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やっとで保健室

「キャハハハ、私もう我慢できないかも~。もれそう~」

「キャハハハ、わたしも~」

「膀胱やばいよね~」

「ね~。パンパン~」

「「キャハハハ~」」


 二人の少女が仲良さそうに会話をしながら廊下を歩いていた。

 二人とも両手で股間を押さえてモゾモゾした歩き方だ。

 おしっこがしたくて授業を抜け出してきたのだ。

 いわゆる連れションだ。


 二人がニコニコと廊下の角を曲がり階段にさしかかると、そこには血にまみれて倒れている3人の生徒の姿があった。


「「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアーーー!!!!!!」」


 チョロチョロチョロチョロ~。


 驚いた二人は立ったまま身を寄せ合い、一緒にオシッコをもらし、ガクガク震えながら「先生呼んでこよう」「うんっ」と走ってどこかへ行ってしまった。




「……ん」



   ☆   ☆   ☆



 ――3時間後。



 保健室のベットの上で鈴木は目を覚ました。


 視界が暗さに違和感があったのか、鈴木は自分の目元に触れて、かけていたミラーレンズのサングラスを外し、これは何だ? という風に少しの間ながめていた。


 身体を起こそうとしたら頭から何かがポロリと落ちてきたので反射的にキャッチした。

 

 見たらポリス風の帽子だった。


「なにこれ……」


 ふと、自分が着ている服が胸元の開いた外国のポリス風の衣装である事に気が付いて困惑して。

 髪の毛がきれいに巻かれている事にも気づいてまた困惑して。

 腰まで被っていたブランケットをのけてみると、ポリス風の股の短いパンツを穿いていて腰の黒いベルトには手錠と警棒のような物がぶら下がっている事に気がつきさらに困惑していた。


「あら、もう起きたの」


 机に向かって書き物をしていた白衣の女性がデスクチェアをくるりとまわし鈴木の方を見た。

 ゆるく巻いた長い髪を片方に流し、色白で丸メガネをかけ、アゴにチャームポイントのほくろがある色気ムンムンの綺麗な女性。

 保健室の今田明美(いまだあけみ)先生だ。


 明美先生はセクシーに組んでいた脚をくずし立ち上がって鈴木の所へやって来た。


「気分はどう?」


「すごく良いです」


「そう、よかった」


「私なにかの病気なんですか?」


「フフッ、興奮のしすぎで鼻血が出すぎたようね」


「興奮のしすぎ?」


「思春期には良くあるの。しばらくは刺激の強いものは避けた方がいいわ。それから食事はいっぱい摂るように」


「はい……。それと、あの。この服は…何ですか」


「ああこれ? 着替えの服がこれしかなかったの。制服は血だらけだったから。どう? かわいいでしょ?」


「え……。ちょっとセクシー過ぎじゃないですか…‥」


「他に残っているのはブルマとぉ。バニーガールとスク水しかないけど着替える?」


「あ、いいです。でもなんでコスプレの衣装が学校に」


「私のよ。もう着けないやつをリサイクルショップに持っていこうと思って。ずっと車に積んであったの。でもなかなか行く時間がなくてね~」


「そうなんですか……」


「鈴木さんよく似合っているし。あげるわ」


「え。ありがとうございます……」


 明美先生はポリス風の帽子を取り鈴木の頭にかぶせて、少し乱れていた鈴木の髪を手櫛で軽く整えた。


「髪も巻いてくれたんですか?」


「そうよ、コスプレするなら細部にまでこだわりたいでしょ? 顔も見てみて」

 そう言って手鏡を渡す明美先生。


 鈴木は受け取った手鏡で自分の顔を確認して驚いた。

 まつ毛はバチバチで濃いアイメイク。テカテカのプリッとした大きい唇に顎にはセクシーなほくろまであったからだ。

 

「すごい……。自分じゃないみたい」


「でしょ」


萌果(もえか)ちゃ~~ん!」


 とつぜん保健室にパステルピンクのえちえちなナース服を着た濃い化粧の女が入ってきた

 

 耳川実鈴(みみかわみりん)だ。

 彼女もコスプレをしていた。

 

「萌果ちゃんが起きてる~! 無事だったんだ~」

 耳川は鈴木を抱きしめ喜んだ。


 鈴木は少し照れくさそうにしながら遠慮がちに耳川を抱きしめ返した。


 耳川は「よかった~。うれしい~。萌果ちゃ~~ん。ほんとによかった~。んん~かわいい~。好き~。すりすりさせて~。んん~~~~。やわらか~い。かわいい~」と目をつぶって鈴木の抱き心地、触り心地をじっくりと味わっていた。


 その様子を見ていた明美先生も2人をまるごと抱きしめるようにして加わった。

「よかったわね~二人とも~。いいね~。かわいい~ね~。ほんとよかったわ~。いつも健康で元気でいてね~。んん~~~~~」


 3分ほどたって「もういいです!長いです!」と鈴木は耳川と明美先生を突き放した。


「なんで先生まで!」


「二人を見ていたら加わりたくなっちゃったの」

 と明美先生はデスクのほうにもどり足を組んで座ると、机の上にあったビールの入ったジョッキを取ってひと口飲んだ。


「そうだ、萌果ちゃんにお水買ってきたよ」

 と耳川はスカートのポケットから500ミリのペットボトルを取り出して鈴木に渡した。


 キャップは開封済みで水は3分の1も入っていなかったけど鈴木は「ありがとう」と笑顔で受け取った。


「わたしたちどうやって保健室まで来たんですか? そういえば平岡は?」


「彼がここに運んだのよ。あなたたちを米俵みたいに両肩に抱えてね」


「そうみたいだよ、もえかちゃん」


「平岡が……」


「みんな血まみれだったし。彼は半裸だし。見たとき私、何事かとびっくりしちゃった。あははは」


 明美先生はもうひとくちビールを飲んで話を続けた。


「それに彼ね。必死だったのか分かんないけど私の事を間違えて『かあさん!!』って呼んだの、あははは。わたしがお母さんだって? あはは。私が高校生の息子がいる母親に見える? 母性があふれているの私? あはははは。彼、すぐに『先生!』って言い直してたんだけど。気まずそうにしててね。それもかわいかった~。あははははは~」


 楽しそうに笑う明美先生を鈴木と耳川はほほえましく見ていた。

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