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地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第五章・砂漠の王国と双子天使

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BOSS・鋼操天使ジャガーノート①

 でかい金属の天使。それが最初の印象だった。

 次に思ったのは、下半身が車輪。天使の上半身に荷車を合体させ、手が四本ある白銀の化け物だ。

 手には剣、槌、槍、銃が握られ、人形みたいな顔にある目は赤く蘭々と輝いている。

 大きさは……全長三十メートルくらいかな。そんな化け物が……。


「「殺す!! お前だけは殺す!! 殺してやるゥゥゥゥゥ~~~っ!!」」


 サンダルフォンとメタトロンの声で、襲い掛かってきてた。

 狙いは俺なのか。それとも見境なくなってるのか。

 中庭を破壊し、城の外壁を破壊しながら俺たちを追う。

 俺はふらつくダルツォルネに肩を貸し、レイチェルはニーアを抱っこ、カグヤは後ろを見つつ走っている。するとカグヤが言った。


「つーか何よあれ!?」

「知るか!! お前囮になって引きつけろ!!」

「ふざけんな!! 面白そうだけどここじゃまずいでしょ!?」


 そう、まずい。

 なぜなら、城の外は城下町。大勢の人がいる。

 レッドルビー王城はオアシスの中心に浮かぶ円形の浮島で、今はそこをぐるぐる回っている状況だ。逃げるにしてもオアシスを越えないといけないし。逃げるにしても城下町を越える必要がある。


「……頼む。城下町には住人がいる、なんとかこの場で」


 と、ダルツォルネが言う。

 んなことわかってる。でもどうしろってのよ……。

 でも、こうなったのもある意味では俺の責任だ。なんとかしないと。


「わかった。できるかどうかわからんけど……やってみる」

「貴様、何をするつもりだ!?」

「レイチェル、ニーアを頼む。ダルツォルネのおっさん、みんなを城の中に避難させてやってくれ」

「……わかった。勝負に負けた敗者は勝者に従うのが道理。引き受けよう」

「あんた、そういう潔いところかっこいいよ。カガリビには申し訳ないけど、あんたが王様になったほうがいいと思う」

「…………」


 俺はダルツォルネから手を放し、立ち止まって構える。

 ダルツォルネはレイチェルたちを城の中へ誘導した。外周を走り回ってるから城は無事みたいだ。案の定、城に逃げたダルツォルネたちには目もくれず、巨大な白銀の化け物は俺だけを狙って……。


