怒りからなのか、恥ずかしさからか、それとも体力の限界か
「ごめん鈴木!! 進む道を間違えた!!」
平岡は鼻血を大量に吹き出しながら謝り、あわててバックして鈴木のシャツの中から顔を出した。
鈴木は四つん這いのままぷるぷると震えていた。
怒りからなのか、恥ずかしさからか、それとも体力の限界か、本人もよくわからない事になっていた。
鈴木の股の間から抜けだした平岡は「もう一度いくぞ!」と再び匍匐前進を始めた。
しかし動揺して焦っていた平岡は間違って鈴木のしりに頭突きをしてしまった。
「ああんっ!!」
「あっ! ゴメン!!」
「なにしてんのよっ!! もう!!」
「次は気を付ける!!」
再び鈴木の下に侵入する平岡。
今度は慎重に前を確認しながら進んで、垂れさがっていたシャツをちゃんとどけて、ちゃんと鈴木の下に重なるようにして潜りこむ事が出来た。
「よし。鈴木、オレの首を絞めろ!」
「えっ、首を?」
「そうだ!」
鈴木は両手をそっと床からはなしてゆっくりと平岡の背中にもたれかかった。
なんだか顔が凄く赤くなって鼓動もドクドクとすごく早くなった。
鼻の穴からは荒い鼻息とともにピッ、ピッと少量の鼻血が吹き出している。
もう鈴木には出せる血が残っていないのかもしれない。
「はやくしろ! 首を絞めるんだっ」
「こ、こう??」
鈴木はよくわからないまま平岡の首を両手でつかんでギュッとしめた。
「‥‥…く、くるしい……。は、離せ……。間違えた……」
「えっ……?」
鈴木は手の力を弱めた。
「はぁ、はぁ……。首を絞めるんじゃなくて……。オレの首に‥‥‥。腕をまわすんだ……」
「こ、こう??」
鈴木は今度は平岡の首に抱き着くようにして腕をまわした。
「そうだ……。それでいい。よし、立つぞ。しっかりつかんでおけよ」
「うん」
(わたし重いけど大丈夫かな……)と鈴木はちょっと心配だったが軽々と立ち上がる平岡をみて(すごい……)と感動した。
そんな時だ。
「萌果ちゃーーん!!」
聞き覚えのあるきゃぴきゃぴの叫び声がして鈴木と平岡は同時に振り向いた。
声の主は耳川実鈴だ。




