「たのむ……」
「平岡はおにぎり好き?」
「大好きだ!」
「よかった。じゃあ準備するからそこに座って待ってて」
「おう!」
鈴木は地面に転がったていた風呂敷包みを両手で持ち上げると、地面にあぐらをかいている平岡の前に持っていきドスンと降ろすと自分もそばに膝をついた。
「何だこれ?」と不思議そうに風呂敷包みを見る平岡。
「弁当箱よ。中におにぎりが入ってるの」
「でかい弁当箱だな」
「おにぎりをちょっと大きく握りすぎちゃって、普通の弁当箱には入らなかったから」
「鈴木がつくったの?」
「そうだよ」
「すげえ!」
「でしょ? うふふ。はじめて握ったから出来栄えはあまりよくないかもしれないけど――」
鈴木が風呂敷の固い結び目をほどくのに苦労しているようだったので平岡が「オレがやるか?」と訊いたらちょうど結び目がゆるんだ。
「大丈夫、もうほどけた」
鈴木が風呂敷をひらくと中からコロ付きのクリア収納ケースが姿をあらわした。
「おお!」
平岡はワクワクで目を輝かせたが、さっきまでニコニコとしていた鈴木の顔は急に険しくなった。
クリアケースの中の様子が見えたからだ。
おにぎりは端っこの方に片寄っていてぐにゃっとつぶれて割れてキモい形になっていた。
さっき投げてしまったせいだ。
こんなのはおにぎりと呼べない。
鈴木はとっさに風呂敷で包んで隠した。
「どうした?」
「ごめん。やっぱりおにぎりはなかったことに」
「へ?」
「今日はおにぎりなし!」
「なんで!?」
「気分が変わった」
「そんな!」
「明日またつくってきてあげるから。ほんとごめん。じゃあね」
そう言って収納ケースを風呂敷ごと抱きかかえて立ち去ろうとする鈴木。
平岡はとっさに片手を伸ばして鈴木の足首をガシッとつかまえた。
「待て鈴木!」
「待たないっ!離して!」
鈴木が平岡の手を振り払うように足をひっぱったので、胡座をかいていた平岡は体勢を崩して地面に仰向けに寝そべる形になってしまった。
それでも逃がしてなるものかと平岡はぐるりと身体を捻ってうつ伏せになるともう片方の手も伸ばして両手で鈴木の足首を掴んだ。
「離してったら!」
「嫌だ!」
しかたがないので鈴木は片足を掴まれたままゆっくりと歩き出した。
ずるずると引きずられる平岡。
「たのむ! 止まってくれ!」
「イヤよ! 放せヘンタイっ!」
「オレ、今日寝坊して、朝から何も食べていないんだ!」
「売店で何か買って食べればいいでしょ!」
「財布を忘れたんだよっ……」
「自業自得じゃない! 放してっ!」
「もう腹がペコペコでしにそうなんだ……。くっ……。だからっ……。何でもいいから……。食わせてくれ……」
無視して歩く鈴木。
「たのむ……」
平岡がもうだめかと諦めようとしたその時だ、鈴木がぴたりと足を止めた。




