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協力者たち

 

 4の鐘が鳴って暫く経った頃。レイとセラフィマ姫による人員選抜と、養父様達の確認が終わったらしい。「クラリッサの代わりとなる協力者を紹介する!」という声が上がった。


「協力してくれるのは、こちらの12名だ」


 養父様の合図と共に対策本部の扉が開く。セラフィマ姫を先頭に、ぞろぞろと入室してくる面々の姿を見て、師団員たちからは「おぉっ」という声が聞こえてきた。


 私も師団員たちの隙間から、一体誰が選ばれたのかと覗き見る。


 セラフィマ姫、レイの後は……アル兄様、リオ兄様、ソフィーに……養母様!?


 意外な人物の登場に目を見開く。その後もよく見知った人物達がぞくぞくと入ってきた。


 カタリーナ、ランヴァル、レオニード……それにイザベラにジェニファー、バーバラか……なるほどね。


 養父様から「信用のおける人材であること」と言われた以上、これまでに関わりのある人物だろうとは思っていた。そして、大前提としてある程度魔力量のある人材である、という条件がある。それらを踏まえると、カタリーナやランヴァル、レオニードは確実に入ってくるだろうと思っていた……まさか養母様までいらっしゃるとは想定外だったが。


 それにしても、まさかイザベラ達にも協力を仰ぐとはね。それほどまでに選べる人材が少なかったのか……それともセラフィマ姫の助言があったのかしら? 他に候補がいれば、レイならそっちの子を選びそうだし……。


 そんなことを考えている内に、師団員に向けた12人の説明と今後の動きの共有は済んだらしい。1人集団から離れて結界の維持に勤める私の方に彼らはやってきた。


「クレア」

「養母様。まさか養母様までいらっしゃるとは思いませんでした」


 声を掛けてきてくれた養母様に素直に驚きを伝えると、微笑み返される。


「旦那様やクレアが頑張っているというのに、私は守られているだけなのが歯がゆかったのだけれど……レイから話を聞いてね。なら、私も入れて頂戴と伝えたのよ」

「そうだったんですね」

「クレアお姉様! 私も頑張ります!」


 私と養母様の間にソフィーが元気に入ってきた。


「ありがとう、ソフィー。でも、まだ専用魔石のない貴女には少し負担が大きいんじゃ……?」


 魔術師団員でもかなり疲労が激しかったと聞く。それなのに、まだ1年生のソフィーが入ることに不安を感じる。


「それは私も考えたけれど、信用の面で他の人はやっぱり見劣りしてしまうし、それ以前に『私だけ何もできないなんて嫌です』って言われたらね……まぁ、一応班分けでソフィーの負担を軽減できるようにはする予定よ」


 答えてくれたのはレイだった。それを聞きながら、レイの隣でソフィーがぶんぶんと首を縦に振る。


「そう。ありがとうね、ソフィー。でも、無理はしないで」

「勿論です。それよりも、クレアお姉様の方が私は心配です……!」


 うす茶色の瞳を潤ませるソフィーの肩に手を置き、レイが止める。


「ソフィー、クレアのことが心配なのは私達も同じよ。だからこそ、クレアがこっちを心配しなくていいよう、私達で結界を維持するんでしょう?」

「……はい、そうでした。すみません、取り乱してしまって……」


 ソフィーが落ち着いたのを確認して、レイが手を叩く。


「まずはジェニファー、イザベラ、ランヴァル、バーバラ、姫様、アル兄様の6人がクレアと代わるわ。残りの6人はその後担当よ。さ、クレアと交代宜しくね」


 それに応える様に、ジェニファー達6人が私の周りに集まってくる。


「……まさか貴女も協力してくれるとは思わなかったわ、イザベラ」

「こんな事態ですもの。臣下としてできることをするのは当然でしょう」

「そうですわ! クラリッサ様のお力になれるなら、私は喜んで協力致します!」


 すまし顔で答えるイザベラとは対照的に、ジェニファーが元気に会話に入ってくる。それが合図というかのように、6人の魔力が魔法陣に注ぎ込まれていく。6人の魔力で問題ないことを確認して、私は魔力を注ぐのを止め、光の杖を消す。


「――あとは宜しくね、みんな」

「こっちは問題ないから、貴女は貴女にしかできないことをなさいな、クラリッサ」

「えぇ、ありがとうイザベラ」


 素直ではないイザベラの激励に感謝をし、椅子から立ち上がる。その瞬間、養母様に抱きしめられた。


「……養母様」

「話は聞きました。……どうか、無事に帰ってきて頂戴。無理はしないで。危険だと思ったら、逃げていいのですからね」


 ウルラである以上、それは許されないだろう。クロッキリアルテー神の呼び出しに応えて、その後どうなるかはわからないが無事に帰れるとは思えない。だが、心の底から私の事を案じてくれているのが伝わってきて嬉しかった。


「はい。ありがとうございます、養母様」


 ぎゅっと一層強く抱きしめられてから、解放される。養母様の後ろには、クロスフォード公爵家の面々が集まっていた。


「クレアお姉様……」


 今にも泣きそうなソフィーの頭を撫でる。


「心配しないで、ソフィー。私の守りの固さは知っているでしょう?」


 無事に帰れるとは思わないが、かといって素直にやられるつもりもない。先程の一撃も、結界にヒビこそ入ったがあの衝撃を耐えられたのだ。私1人に初手から本気を出してくることもないだろうし、それなら作戦の立てようもある。


 そんなことを頭の片隅で考えながら、強がり半分本音半分でソフィーに話しかけつつ微笑むと、「そうでした。お姉様の結界は強固ですものね」と瞳を潤ませながらも返事してくれた。


「レイも、リオ兄様も……皆、行ってきますね」

「えぇ。帰りを待ってるわ、クレア」

「いってらっしゃい」


 残りの皆にも挨拶し、グレン様の開けてくれた扉を抜ける。養父様とグレン様に先導されて、私はシスルの待つ別室へと向かった。


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