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地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第五章・砂漠の王国と双子天使

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BOSS・レッドルビー王国第二皇子カガリビ

 カガリビはナイフを右手で逆手に持ち、左手を背後に回す。すると左手には見慣れない形の銃が握られていた。

 俺がブルーサファイア王国でもらった銃より大きく、筒の部分が妙に丸くなっている。

 右手でナイフをもてあそび、左手で銃をクルクル回転させた。


「天使様。先ほどの発言ですが」

「ああ、フレアを倒したらきみをこの国の王にしてあげよう。望むなら邪魔者も全て消して、この国をきみの色に染めるといい」

「……っ!! わかりました」


 メタトロンの返答にカガリビは歪んだ笑みを浮かべる。

 双子天使は庭園のアーチの上に座り、俺たちの戦いを観戦していた。

 俺はニーアを近くの茂みに移動させ、呪符を取り出す。


「『自己修復(イ・ヤーシ)』……どうだ?」

「あ……い、痛みが弱く」

「すぐに治る。いいか、じっとしてろよ……すぐに終わらせるから」

「で、でも、フレアさん……王候補と戦うなんて、国家反逆罪に」

「お前、難しい言葉知ってんだな……でも、関係ない。王だろうが天使だろうが神だろうが、お前を傷つけた野郎はぶちのめす」


 俺はカガリビに向き直り拳を握る。

 双子天使は『戦い』を希望している。背中を向けていたのに奇襲がなかったのは空気を読んだのか。

 まぁ……どうでもいい。ダルツォルネは跪いたままだし、まずはカガリビからだ。


「あんたさ、気付かないのか? やってることめっちゃ小物っぽいぞ」

「ふん。ガキにはわからんよ。それにお前も気づいちゃいねぇ」

「あ?」

「わしの名はカガリビ……かつて最上級冒険者にまで昇り詰めた、レッドルビー王国最強の一人よ」

「…………ふーん」


 俺は甲の型で構える。

 カガリビはナイフと銃を構えた。


「レッドルビー王国第二王子カガリビ……いくぜ」

「呪闘流甲種第三級呪術師ヴァルフレア。お前呪って……いや、むかつくからぶん殴る」


 天使の見世物ってのは気に食わないけど、この小物野郎はぶちのめす。


 ◇◇◇◇◇◇


「いくぜ……!!」


 ちょっとデブってる体型のくせに、アクロバティックな動きで迫ってきた。

 しかも、ナイフをいきなり投擲……狙いは顔面。

 俺は首を傾けてナイフを躱す。カガリビは腰から予備のナイフを抜き、俺の間合いに入ってきた。


「ヒャァァッ!!」

「──っ!!」


 ナイフをクルクル回転させながら斬り付けだ。俺は両手の仕込みブレードを展開して躱しきれないのを受ける。

 そして、俺の体勢が不安定になった瞬間を狙って銃を発砲。狙いは身体のどこか……なんとか身体を捻って躱すが、おかしいことに気づく。


「なんだ、その銃……っ!?」

「はぁっ!! 最新式の『回転式』だ!! 六発連続で発射できる、レッドルビー王国の技術で作られたモンだぜっ!!」

「くっ……」


 銃もだが、ナイフも馬鹿にできない。

 右腕の使い方が抜群にうまい。肩、肘、手首、指……可動できる部分をフルに使い、信じられない軌道と速度で正確に俺を斬り付けてくる。

 素人の二刀流より速度は上、下手すりゃ二人がかりの四刀流だ……これほどのナイフの使い手、初めて会ったかもな。

 

「ヘイヘイヘイィィィーーーっ!!」

「…………」


 だが、俺は冷静に対処する。

 ナイフ、そして銃。確かに接近戦でこれほど戦える奴はいないだろう。さっき戦った冒険者四人組よりも強いかもしれない。

 撃ち終わった銃を投げ捨て、新しい銃を腰から取り出す。そうだ、こいつ倒したら投げ捨てた銃もらっちゃおうっと。


「どうしたどうしたぁっ!! おめーの実力はそんな「じゃ、俺もいくぞ」へぶぁっ!?」


 俺の拳が、カガリビの顔面に突き刺さった。

 カガリビの鼻から鼻血が出る。


「っぷぁ……ほまえ」

「あんた、確かに速いよ。ナイフの使い方とかマジですごい。でも……もう見切った」

「なっ……」

「気づいてるかどうか知らんけど、あんたのナイフの軌道読みやすいんだよ。俺なら数手先まで読めるし、躱すのも苦じゃない」

「ふ、ふざけたこと抜かすんじゃねぇ!!」

「じゃ、来いよ……ほれほれ」


 俺は仕込みブレードをしまい、カガリビを手招き……そう、バカにしてます。

 カガリビは赤くなり、銃をしまってもう一本ナイフを取り出す。そして、俺に向かって不規則な軌道でナイフを振りかざした。


「くらえぃぃっ!! 『ナイフダンス』!!」

「流の型、『流転掌』」


 俺はカガリビのナイフを全て捌く。

 右手だけじゃなく左手でもナイフを振う。でも、こいつのナイフの使い方はもうわかった。

 俺は迫るナイフを腹を軽く叩き、全ての攻撃を受けては捌く。


「ぐっ……おぉぉぉぉっ!!」

「だから無理だって。じゃあ終わらせるか」

「──ッ!?」


 ナイフの腹に拳を叩き込むと、ナイフは砕け散った。

 カガリビはナイフを捨て両手をズボンに突っ込む。すると両手に銃が握られていた……が、もう遅い。

 

「流の型、『白蛇氾濫』」

「ごっぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」


 俺の両手がカガリビの両手首に絡みつき、手首と肘関節を絡んで外す。

 ゴキゴキッと音がすると、カガリビの両手から銃が落ち、だらりと垂れた。

 そして、とどめの一撃。


「滅の型、『百花繚乱』!!」

「ぶごぼぼぼぼっ!?」


 顔面だけを狙った高速の連弾がカガリビの顔面を潰し、歯が折れて顎にヒビが入り鼻も曲がった。

 カガリビは気絶……そのまま背後にドスンと倒れて気を失った。


「押忍!!」


 カガリビを倒した……が、別になんの感情も浮かんでこない。 

 なぜなら、こいつは準備運動。真の敵はこれからだ。


「わぁお! 見た見たメタトロン! 呪術や炎を使わないで倒したわ!」

「そうだね姉さん。まぁ、こいつじゃフレアに傷一つ付けられやしないと踏んでいたけど……次はどうかな?」


 そして、跪いていたダルツォルネが立ち上がる。

 俺は瞬間的に感じていた……ダルツォルネは強い。


「ほらあんた、頑張りなさいよー!!」

「姉さん、静かに……どうやら互いにわかってるようだね」


 俺は無言で構え、ダルツォルネも無言で構える。

 久しぶりに、本気で戦えそうだ。

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
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