帰宅途中の九条紬は学校近くの公園で、〈下部に大型のバネのついた馬っぽい生物の形をした〉遊具にひとりさみしそうにまたがって揺れている鈴木萌果を見かけた。
彼女にバレないように後ろからこっそりと近づいて「ああああああああああああああー!!」と大声を出すと鈴木は「きゃああああ!!!」とびっくり飛び上がって馬っぽい遊具からズドーンっと落っこちてしまった。
「きゃ! だいじょうぶ!? 鈴木さん!」
「びっくりしたー。なんなんですかもぅー。急に驚かさないでくださいよー」と身体を起こす鈴木。
「ごめんねー。私もびっくりしたぁ。そんなに驚くとは思わなかったし」と九条が手を差し出して鈴木はその手をとって立ち上がった。
服や髪の毛についた土砂をパンパンと手で払い落とす鈴木。
それを見た九条は「制服汚しちゃったわね。ごめんなさい。クリーニング代は払うから」と手提げ鞄のチャックを開いてサイフを取り出した。
「クリーニング代はいいです。最初から汚れてましたから。気にしないでください」
「そう? じゃあお言葉に甘えて……」
九条はサイフを鞄にもどすとチャックをしめて隣にあったバネ付きのパンダのような生物の形の遊具にまたがった。
「お昼休みに汚したのね」
九条がきくと鈴木はなんだか気まずそうな顔をした。
「全部しってるわ。彼、逮捕されたんでしょ?」
鈴木はコクリと頷くと、馬のような遊具に腰を掛け、下を向いて靴で地面の砂をいじりだした。
「ざんねんだったわね」
鈴木は何も言わず、靴のつま先で地面にうんこの絵を描いた。
「まさか彼がそんな人だったなんてね……。でも付き合う前に彼の本性が知れてよかったじゃない」
「私のせいです……」
「えっ」
「私が平岡にあんなものを食べさせたから……。おかしくなって……。逮捕までされて……。全部私が悪いんです」
「何を言ってるの。別にあなたが恋塩を使わなかったとしても、ああいう、恋をすると周りがまったく見えなくなって制御が効かなくなるドスケベのド変態のドクズのバカ男は遅かれ早かれ逮捕されているわ。むしろさっさと逮捕されてしまったほうが被害も少なくなって世の中の為よ」
鈴木は何も言わずに黙っていたが少しして口を開いた。
「でも、私そんなに嫌な感じがしなかったんです……」
「無理やり襲われたのに!?」
鈴木は頷いた。
「彼に悪意とかいやらしさをまったく感じなかったんです。何もわからずにただ純粋に本能に従っているだけって感じがして……。私、そんな彼をかわいいと思っちゃったんです」
「うそでしょ、どこが!? ただのどすけべのヘンタイでしょ??」
「なんだろうこのキモチ。なにかに似ている気がする……」
「なに? 何なの?」
「そうだ! 小太郎だ! 小太郎にいだいていたのと同じような気持ちなんだ」
「小太郎って誰!?」




