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第十二話 突(然の奇行によって)破(壊される)口

いつもご愛読いただきありがとうございます。


陸兄曰く。


精神がマトモではない状態で生み出された作戦は八割が奇行、二割が斬新なアイデアとして語り継がれるらしい。


正直二割でも盛っていると思うが、今回は俺が奇行に走る側だ。二割と言わず五割は成功すると信じ込んでおこう。


『!!!!!!』


「大声で喚きたいのはこっちだよバカヤロー!」


俺は大量の追加発注を受けた斬撃を引き連れながら、高速で飛行する丸太にしがみついていた。


「丸太が無ければ今頃こま肉だなぁ!」



飛ぶ斬撃の速度は、残念なことに俺の全力疾走の何倍も速い。


エゲツないホーミング性能も相まって飛び石作戦では到底太刀打ち出来ないので、急遽編み出した新しい移動法が『桃白白ver.2.0』だ。


丸太の内部に埋め込んだ複数の魔法陣を操作する事でまるでラジコンのように自在に操る事ができ、ミスったら即爆破のスリル要素もあるスグレモノ(欠陥品)だ。あまりの高性能に冷汗が止まらないね。


…わざわざ丸太を使う必要があるのかって?


魔法陣だけだと見栄えが悪いのがなぁ…何が悲しくて空中を磔にされながら平行移動しなくちゃいけないんだ。


「くそ…さっさと口を開けばいいものうおぉ!?」


目玉から突然飛び出したレーザーが右耳を掠め、翻った髪の毛が少し焼け焦げる。


「コイツ…マジでめんどくせぇ…」


俺は悪態を吐きながら赤いポリゴンエフェクトが漏れる耳を押さえ、街で買った最後の回復アイテムを飲み干した。


俺の考えた奇こ…作戦は、残念なことに怪物が噛み付いてこないと何も始まらない。


「なのにコイツと来たら…」


さっきまでは顔の付近を飛び回るだけでしつこく噛み付いてきたのに、急にパタリと鳴りを潜めやがった。


あれか!?物欲センサーか!?古のソシャゲどころか最新のVRまで俺の邪魔をするのか!?


「さっさと口開けろ駄犬がよぉ!」


俺は半ば怪物の眼前をなるべく鬱陶しく飛び回る。






そうして燃え上がるテンションのまま煽りを捲し立てること暫く。


遂にその時が訪れた。


「…っっ!…やっとか!」


怪物が大きく口を開き、目の前の俺を飲み込まんと襲いかかる。




「…」





眼前を影が包み込む。




「…」




光を飲み込むかのような深い闇を湛えた口が迫る。




「……っ」




命を刈り取る最適解が如き造形をした鋭牙が、びっしりと羅列する様がはっきりと見える。





…まだ。堪えろ。


……


………


…………今?


…っ今だ!


「っ!」


俺は丸太を蹴り付けると、顎が閉じるギリギリの所で口内に飛び込む。


間一髪靴底を掠めた牙が噛み合わさり、周囲が闇に閉ざされた。


「随分と待たせやがって…」


タイムリミットは残り一分半。ある意味ではそれも悪くなかったのかもしれない。


実に寿命(残りライフ)の半分をふんだんに使用した嫌がらせによって頭に血が上った怪物は、完全に周りが見えなくなっていた。


何なら俺自身も、コイツの存在を忘れてかけてたかもしれない。


「おりゃぁ!」


俺はガッチリと噛み合わさった牙を蹴り付けると、一気に喉奥へと跳躍した。


俺の背後には、大木や岩石程度の障害物なら容易く切り飛ばして追いかけて来る熱烈なファン(狼の爪の斬撃)が大勢ついている。


それが糸で繋がっているだけの頼りない首元に炸裂すればどうなるのか?


『‼︎‼︎!‼︎!!?!!!⁇⁈』


くぐもった声が喉内に反響する。


足元の縫い目がざっくりと大口を開け、暗い洞穴の様な喉奥が白い薄明かりで満たされた。


タイトルには口とあるけど、実際に切り裂かれたのは喉の縫い目です。


身をぶった斬るのは流石の斬撃でも表皮が硬すぎて無理です。

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