ファーストフード店
二人は近くにあったファーストフード店に入った。
耳川はトロピカルパイナップルバーガーセットを、鈴木はイチゴホイップバーガーセットを注文した。
「お会計は1260円になります」
「1260割る2は……。えっと~……」
指を折りまげたり右上を見上げたりして険しい顔で計算を頑張る耳川。
「耳川さん。いいよ、私がおごるよ」
「ほんと!?」
耳川の表情がパッと明るくなった。
あまりにもわかりやすい彼女に鈴木は少しだけ口元が緩んだ。
「うん。今日は色々助けてもらったし」
「やった~。ありがとう~もえかちゃん~」
☆ ☆ ☆
2人は冷たい水の入ったコップとシェイクとポテトがのったトレーを持ってテーブル席に移動した。
鈴木が先に座ると耳川はそのとなりに腰を下ろした。
鈴木は何で隣? と思ったがあえてつっ込みはしなかった。
「「いただきま~す!」」
フライドポテトにケチャップを付け口に運ぶ。
「ん~ポテト美味しいね~」
「うん、美味しいね」
耳川は、フライドポテトをバニラシェイクにつけて食べたらおいしいのではないかとふと思いついて実際に試してみた。
「おいしい! もえかちゃん! これ、バニラシェイクにつけてもおいしいよ! もえかちゃんもやってみて!」
「私はいい……」
「え~おいしいのに~」
「それより耳川さん。あの注射器、返しに行ったほうが良いよ。これ食べ終わったら一緒に学校に行く?」
「うんん。大丈夫。明日返すよ」
「早く返したほうが良いよ」
「だって、いっぱい写真に撮ってSNSにアップしたいもん。そうだ! もえかちゃんが撮ってくれる?」
「え……」
「わたしがポーズをきめるから」
そう言うと耳川はてにもっていたバニラシェイク付きのポテトを口に放り込み、鞄からスマホを取り出して鈴木に渡した。
「はいっ」
「なんで私がっ――」
「おねが~い! おねがいおねがいおねがいおねがいおねが~い! 一生のおねが~い!」
手を合わせて頼み込む耳川に鈴木は仕方なく応じることにした。
「わかった……」
☆ ☆ ☆
耳川は左手にフライドポテトの入ったカップ容器を持ち、右手で注射器を構え、両方の頬に添えて目をつぶり唇を尖らせた。
カシャ!
耳川は胸を強調するように腰をかがめ、突き出したおしりに注射器を刺す真似をして、もう片方の手はバニラシェイクを持ち、おちょぼ口でストローを咥え、目をつぶるというセクシーポーズを決めた。
カシャ!
届いたパイナップルバーガーの包み紙を半分開いてバンズに注射の針を刺す真似をして驚いた表情をする耳川。
カシャ!
両手で構えた注射器を頭の上に掲げて、バナナのように体を曲げ、目を閉じ唇を尖らせる耳川。
カシャ!
耳川は次々とポーズを決めて鈴木はそれを撮影した。
そのうちに耳川が「もえかちゃんもいっしょに撮ろう?」と言い出して、耳川指導のもと鈴木も意味不明なポージングにしばらく付き合わされることになってしまった。




