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地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第五章・砂漠の王国と双子天使

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双子天使のワルツ

書籍化・コミカライズ決定しました!

 俺は指をパキパキ鳴らし、アーチの上に座る双子天使を睨む……あ、こいつら手ぇつないでやがる。

 双子天使の姉サンダルフォン、弟メタトロン。見た目は俺と同じくらいだがラーファルエル以上の『圧』を感じた。

 一対二、そして間違いなくラーファルエルより格上だ。でも……俺だって強くなってる。第二、第三の地獄炎の力がな。

 メタトロンは、パチパチと手をたたく。


「あはは! いやぁ~……面白い前座だったよ。炎と呪術を使わずにこの二人を倒すなんてね。まぁ片方は雑魚だったけど、もう片方は第十階梯天使くらいの力はあったんじゃないかな?」

「で? 次はお前らか?」


 俺は右腕に『火之迦具土』を顕現させ、右腕を紅蓮の炎で包む。

 甲の型で構えを取ると、サンダルフォンが足をパタパタさせながら言う。


「それにしてもあんた、ず~っと素手で戦うの? 過去にあたしたちが戦った呪術師はみ~んな、武器を持って戦ってたのに」

「っぐ……い、痛いとこ突きやがって」


 呪闘流にも武器術がある。でも、基礎の格闘術を習うだけで俺は精一杯だったからな。先生が『格闘術は初歩中の初歩。それすら修められん奴に武具を使う資格なし』って言われたしな。

 先生が武器を持って組手することは何度もあったけど、俺自身が武器を持ったことはない。


「姉さん、この呪術師……奴にそっくりじゃないか?」

「え? ああ……『呪神(ノロイガミ)』ね。忌々しい呪術師……」

「のろいがみ?」


 サンダルフォンの顔が歪み、メタトロンも真顔になる。

 そして、説明してくれた。


「ボクたち、聖天使教会に十二使徒という存在があるように、呪術師たちにも最強の四人がいたんだ。きみ、そんなことも知らないの?」

「…………」


 し、知らねぇ……先生はそんなこと教えてくれなかったぞ。

 村の連中とは挨拶くらいしかしてないし、俺の情報源って先生だけだったからな。


「『魔火覇恕間(まかはどま)』、『疫病魔(えきびょうま)』、『魔九仙(まきゅうせん)』……そして、数多の天使を屠り呪った最低最悪の呪術師。ボクたち天使が唯一認めた『神』」


 忌々しげに、メタトロンは言う。


「『呪神(ノロイガミ)タック』……呪術師の神にして地獄炎の使い手さ」

「え」


 タック。おい、タックって言ったか?


「せ、先生……?」


 ◇◇◇◇◇◇


「先生、おい……タックって俺の先生だぞ? 先生、そんなにすごい人だったのかよ?」

「「…………」」

「おーい? 聞いてんのか?」


 スゥーッと、空気が冷えていくような感覚がした。

 チリチリ、そしてピリピリした感覚……サンダルフォンとメタトロンが放つ殺気だ。

 俺は一瞬で思考を切り替えて構える。


「…………ああ、なるほどね。きみ、あいつの弟子だったのか」

「…………だから武器を使わないのね。あいつも素手で戦ってたし」

「な、なんだよ……お前ら」


 双子天使は翼を広げ、ふわりと浮き上がる。

 その眼には『怒り』があった。


「きみ、何も知らないようだから教えてあげる。聖天使教会は過去に呪術師と戦いを繰り広げていたことは知ってるよね?……ぼくたちの同胞はさっき言った四人、『死ヲ刻ム四影(フォー・ゲイザー)』に殺されたんだ」

「ただの呪術師なら遊んであげようって思ったけど……タックの野郎に関係してるなら話は別。あたしとメタトロン、あいつに酷い目に遭わせられたのよね……借りを返せないままタックは死んじゃったけど、弟子のあんたでうっぷん晴らさせてもらうわ」

「お、おいおい……」


 先生……どうやら俺、あなたが過去に痛めつけた天使の憂さ晴らし対象になったみたいです。

 つーか、『死ヲ刻ム四影(フォー・ゲイザー)』ってなんだよ? 呪術師にそんな連中がいたなんて知らなかったぞ? 凄腕の呪術師なんて、先生の知り合いだったラルゴおじさん、預言者のマンドラお婆ちゃん、あと病気がちで寝込んでたヴァジュリ姉ちゃんくらいだ。


