レッドルビー王国城下町
レッドルビー王国への入口。デカい門の前には大勢の人が並んでいた。
どうも、入国審査があるようだ。兵士っぽいのと冒険者っぽいのがいっぱいいる。しかもなんかおかしい……どうも殺気立ってるような、何かを探しているような。
ちょっと気になるな。それに、入場のために並ぶ列……こんなの並んでたら日が暮れるぞ。
俺はラキューダに乗ったまま、遠くから列を眺めていた。
「面倒くさい列だな……なぁ、王国に入るのってこんなに面倒なのか?」
「いえ。ブルーサファイア王国と比べるとかなり厳重ですね。ブルーサファイア王国の入国は身分証と軽い荷物検査……あぁぁっ!!」
「うおっ、びっくりした……どうした?」
いきなりニーアが叫んだので驚いた。
すると、炎天下なのに蒼い顔で言う。
「ぼ、ボクたち……身分証がありません。このままじゃ入国できないですよ」
「え、なんで?」
「ぼ、ボクとフレアさんの身分証、レイチェルが持ってるんです。身分が証明できないとレッドルビー王国に入ることできないです……」
「んー、冒険者ギルドの証じゃ駄目か?」
「たぶん、大丈夫だと思いますけど……ボクは入れないですぅ」
「そっか。じゃあ……お、そうだ。ちょっとズルしちゃうか」
「…………え?」
「ふふふ。まぁ任せろって」
せっかく新しい『炎』を手に入れたんだ。使ってみるか。
◇◇◇◇◇◇
「次!!」
兵士がそう叫ぶと、商人と荷車を引くラキューダが前に出た。
兵士が商人に尋問、冒険者が荷物を徹底的に調べる。入国審査は冒険者の仕事ではないが、レッドルビー王国第二皇子にして『レッドルビー・冒険者ギルド』のギルド長であるカガリビの命令だった。
『入国者を徹底的に調べろ。そしてニーアという少年を見つけたら連れてこい』と。
冒険者たちは、周囲を徹底的に監視する。
列に並ぶ人たちを見て、小さな子供を連れた家族を見つけた。
冒険者の一人が、男の子の両親に聞く。
「おい、このガキの名前は」
「え……な、何を」
「いいから答えろ」
「わ、ワウルです」
冒険者は睨みを利かせる。子供は怯え、父親と思わしき男に抱き着いていた。
冒険者は舌打ちし、仲間の下へ。
「どうだ?」
「違うな。護衛にしちゃただの睨みでビビりすぎだ。肉付きも悪いしただの一般人だろう」
「チッ……仕方ねぇ、次行くぞ」
「おう」
冒険者のグループは、子連れを徹底的に尋問する。
カガリビの命令だから探しているだけではない。
「見つけた奴には白金貨五十枚……へへ、美味しい仕事だぜ」
「おう。へへへ、他の連中に負けねぇようにしねぇとな」
レッドルビー王国の冒険者たちが、ニーアを捜索していた。
冒険者たちが次なる子連れの下へ向かおうと歩きだし────。
「…………ん?」
「おい、どうした?」
「……いや、気のせいか」
何かが、足下を横切った気がした。
◇◇◇◇◇◇
「よし、この辺りかな……」
現在、俺たちは地中を移動していた。
レッドルビー王国城下町。入ってすぐにある建物の裏手辺りまで地中を移動、誰もいないことを確認して浮上する。
浮上したのは、砂でできた球体だ。俺が第三地獄炎で作りだした物で、この中に俺とニーア、シラヌイとラキューダは入っていた。
「第三地獄炎、『潜地航行』だ。大地の一部を乗り物に変え、ある程度の距離を移動することができる。これなら見つからずに移動できるってわけだ」
「ぷはぁ……地面の下を移動したの、初めてです」
「俺もだ。けっこう気持ち悪いな」
「あ、あはは……」
『ブルルル……』
『わぅーん』
ラキューダもシラヌイも気持ち悪そうにしていた。確かにこれは気持ち悪い……あんまり多用しないでおこうかな。
さて、とりあえずレッドルビー王国に入ることができた。ちょっと卑怯な方法だが、あの長蛇の列に並ぶなんて御免だからな。
「さーて。まずは……どうする?」
「えーっと、拠点となる宿を取って、資金を得るために道具屋で鉱石を換金しましょう」
「わかった。メシは?」
「そ、その後で。換金したらご飯にしましょうか」
「お、いいね!」
腹減ったし、さっさと行きますか!




