数学の授業
「ああああああああああああー!!! あああーーーーっ!!」
男子トイレの洗面台で平岡大志は叫びながら鼻血のついた制服とTシャツを洗い、水をしぼり、外廊下の手すり壁にバシッとかけて干した。
平岡が教室に入るとちょうどヴヴヴヴ~という低音のデスボイスの入ったデスメタル風のジングルが鳴り授業が始まった。
* * *
「はい、ここのカッコに入る答えわかるやつ~?」
数学教師の多部史郎がチョークで黒板を差して言うとクラスの全員がハイハイハイハイハーイ!と勢いよく腕を上に伸ばした。
「じゃあ……古川!」
「はい!」と勢い良く立ち上がる古川ヨシオ。
「五十三!」と元気に答えた。
「違う! 座れ! じゃあ次は……」
ハイハイハイハイハーイ!ハーイ!とクラスメイトの全員が勢いよく手をあげる。
「耳川!」
「はい! 七十三です!」
「違う! 座れ!」
「島田!」
「千五十三!」
「違う! 田中!」
「一万二十四!」
「違う! 平岡!」
「はい!」平岡大志はよしきたとばかりに元気よく立ち上がった。
「ところでお前は何で裸なんだ? 上着はどうした?」
「汚してしまいまして。洗って干しています!」
「そうか、で、答えは」
「七!!」
「ブー!! 違う! すわれ!」
平岡は着席して再びクラスの全員と一緒にハイハイハイハイハーイ!と手をあげた。
「鈴木!」
「ハイ!」と立ち上がる鈴木萌果。
「おまえ鼻血でてるぞ」
「えっ……」
多部に指摘され鈴木は鼻の下を触った。
その指についた血をみた鈴木はびっくりして、スカートのポケットからすぐにハンカチを取り出してはずかしそうに鼻を押さえた。
「大丈夫か? 顔も赤いしのぼせてるんじゃないのか?」
「大丈夫です…‥・」
「そうか、じゃあ答えを言え」
「な、七……」
「ブーー!! 全然違う! 座れ! もういい! 答えは三角柱だ! ちゃんとノートに取れ!」
鈴木は壮大に間違えた事によるショックと恥ずかしさで俯いて席についた。
そして落ち込んだ様子でノートに三角柱と書いているとき、ふと隣の席のほうから視線を感じて、目を合わさないようにちらりと横目で確認したら、平岡が見ているじゃないか!
鈴木は気まずそうにして顔を反対の方にそらした。
すこし経って、さすがにもう見ていないだろうと平岡の方をチラリと確認してみたら、まだこっちを見ている! 鈴木はまた顔をそらしてかくした。
(なに見てんのよ、バカ平岡。プンプン!)
平岡は調子が悪そうな鈴木が大丈夫か気になっていたのだ。




