聖天使協会十二使徒
聖天使教会。
それは、この世界を呪う存在である『呪術師』に対抗するために生み出された『天使』たち。
特殊な技術で生み出された子供たちは、大いなる『光』の力を使い、背には天使の翼を持つ聖なる存在で、人間の進化形であると言われていた。
聖天使教会は、この世界の中心であり中立。
世界の中心にそびえ立つ『大聖堂』を拠点とし、中心を囲うようにある『七大王国』を見守っている。
見守る。
というの文字通り見守っているだけであり、時には王国の依頼を受け『天使』を派遣し、問題解決のために働くこともある。だが、天使は人間以上の存在……七大王国もまた、天使の力を借りる場合、慎重にならざるを得ないのだ。
もう一度言う。
天使は、人間以上の存在である。
天使は、人間以上であり……人間は『喋る肉』程度の存在と認識している。
ある日。聖天使教会の『大聖堂』の一室で、一人の中年が汗をダラダラ流しながら事務作業をしていた。
「えーと、この書類は私の管轄ではない……なんでここに? あ、これも、これも……うぅ、また残業、徹夜、くぅぅ……なんで私ばっかりぃ」
禿げ上がった頭、ズレた丸縁眼鏡、でっぷりとしたお腹に気苦労の絶えない表情。
仲間の天使たちに押しつけられた書類と格闘しながら、中年男は大きく息を吐く。
「はぁ……午後は『使徒会議』だけど、また誰も来ないんだろうなぁ」
彼の名は『聖天使教会十二使徒』に所属するズリエル。
天使のなかでも最強の位を持つ天使なのだが、小太りハゲおっさん天使と呼ばれからかわれる毎日で、部下の天使たちからも舐められていた。
「管理職は辛い……ぁぁ、嫁が欲しい」
ちなみに、彼女募集中……誰も応募などしないが。
◇◇◇◇◇◇
「やっぱり……」
使徒会議。
それは、聖天使教会十二使徒が集まっておしゃべりすること……と、同列の天使は言っていた。
もちろん、そんなはずはない。人間たちから寄せられた依頼を吟味し、天使を派遣するか否かの取り決めや、報酬の設定などを話す場なのだが……。
「ズリエル。苦労をかける」
「そそそそそそんなめめめめめめっそうもないいいいい!! アルデバロン様まままままま!!」
「ふっ……では、会議を始めよう」
ズリエルの前にいるのは壮年の天使。
聖天使教会十二使徒最強であり、全ての天使の頂点に立つ究極の天使。
アルデバロン。
ズリエルは、いつも以上に緊張していた。
なぜなら、会議場にはズリエルとアルデバロンの二人しかいないのである。残りの十人は不参加……いつも以上に酷かった。
ズリエルは緊張しながら数枚のファイルをめくる。
「え、えー……人間の依頼ですけど、天使を派遣してもよいと思えるものがいくつかありました。まず、レッドルビー王国の建国祭りの象徴として一人、ホワイトパール王国の第七王女殺害に一人、ブラックオニキス王国の聖王教会に一人ですな」
「ふむ……第七王女殺害というのは?」
「はい。えーと、ホワイトパール王国は王位継承権を巡って兄弟で争ってるようなんです。でも、第七王女は王位継承権を捨てて逃走中らしく、確実に息の根を止めたいという依頼がありまして、王族から匿名で依頼がありました」
アルデバロンはファイルを捲る。
「いいだろう。それぞれに天使を派遣してやれ」
「はい。では選別ですが」
「お飾りなら最下級天使でいい。王女殺害は……第十二階梯の天使でいいだろう」
「わかりました!」
「…………ズリエル」
「はい?」
「よし。決めた。レッドルビー王国の建国祭にはお前が行け。休暇ということで祭りを楽しんでこい」
「え!? でで、でも」
「構わん。いつもお前には苦労をかけているからな……仕事を終えた後は町で酒でも飲むといい」
「あ、アルデバロンさまぁ~……!!」
こうして、天使は各国に派遣された。
ズリエルはレッドルビー王国に派遣され、建国際でその姿を晒すのだが……国民たちの間で『太って禿げた小太りおっさん天使』だったと噂されることになる。
ショックを受けたズリエルは、一人枕を濡らしたという……。
だが、ズリエルよりも大変なことになるのは、フレアたちだった。
プリム暗殺のために派遣された天使が迫る。
戦いは、避けられそうにない。