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地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第五章・砂漠の王国と双子天使

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戦いの始まり

 フレアは両手を紅蓮の炎で覆い、襲い掛かる量産型天使を殴り倒した。

 岩が砕けるような鈍い音が響き、殴られた量産型天使が一瞬にして燃え上がる。そしてそのまま灰すら残さず、この世から消えた。


「抹殺・抹殺・抹殺」

「どけぇぇぇーーーっ!!」


 量産型天使に感情はない。

 天使の力である『光の槍』を操り、戦うためだけに生み出された兵器。目的をインプットするだけで死ぬまで戦う、階梯天使の道具だ。

 今の目的は一つ。フレアの足止め。

 フレアは死を恐れずに向かってくる量産型天使を焼きまくる。


「こいつら……あぁもう面倒くせぇっ!!」


 天使の襲撃と同時に、周りの冒険者たちは逃げ出した。

 カッツはゴーゴンたちをなんとか担いでこの場から逃げ出したようだ。天使が現れた以上、賞金だのなんだの言ってる場合じゃない。

 まさか、天使の目的も賞金なのか……フレアは思わずそう考えてしまった。


「くっそ、ニーア……俺のせいで」

「抹殺・抹殺・呪術師抹殺」

「呪術師・呪術師・呪術師」

「やっかましぃぃっ!!」


 光の槍を躱し、量産型天使を殴り蹴る。

 はっきり言ってフレアの敵ではない。だが、数が多いうえに上空からこれでもかと降ってくるのだ。無視して行こうかと思ったがそれすらできない。

 大技で一気に焼き尽くそうにも、周辺の住居まで巻き込んでしまう可能性がある。目の前に現れる数体を少しずつ倒すしかなかった。


 フレアの弱点……街中で大規模な炎は使えない。その弱点を的確に突いた足止めは大成功だった。


 ◇◇◇◇◇◇


 ニーアは目隠しをされ、量産型天使に連れられてレッドルビー王城のとある場所に連れてこられた。

 石造りの部屋で湿っぽい空気で満たされている。窓はなく、入口も鉄格子のようになっていた。

 目隠しを外されると、目の前に一人の男性がいた。

 

「ほぉ……確かに、フレイゼの面影がありやがる……息子ってのは本当だな」

「え……お、お母さんのこと」

「知ってる。ま、少し話そうぜ」


 ニーアは、自分を連れてきた天使を見る。そして部屋を見渡し、最後に目の前の男を見た。


「ここはわしの秘密基地みたいなもんだ。でかい声出しても外に聞こえやしねぇ。天使様は気にすんな」

「あ、あの……ぼ、ぼく」

「ゆっくり説明してやる。なぜお前を連れ去ったのか、これからお前がどうなるかをな」

「…………」


 ニーアは、ごくりと唾を飲み込んだ。

 目の前の男は、部屋にあった大きな椅子にどっかり座る。ニーアは立ったままだ。


「わしの名はカガリビ。この国の次期国王だ」

「こ、国王様!?」

「ま、次期国王だがね。だがそれも時間の問題……」

「な、なんで、国王様がぼくを……」

「そう、それが問題なんだ」


 カガリビは、懐から一通の手紙を取り出す。

 

「お前の母親は、このレッドルビー王国の第十二王子……つまり、息子のお前にも王位継承権があるんだよ」

「え」


 ニーアの母が、レッドルビー王国の王族。

 当然だが、ニーアはそんなこと知らない。母は自分のことを殆ど語らずに仕事漬けになって死んだ。一緒にいる時間は殆どなかったし、母のことを聞くのにニーアは若すぎた。

 突然の話に硬直するニーア。

 カガリビは話を続ける。


「お前の存在はつい最近まで知られちゃいなかった。ガキに難しい話をしても仕方ねぇから言わねぇが……いいか、お前の存在が明るみになれば、次期国王選が荒れる。わしや兄貴を支持しねぇ輩が一定数存在するのも事実。そいつらがお前を支持したら面倒くせぇことになる」

「…………」

「だから、今だ。今ならお前の存在はわししか知らねぇ。この場でお前の意思を確認する……レッドルビー王国の王になるなんざ、考えちゃいねぇよな?」

「…………」


 頭の整理が追い付かない。

 王? 王位継承権? 母が王族? 国王になる?

