百鬼 庭園所業
兄弟で比べられるなんてよくある話だ
実際の所僕の兄はすごかった
学校ではいつも首席
大会に出れば賞を取り
絵に描いたような完璧人間だった
それを思えば兄を追って上京をする
なんて容易い事だった
時が少し経ち
上京して二回目の春
生活に慣れ始めた頃の事
朝の早い兄を見送り
自身の支度を早々に済ませて
学校に向かう途中の交差点で人混みができていた
右を見ても左を見ても
救急車やパトカーやら
遠くの方では消防車が音を鳴らしながら
近づいて来ていた
事故らしい
後々聞いた話によると
赤信号なのにも関わらず
トラックが突っ込み
人を大量に引いたようで
辺りは阿鼻叫喚の地獄絵図とかしていた
僕に何ができるわけでもないし
警察や緊急隊員の邪魔になるだろうと思い
その場を後にしようとした時
僕の目に映ったのは
横たわる追いかけ続けた背中だった
出かける前の何気ない会話が脳裏に焼き付いた
「あゝ今日は気温が低いらしいから」