「姉さん、久しぶりに踊ろうか」

「そうね。呪術師との闘いは久しぶり! しかも相手はあいつの弟子……ふふ、楽しめそう」


 先生の弟子ってだけで、双子天使の逆鱗に触れてしまったようだ。

 でも、仕方ない。

 俺は近くの岩場でガタガタ震えてるニーアに言った。


「ニーア、なるべく遠くに逃げろ」

「ぁ、あの……こ、腰、抜けて」

「え」


 って……ニーアの奴、サンダルフォンとメタトロンの殺気に当てられて失禁してやがる。気を失わないだけこいつも図太くなったもんだ。

 すると、サンダルフォンが指を鳴らしメタトロンが右手の五指をクイクイ動かす。


「『鋼の槍(サリッサ)』」

「『繰空クリカラ』」

「なっ……くっ、ニーア!!」


 突如として、双子天使の前に『槍』が現れて、ニーア目掛けて飛んでいく。

 俺はニーアの前に立ち、槍を炎で溶かそうと炎の壁を作る……が。


「「無駄だよ」」

「うそっ!?」


 槍は俺の炎をあっさり突破。溶けることなく俺めがけて飛ぶ。

 俺は槍を叩き落とし、へし折ろうと掴む……だが槍は一瞬でドロドロに溶け、地面に吸収された。

 なんだこの槍……まるで生きてるみたいだ。


「あたしの能力は『鋼』」

「ボクの能力は『操』」

「あたしが造り」

「ボクが操る」

「あたしは」

「ボクは」

「「二人で一つ、二人で最強、二人で一人の聖天使」」


 サンダルフォンとメタトロンは手を繋ぎ、残った手を広げた。

 一瞬、二人が一人に見えるくらい揃っていた。


「聖天使教会十二使徒『鋼』のサンダルフォン」

「聖天使教会十二使徒『操』のメタトロン」

「「さぁ呪術師、我らの奏でる鋼のワルツで踊りましょう」」


 俺は『火之迦具土』と肉体を燃やし、構える。

 背後のニーアはカタカタ震え、またもや漏らす。


「心配すんな。お前は俺が絶対に守る」

「ふ、フレぁ、さん……」


 敵は二人、ラーファルエルより格上、そして俺というか先生を恨んでいる。

 久しぶりの強敵……しかもニーアを守りながらの戦いだ。


「呪闘流甲種第三級呪術師ヴァルフレア。さぁ、お前たちを呪ってやるよ!!」


 レッドルビー王国、最後の戦いが始まった。


 ◇◇◇◇◇◇


 この戦いを、陰から見守る者がいた。


「ふふふ……十二使徒と呪術師の戦い。最高の席で見させてもらいましょうか」


 マキエル。

 聖天使教会に所属しない黒い天使。

 レッドルビー王城の外れのほうで、黒い天使は怪しく笑う。

 

「共倒れがベスト。個人的には……呪術師を応援したいところですね」

「いや、そうはいかないと思いますよ?」


 マキエルの真横に、誰かが立っていた。


「───っ」

「あ、どうも」


 さすがのマキエルも驚き、身を固くした。

 全く気配に気づかなかった。

 マキエルに声をかけた何者かは、マキエルを害するわけでもなく普通に立っている。

 大きなカバンを背負い、ボサボサの髪、無精ひげ、眼鏡をかけた男だ。戦意の欠片もない研究者風の男……コクマは、マキエルに言う。


「あーあー……レッドルビー王国の王候補をやっつけちゃった。カガリビはともかく、ダルツォルネは大丈夫だと思うけど……」

「あ、あなたは……」

「久しぶりだね、マキエル。きみの主は元気かい?」

「…………っふ、まさかあなたがこの国にいたとは」


 マキエルは帽子を取り、優雅に一礼した。


「お久しぶりです。コクマエル……『裏切りの八堕天使(ブリューゲル・エイト)』の一人にして『博』を司る知の天使」

「あはは、やめてくれよ。ボクは考古学者のコクマ……人間だよ」


 コクマことコクマエルは苦笑し、前を見る。

 かなりの距離があるが、フレアと双子天使はばっちり見えていた。


「あれ、君が焚きつけたの?」

「ええ、まぁ。王候補同士を戦わせ、呪術師を巻き込もうとしたのですが……サンダルフォンさん、方針を変えたようですね。まさか王候補を直接ぶつけるとは思いませんでした」

「城が静かなのは君のせい?」

「ええ。ああ、殺してはいません。ワタクシの『黒蟲』を体内に忍ばせ眠らせているだけ。記憶を食らうように命令してますので、寝ていたことすら忘れて起き上がるでしょう」

「そっか。ならよかった」


 それだけ言うと、コクマエルは無言……マキエルは聞いた。


「ワタクシと戦う、というわけでは?」

「そんなことしないよ。聖天使教会ならともかく、きみの組織は聖天使教会の裏切り者なんて興味ないだろ? それに……」

「ふふ、その通りでございます。今回のワタクシは傍観者……呪術師の生き残りである彼の力を見極めようと思いまして」

「ま、ボクも似たようなものかな。じゃあ、せっかくだし仲良く見ようか。あ、なんか飲む?」

「では、果実酒を」


 コクマエルはカバンからカップと果実酒の瓶を取り出し、マキエルにカップを渡した。

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
連載中です!
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― 新着の感想 ―
[良い点] 思った通りコクマには裏があったね 最初から怪しいとは思ってたけど堕天使とは思わなかった、国の暗部的な存在かと思ってたからいい意味で裏切られた
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