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地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第五章・砂漠の王国と双子天使

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BATTLE・レッドルビー王国冒険者

 荷物を担いで外へ出ると、冒険者たちが十人以上いた。狙いは間違いなくニーアだ。

 ニーアを見る目がヤバい。欲に眩んだような濁った眼……金か。

 ニーアを背後に庇い、冒険者たちに聞いてみることにした。


「あんたら、狙いはニーアかよ」


 すると、案の定な答えが返ってきた。


「そうだ。そのガキをよこしな、ルーキー」

「白金貨五十枚の報酬よ? 早い者勝ち!!」

「あなたもその子の護衛を受けたみたいだけど、逆らうなら容赦しないわよ?」

「レッドルビー王国の冒険者たちがそのガキを狙ってんだ。へへ……白金貨はオレが戴くぜ!!」

「抜け駆けはさせないわよ!」


 そういって、冒険者たちが襲い掛かってきた。

 たぶん、俺を倒してニーアを奪うつもりだろう。早い者勝ちってんなら周りの連中で潰し合えばいいのに……まずはニーアを確保ってか。

 ま、こいつらが金欲しさなら容赦しなくていい。


「流の型、『漣』」

「おわっ!?」

「甲の型、『鉄杭』」

「ぶげっ!?」


 冒険者、これから番号で呼ぶことにするか。

 冒険者3の拳を受け流し、がら空きの腹に膝蹴りを食らわせた。けっこう力を込めたので冒険者3は崩れ落ち、ゲーゲー吐いて悶絶する。

 冒険者4は足を止め、俺に言った。


「あんた、あたしたちと戦う気? レッドルビー王国の冒険者がその子を狙ってる……ルーキーが正義感に燃えるのもいいけど、命が惜しいなら」

「あーもーいいって。さっきも似たようなこと言われたけど、ニーアは俺が守る」


 俺は構え、この場にいる冒険者たちに聞こえるように叫ぶ。


「ニーアに手を出すなら容赦しねぇ……来るならかかってきな!!」

「ちょ、フレアさん、逃げるんじゃ……」

「へーきへーき。見たところ雑魚っぽいし、この辺の連中を片付けてから行こうぜ」


 よく見ると、一般人がいなかった。人払いでもしたのか。

 俺の声に反応し、冒険者たちがワラワラ集まってくる。おいおい、三十人はいるぞ。

 

「ガキを見つけた!! おいこっちだ!!」

「ほかのグループに取られる前にオレらで押さえるぞ!!」

「へへ、白金貨だぜ!! 護衛のガキは五等のルーキーだ、さっさと潰してガキ奪え!! カガリビ様の下へ持ってけば遊んで暮らせるぜ!!」


 欲にまみれた男女の声がいっぱい聞こえる。

 カグヤがいたらめっちゃ喜びそうな状況だ。


「や、やばいですフレアさん。どんどん集まってきますー!!」

「だな。よし、じゃあ片付けるか!!」


 俺はニーアを背負い、ニーアのカバンからロープを出してがっしり結ぶ。


「しっかりつかまってろよ!!」

「は、はいぃっ!!」


 俺は冒険者たちに突っ込み、隙だらけの冒険者4の顔面をぶん殴った。


「おぶぅげっ!?」

「ひぇぇっ!? お、女の人なのに……容赦ないですね」

「まぁな」


 男だろうが女だろうが、売られた喧嘩はいくらでも買う。


 ◇◇◇◇◇◇


 ニーアは、フレアにおんぶされていた。

 正確には、ニーアがフレアの背中に抱きつき、落ちないようにしっかりロープで固定している状態だ。固定されているが、ニーアは力いっぱいフレアにしがみついていた。


「わぁ……」


 最初は、やはり怖かった。

 武器を持って襲い掛かってくる冒険者たちは殺気に満ち、自分を狙い、フレアを叩きのめそうと何人も襲い掛かってくる。

 でも、その全てをフレアは撃退した。


「流の型・滅の型『(あわせ)』……『散葉舞踊(ちるはぶよう)』!!」


 五人がかりで襲い掛かってくる冒険者たちの隙間を縫うように走り、同時に急所に拳を叩き込む。

 一撃一撃が岩をも砕く拳だ。骨が折れ、冒険者たちは嘔吐し悶絶する。フレアの恐ろしいところは、男も女も平等に殴るところだ。


 いつの間にか、恐怖は消えていた。

 ニーアは気付いていない。これだけ激しい動きをしながらもニーアはほとんど揺れを感じていなかった。

 フレアはニーアを気遣い、括り付けたニーアが酔わないように体重移動をして負担を軽減していたのだ。

 フレアなら、かつて数百kgの重りを全身に付けられ行われた魔獣との集団戦に比べれば大したことがない、と言うだろう。

 