「で、作戦は?」

「カグヤ、お前」

「アンタだけ楽しもうったってそうはいかないからね。アタシも戦うわ」

「……うし。じゃあやるか」


 レッドルビー王城外周、正門前桟橋。

 俺とカグヤは構え、三十メーター超えの怪物と向き合った。


「呪闘流甲種第三級呪術師ヴァルフレア。さぁ……ケリ付けようぜ!!」

「神風流皆伝『銀狼』カグヤ。ふふ、バケモノ退治ね!!」


 レッドルビー王国で最後の戦いが始まった。

 というか、いい加減に疲れてきた……さっさと終わらせてメシ食いたい。


 ◇◇◇◇◇◇


 城の一角に、二つの影があった。

 一人はマキエル。もう一人はコクマ……堕天使の一人コクマエルである。

 コクマは顎に手を当てながら言った。


「神器と『十二使徒の神技(ジャッジメント)』かぁ……すごいねぇ」

「ええ。相変わらず、十二使徒の神器は恐ろしい」


 神器は、第八階梯以上の天使に与えられる専用の武具で、十二使徒の神器は『神』が造りし物である。

 『十二使徒の神技(ジャッジメント)』は、聖天使教会十二使徒にしか使うことができない天使最強の技。それぞれの名を冠した最終奥義。


 聖天使教会十二使徒『鋼』と『操』は天使の中でも特殊で、単体ではせいぜい第四階梯天使ほどの実力しかないが、二人合わせると十二使徒クラスの力を行使できる。

 かつての呪術師の戦いで、サンダルフォンが死体を金属で覆い、メタトロンがそれを操り無数の軍勢を率いるという戦いをしていた。

 そして、あの姿は……サンダルフォンとメタトロンの最終奥義。その名も『鋼操天使ジャガーノート』である。


「それにしても、あの呪術師……まさか『呪神』タックの弟子だったなんてね」

「ええ。まだ拙いですが、彼の技を習得しているようです。そして地獄炎……やはり、第一地獄炎に関しては火力が低い。タックとは大違いだ」

「ん~……たぶんだけど、特性をちゃんと理解してないんじゃないかな? それにあの『魔神器』……真の姿(・・・)を理解していない」

「……そうですね。呪術師の至宝、呪術師が封じた地獄炎の魔王、その力が真に振るわれれば」

「おっと、始まるよ」


 フレアとカグヤが並び、構えをとる姿が二人には確認できた。

 コクマは、マキエルに確認する。


「マキエル。もしもだけど……あの双子が負けたらどうするの?」

「もちろん、回収して聖天使教会に届けますよ。ふふ、恩も売れるでしょうしね」

「はは、きみは戦わないのかって意味だったんだけど」

「……さぁ?」


 マキエルは、糸のように細い目をさらに細めた。


 ◇◇◇◇◇◇


 見ただけでわかる。素手での打撃は効果がないだろう。

 なら、これしかない。


「第一地獄炎、『火炎砲』!!」


 両手を突き出し、炎を収束して発射する……だが、巨大天使の鋼の身体は炎を弾いた。


「「そんな炎が効くかぁぁ~~~っ!!」」

「おわっ!?」


 巨大天使は、すぐ近くに掛けられている桟橋ほどの大きさの剣を振り下ろす。

 こんなにデカいのに速い。たぶん、メタトロンが操作してるんだ。

 俺とカグヤは横っ飛びして躱した。


「ふふ、血が滾る……っ!! いくわよっ!!」


 カグヤが巨大天使へ向かってダッシュ。

 巨大天使は巨大銃から何発も鉄球を発射する。だがカグヤは鉄球を躱し、発射された一発に向かって回し蹴り……なんと、打ち返した。

 鉄球は巨大天使の顔面に直撃。ぐらついた瞬間をカグヤは狙った。


「裏神風流、『巨神大槌』!!」


 顔面目掛けての強烈な前蹴り。しかも足裏を巨大化させ威力増強……なんと、巨大天使が勢いで倒れ、顔面に亀裂が入った。


「や、やるじゃねぇか……」

「ふふーん。あれれ? アンタなにもしないの? アタシがやっつけちゃっていいのかなぁ~?」

「…………」


 なにこいつむかつく。

 俺は右足を蒼い炎に包み、オアシスに飛び込む。するとオアシスが凍り、俺は水の上に立った。

 巨大天使は立ち上がると、顔の亀裂が一瞬で修復される。


「「キィサァマァぁぁぁ~~~ッ!!」」

「おーい、こっちこっち」

「「!!」」


 俺は水面を凍らせながらゆっくり上昇。水と凍りを操り両手を広げ、水と氷の竜巻を作り出した。


「第二地獄炎、『アイス・トーネード』!!」


 二つの竜巻を巨大天使に向け放つ。

 竜巻に飲まれた巨大天使は水流でもみくちゃにされ、水の中に混ぜた氷でズタズタになっていく。

 俺はそのまま水を操作。最後に蒼い炎を纏わせて竜巻を凍らせた。

 レッドルビー王城に、綺麗な氷柱ができあがった。内部には白銀の巨大天使……いいね。


「うし。終わ───」


 終わり。そう思った瞬間──氷柱にビシビシと亀裂が入る。

 マジかよ……まだ生きてるのか。


「「ウガァァァ~~~ッ!! こんなもの効くかぁぁぁ~~~っ!!」」


 巨大天使復活。しかも……車輪がなくなり、下半身が消失。

 その代わりと言わんばかりに、背中の翼で飛んでいた。

 

「「許さん……許さんぞ!!」」


 そして、上昇……やばい。なにかするつもりだ!!


「フレア!!」

「わかってる!!」


 カグヤがオアシスに飛び込んだので水面を凍らせる。

 俺とカグヤは巨大天使を追うため、氷柱を上昇させた。

 そして──レッドルビー王城が小さく見えるくらい上昇し、巨大天使を捕捉。


 だが、すでに遅かった。

 巨大天使の翼がこれでもかと広がり……翼からいくつもの突起が出ているのが見えた。

 俺は猛烈に嫌な予感がした。


「カグヤ、防御ぉぉぉっ!!」

「わかってる!!」


 天使の翼が開き、それは発射された。


「「全て壊れてしまえ!! このジャガーノートの『羽礫』でなぁぁぁ~~~っ!!」」


 この日、レッドルビー王国の空から……『鋼の翼』が降り注いだ。

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
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