深淵の中
『ああ、ようやく覚醒したぜ……ったく、手間のかかるガキだ』
深淵とでも言えばいいのか。
親切な焼き鳥こと、第一地獄炎の魔王『火乃加具土』は、燃え盛る身体を横たえたまま大きく欠伸した。
それを見ていたかのように、火乃加具土のいる場所に蒼い光が集う。
『ふふ、親切なこと。第一地獄炎の魔王『火乃加具土』が、人間の子供に授業をしてやるとはねぇ』
『なんだババァ……別にいいだろ?』
『誰がババァじゃ誰が!!』
青いおばさんこと、第二地獄炎の女王『アヴローレイア・コキュートス・フロストクィーン』が地団駄を踏む。フレアにおばさん呼ばわりされてからババァと言うとキレるようになった。
アヴローレイアことアウラは地団駄を止め、軽く指を鳴らす。すると背後に氷の椅子が現れ、そこに座った。
『魔神器の覚醒。これでようやくまともに炎が使えるようになった、というわけね』
『ああ。少なくとも、オレの炎の使い方は完全に理解した。とはいっても……魔神解放を使えば肉体に多大な負荷がかかるが』
『切り札、ってところね……さぁ、次はわらわの番かしら?』
『好きにしな……ん?』
すると、深淵の大地から可愛らしいモグラがひょっこりと現れた。
『やぁやぁ、お久しぶりなんだな!』
『あらガイア。あなたもあの子に力を?』
『そうなんだな! あの子、優しいから好きなんだな!』
黄色いもふもふのモグラは丸っこい爪をパタパタさせる。
『残りのみんなもあの子を好きになるといいんだな!』
『はいはい……ったく、お気楽なモグラだぜ』
『モグラじゃないんだな! ガイアなんだな!』
第三地獄炎の魔獣ガイアは地団駄を踏む。しかし、とても可愛らしかった。
アウラは椅子に深く腰掛け、ため息を吐く。
『それにしても……嫌な感じね』
『あん?』
『天使よ天使。一人の呪術師に寄ってたかって……よっぽどヒマなのかのぅ』
『ま、昔みてぇに呪術師と戦う機会がないからヒマなんだろ。特に、規格外の連中はな』
『規格外……私らからすれば雑魚同然だけど、未だ第一地獄炎しか覚醒してないこの子で勝てるかの?』
『さぁな。ま、なんとかなるだろ。炎以外にもけっこう戦えるし』
『確かにね……それに』
『それに?』
火乃加具土は大きく欠伸する。眠いのか、どこか虚ろだった。
『ふふふ。フレアにも可愛い彼女ができそうなのじゃ!! 清楚系もいいけど、幼馴染系の活発娘もまたいい……ふふふ。あのカグヤとかいうおなご、フレアにピッタリじゃ!!』
『……じゃあ寝るわ』
『おやすみなんだな! ぼくも戻るんだな!』
『あ、こら話を聞けーっ!!』
火乃加具土はスヤスヤ眠り、ガイアは深淵の大地に潜っていく。
残されたアウラは地団駄を踏み、魔王たちの会話は終わった。