 襲い掛かってくる冒険者は、ざっと見渡しただけでも数十はいる。

 フレアは既に十人以上倒した。ここで、冒険者たちはようやく気付く。


「気を付けろ!! このガキ、ただのルーキーじゃねぇぞ!!」


 フレアは、剣を持つ冒険者の懐に潜り込みアッパーカットで殴り倒す。そのまま背後の冒険者に回し蹴り、さらに跳躍して近くにいた冒険者に飛び蹴り、迫っていた冒険者に肘撃ち。

 ニーアは、視界にとらえていた。


「フレアさん!! ま、魔法が来ますっ!!」

「まほう?」


 ニーアが指さした方向に、鉄の杖を構えた若い少女たちがブツブツ何かを唱えていた。

 そして、杖に炎が渦巻く。


「くらいなさいっ! ファイヤボール!」

「アクアバレット!!」

「ウインドエッジ!!」


 炎の玉、水の玉、風の刃が飛んできた。

 フレアは「おおー」と感心、ニーアは飛んでくる脅威に叫んだ。


「うわぁぁぁぁぁぁぁーーーーーッ!?」

「落ち着けよ。俺の力、忘れたのか?」

「……あ」


 そして、フレアの右手が燃え上がる。

 ニーアに燃え移らないように火力を調整。それでも灼熱の炎が一気に燃えた。


「第一地獄炎、『城塞炎上』!!」


 右腕を振るうと、炎が壁のように燃えた。

 そして敵魔法使いの魔法が炎の壁に衝突、そのまま消失した。

 フレアの武器は徒手空拳だけではない。

 一瞬で魔法使いの少女三人の下へ移動し、呪力を込めた手で腹を殴った。


「甲の型・蝕の型『合』、『集団食中毒パンデ・ミック・ブロウ』」

「「「お、ごっぶぇぇぁぁ……っ」」」


 少女たちは崩れ落ち嘔吐、下痢と腹痛でゼーゼーしている。


「一週間くらいで治るよ。ちゃんと水分取って寝てな」


 フレアはそのまま走り去った。


 ◇◇◇◇◇◇


 敵冒険者は、まだまだいる。

 七十人ほど倒したが、騒ぎを聞きつけた冒険者たちが集まってきた。

 そして、フレアも遠慮しなくなってきた。


「第二地獄炎、『アイスニードル』!!」


 右足に蒼い炎を纏わせ、噴水に溜まった水を蹴る。すると飛び散った飛沫が凍り、氷の槍となって冒険者たちに降り注いだ。

 フレアはそのまま噴水から離れ、左手に黄色い炎を纏わせ地面に突っ込む。


「第三地獄炎『大地讃頌』、『地拳』!!」


 地面から黄色い炎が噴き出し、冒険者たちの真下から砂を固めた拳が飛び出し、正確に顎を捉えてぶん殴った。

 冒険者たちは、フレアの強さに少しずつ恐怖していく。


「こ、このガキ……『特異種』だ!!」「強いぞ!!」

「炎の特異種だ!!」「魔法が効いてないぞ!!」


 ざわざわと騒がしくなり、がむしゃらに突っ込んでくる冒険者たちはいなくなった。

 フレアは構え、警戒する。

 すると、数人の冒険者が前に出た。


「強いね、キミ」

「ふふ、久しぶりに楽しめそう♪」

「気を抜くな……」

「白金貨五十枚。渡しませんよ?」


 フレアは、なんとなく普通とは違う冒険者だと感じた。

 雑魚とは違う。そう思っていると、雑魚冒険者たちがジリジリと下がり、言った。


「じ……上級、冒険者」


 上級冒険者。

 五等、四等、三等、二等、一等級の冒険者よりさらに上の存在。

 上級、最上級冒険者は天使と同等、その上である特級は人ではないと言われるほどの強さを持つ冒険者が、白金貨五十枚を求めて四人も集まった。

 上級以上の冒険者は、ギルドから『二つ名』をもらえる。


「『砂漠剣』、カッツ」

「『デザートローズ』、クロンゼ」

「『岩男』ゴーゴン」

「『砂の魔法使い』ミリッツ」


 ニーアは、フレアの肩をギュッと握る。だけど……。


「心配すんなって。雑魚雑魚、楽勝楽勝!」


 フレアは、どこまでも笑顔のままだった。

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
連載中です!
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