表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/162

「しょぼん……」

「喧嘩しないで!」と叫ぶ耳川。


 オレと鈴木は茶色く濁った水滴をポタポタと垂らしながら固まってしまった。


「喧嘩したら嫌だよ! それに今は授業中だよ! 大声出したら先生たちに怒られるよ!」そう言って耳川は通路の端にスチールのバケツをそっと置いた。


 ふと、自分の頭に何かがびちゃっと張り付いているのに気がついて、取って見てみたらびちょびちょになったきったねえ雑巾だった。


「みみかわおまえ……」


「耳川さんそのバケツに入っていた水って……」


「仲よくしようよ、同じクラスメイトじゃん! 高校生活を一緒に過ごすかけがえのない仲間じゃん! そうだ! 腕組んで行こう!」そう言って耳川は強引にオレと鈴木の腕に手を回してきた。


「何でお前と腕組んで歩かないといけないんだよ」とオレは耳川の手を跳ねのけた。

「じゃあ肩組もう?」と肩に腕を回して来たので「やめろっ、はずかしい」とまた跳ねのけた。


「何で~。じゃあカンチョーしてやる~」と右手の人差し指をぴんと伸ばしてオレのケツの穴めがけてつっ込んできたのでぎゅっとケツ筋に力を入れ、ギリギリ穴の中には届かないところで阻止してやった。


「いった~い! なんで男子のお尻ってこんなに固いの? 石みたい」

「筋肉だ!」

「あんたたち何してんの? バカみたい。中学生じゃあるまいし。早く行きましょう」

 鈴木が歩き出し、鈴木の腕を掴んでいる耳川と、耳川の指をケツで挟んだオレは連動して再び歩き出した。


「うう~指が折れるかと思った~。ていうか抜けないんだけど……」

「お前誰にでもカンチョーしてんのかよ?」

「誰にでもじゃないよ。ちゃんと心を許しあった仲の人にしかやらないよ」

「オレはお前の事全然知らねえし。まだ出会って1週間とちょっとしか経ってないし、何も許してねえし」

「一度話したら分かるよ! この人は受け入れてくれる人だって。ね? 萌果(もえか)ちゃん? 萌果ちゃんも許してくれるよね?」

「勝手に決めつけないでくれる。私は誰にも気を許した覚えはない。馴れ馴れしくしないで」

「えぇ……」


「それにカンチョーなんて危険な行為を、よくなんの躊躇(ちゅうちょ)もなくできたわね。お尻の穴ってみんなが思っているよりもデリケートなのよ。それを知っててやってんの? それに今の時代セクハラだって訴える人もいるんだから、もう二度とやらないで」

「そこはちゃんと手加減してるよぅ……」

「だまれ下品! 恥を知れ! 絶対に二度とすんな!」

「わかったよぅ。親友がそこまで言うなら、私カンチョーはもうしない」

「勝手に親友認定しないでくれる。私はあなたの事を何とも思ってないんだから」

「しょぼん……」


 鈴木はきつい言い方だったが、耳川と腕は組んだままだしまんざらでもないのかもしれない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