 まだ六歳のニーアには受け止めきれず、ニーアはへたり込んでしまった。

 だが、カガリビは続ける。


「王位を放棄するならそれでいい。この場で手続きを済ませて解放してやる。住む場所もくれてやるし、多少の金はくれてやる。だが、もし王位を放棄しねぇなら……兄貴に見つかる前に消えてもらう」

「…………」

「兄貴とわしの支持数は拮抗してる。ここで第三の勢力が出るのは兄貴には願ったり叶ったりだ……お前を自陣に取り込むための工作が始まるだろうしな。ま、今はこうしてわしが工作中ってわけだが」

「…………」

「悪いが時間はやれねぇ。選んでもらうぜ……生か、死か」

「…………」

「あー……いろいろ喋りすぎてパンクしちまったか。頭の回りそうなガキに見えたが、年相応だったな」


 ニーアはそっと顔を上げ……つぶやいた。


「お母さん……」

「あ?」

「お母さんって、どんな人だったんですか……?」

「……あー、親父に可愛がられてたぜ。末っ子でな、海が見たいなんて言ってブルーサファイア王国に行って……帰ってきたら思い詰めるようになって、そのまま失踪だ。いろいろ噂されたけどよ、ブルーサファイア王国に惚れた男でもできたんじゃねーかって言われてたぜ」

「……お父さん」


 ニーアは父の顔を知らない。

 ブルーサファイア国王なのだが、厄介事になるので伏せられていた。

 カガリビは、頭をポリポリ掻く……少し苛ついていた。


「感傷に浸るのは後だ。答えろ……放棄か、それとも死か」


 最後通告───同時に、鉄格子が力任せにこじ開けられた。


「選択にすらならんな」


 そう言いながら入ってきたのは、第一王子ダルツォルネだった。

 岩をも握り砕く手に掴んでいたのは、カガリビ直属の冒険者だ。ここの護衛を任せていたのだが、ダルツォルネに見つかったようだ。

 量産型天使は、いつの間にか消えていた。


「……兄貴」

「カガリビ。その少年……預からせてもらうぞ」

「なぜここが」

「ふん。天使様が味方してくれたのだ。この少年のことも教えてもらったぞ」

「……チッ」

「それに、貴様の行動は常に監視している。ワシの手駒に冒険者がいることを忘れたのか? 貴様が我が軍に密偵を送り込んでいるように、ワシも貴様のところに冒険者くらい送る」

「円剣か……チッ」


 ダルツォルネはニーアを見た。


「……フレイゼの子か。雰囲気が似ている。顔は……父親に似たのだろうな」

「え……?」


 ダルツォルネは、一瞬だけ優しく微笑んだ。


「どうやら、ワシもお前も天使様の影響を受けているようだな。先ほど、町に天使様が現れたとの情報が入った……炎を使う特異種が戦っているらしいがな」

「フレアさん!?」


 フレア。

 ダルツォルネとカガリビは、同時にニーアを見た。


「え、あ、あの」

「フレア、だと?」

「フレア……だと?」

「え? え?」


 ダルツォルネとカガリビは、こう言われたのだ。


『フレアって奴を探して。見つけたら王位をきみにあげる』

『フレアって奴を探して。見つけたら王位をあんたにあげるわ!』


 メタトロンとサンダルフォンの言葉が、ダルツォルネとカガリビの脳裏に浮かぶ。

 フレアを探す、そうすれば天使の力を貸してもらえる。天使の力があれば、戦争になっても勝てる。

 王位を得るために天使の力を借りる。

 そして───。


「おーい!! ニーアぁぁぁーーーっ!! おーーーいっ!!」


 フレアの声が、どこからか聞こえてきた。

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
連載中です!
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