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地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第五章・砂漠の王国と双子天使

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BOSS・王国軍鮮血部隊隊長『円剣』のマルチューラ

 カグヤ、レイチェル、コクマの三人はレッドルビー王城を進んでいた……が。


「……めっちゃ静かね」

「ああ。人の気配がない……まるで無人の廃墟のようだ」

「…………」


 レッドルビー王城には誰もいなかった。

 人っ子一人いない。城の侍女や使用人、兵士などが巡回しているはずなのだが。

 コクマは大きなため息を吐く。


「はぁぁ~……見つからないように壁登りしたボクの苦労は……」

「うっさいわね。それより、フレアとニーアはここにいるの?」

「え、ええ。たぶん……」

「坊ちゃま、今行きますからね!!」


 カグヤとレイチェルは、コクマに案内されて城の中を進む。

 コクマの話によると、ニーアはレッドルビー王国の第十二王子の息子で王位継承権を持つらしい。

 現在、レッドルビー王国はカガリビ派とダルツォルネ派に分かれている。だが、この二人を支持しない民衆も一定数存在し、ニーアの存在が明らかになれば支持に出る可能性がある。そこでカガリビはニーアの存在が明るみになる前に手を打ち始めたのだ。


「で、なんであんたはそんなこと知ってんのよ」

「えーと、お二人を探している最中に、カガリビ様の私室に入っちゃいまして……そこでいろいろ調べたんです」

「……貴様、やるではないか」

「あはは……昔から調べものは得意で」


 コクマは照れ、頬を掻く。

 カグヤはどうでもいいらしく、質問した。


「で、どうすんのレイチェル。ここまでくるとニーアの祖父ってのも嘘っぱちよ。ここからニーアを連れ出した後、行くアテはあんの?」

「…………ブルーサファイア王国に。いや、だめだ……坊ちゃまの立場は非常に繊細だ。ブルーサファイア王国に事情を話したところで信じてもらえるか……それどころか、厄介者だろう」


 ニーアは、ブルーサファイア国王とレッドルビー王国第十二王子の子だ。

 レッドルビー王国だけでなく、ブルーサファイア王国の要人でもある。幸い、ブルーサファイア王国の王位継承権は放棄したので王位に就くことはないが、ブルーサファイア国王の息子であることに変わりない。

 

「私は、無力だ……」

「諦めんの? ニーアニーアやかましいくせに何もできないのね」

「……貴様」

「待って待って、待ってくださいよ! 喧嘩はダメですって!」


 険悪になるカグヤとレイチェルをコクマが止める。

 

「い、今は城を出てニーアくんたちと合流しましょう! その、行く場所がないなら他国に行くって手もありますし。その、ボクの伝手で個人証を発行できるところありますから、ニーアくんは新しい人生を歩むこともできますし」

「……偽造証か」

「ま、まぁ……こんなご時世ですし、個人登録できない人はいっぱいいますんで」


 レイチェルのキツい視線にビクビクするコクマ。

 個人登録するには住所が必要で、住所を持たない者は多くいる。そんな者たちのために発行されるのが偽造証だ。もちろんタダではなく高い金を払う必要がある。


「あーもう、とにかく行くわよ」


 三人は、城の出口……エントランスホールへ。

 城の顔とも言うべき場所で、広く豪華な造りをしていた。他国から輸入したシャンデリアや調度品があり、ホール中央には噴水まであった。

 ここを出れば外へ出られる……はずだった。


「どこ、いくの?」


 出口に、円剣のマルチューラが立ちふさがっていなければ。


 ◇◇◇◇◇◇


 露出の多い服装、両手には巨大リング、そして特異種としての能力を持つ『最上級冒険者』の一人、それが円剣のマルチューラだ。

 レイチェルとコクマを手で制し、カグヤは前に。


「おいカグヤ」

「だいじょーぶ。もう負けない……それに、あいつの手はわかってる」

「か、カグヤさん。話を聞く限り、円剣のマルチューラの能力は香り……呼吸を止めても体内に香りを送り込まれたら」

「だいじょーぶだって。まぁ見てなさい」


 レイチェルとコクマに笑いかけ、カグヤは前に。

 マルチューラは妖艶にほほ笑み、カグヤは構えをとり深く呼吸する。


「いつの間にかお昼寝しちゃって……なんだか胸騒ぎがしたの。あなたが逃げ出すような気がしてここに来たら案の定……兵士たちも寝てるし、何か起きてるみたいだけど……あなたを縛り付けてから調べることにするわ」

「…………」


 カグヤは無言だった。

 右足を高く上げ足を覆うレガースを硬質化する。

 カグヤの特異種としての能力『神脚』は、下半身に限りなんでもできる。カグヤが装備した武具も『脚』と認識され効果が及ぶ。


「ねぇ、気付いてる? あなたが構えてからずぅ~っと……あなたの周り、私の『香り』で満たされているの」

「…………」

「ふふ……もう動けないでしょう? あなた、私にメロメロよ?」


 カグヤは右足を思い切り前に突き出した。


「え?」

「裏神風流、『巨神大槌』!!」


 一瞬で突き出し、巨大化した『足の裏』がマルチューラに激突。レッドルビー王城のエントランスホールの入口を吹き飛ばし、マルチューラは数十メートル吹っ飛んで転がった。

 入口は滅茶苦茶に破壊……カグヤは「しまった」という。


「あ~……これ、弁償とか言われないよね?」


 カグヤは、いたずらっぽく微笑んだ。


 ◇◇◇◇◇◇


 三人は、吹っ飛んだマルチューラの下へ。

 マルチューラはひどい有様だった。両腕が折れ、血まみれになって転がっている。

 意識はあるのか、カグヤに問いかけた。


「な、なん、で……わ、たしの、チカラ……」

「匂いならしてたわよ。アタシを屈服させるような甘ったるい香りがね。でも、アタシは構えることで『揺れない心』を保った。武術家の心の構えはアンタの『匂い』程度で揺れるモンじゃない」

「そ、そんな……」

「神風流、『不動心』……技っていうか心構えね。決して揺れない心を保つ精神的なモンよ。まぁ、それでもけっこうヤバかった……アタシもまだまだ未熟ね」

「……あぁ、あなた……やっぱり、ステ……キ」


 マルチューラは気を失った。

 両腕を骨折して血まみれだが、致命傷ではない。死なないように軽く手当てし、近くの日陰に移動させた。水もあるし死ぬことはないだろう。

 レイチェルは驚いていた。


「まさか、最上級冒険者を倒すとはな……」

「んー、あいつ、アタシに一度勝ってるし好き放題やってたから油断したみたいね。ガチでやったらアタシもタダじゃ済まなかったかも……ま、運がよかったわ」


 マルチューラを倒した一行は、城の外へ向かう。

 すると、城の出口でコクマが立ち止まる。耳に手を当て何かを聞いていた。


「……あの、何か聞こえませんか?」

「なんだ貴様……む」

「……この感じ」


 カグヤは、城を……中庭のほうを見る。

 そこは、フレアがダルツォルネとカガリビ相手に戦っている場所だった。

 カグヤはにやりと笑う。


「強いのがいる……ふふ、なんか楽しそうね!」

「お、おいカグヤ! 待て!」

「あ、ちょっと待ってくださいっ!!」


 カグヤは走り出し、レイチェルが追い、コクマも走り出した。

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
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