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地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第五章・砂漠の王国と双子天使

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黒いダンゴ虫

 レッドルビー王国は目前。あと一時間も進めば正門に到着する……のだが。

 妙な気配を感じた俺はラキューダを止め、道のはずれを見る。

 

「……ん?」

「フレアさん?」

「……何かいるな。また砂豚……じゃない。シラヌイ、行くな」

『グルル……ッ!!』


 飛び出そうとしたシラヌイを抑え、シラヌイにはラキューダとニーアを守らせる。

 得体の知れない気配だ。しかもこの感じ……妙に気持ち悪い。ねっとりするような、べた付く悪意が感じられた。

 そして───その妙な気配は形となって現れる。


「な、なんだ……?」

「く、黒い……モヤ、ですか?」


 ほんの少し先、砂漠の砂上に黒い粘つくようなモヤが現れた。

 砂漠の魔獣にそこそこ襲撃されたが、こんな気持ち悪い感じはしない。野生っぽい、頭の悪そうな襲撃ばかりだったのに、この黒いモヤには明確な敵意があった。

 餌を求めて襲い掛かるんじゃない、襲い掛かるために生まれるような……そんな悪意。

 そして、モヤが形になる。


「なんじゃこりゃ……虫か?」

「だ、ダンゴ虫、でしょうか……?」


 黒いモヤは、ラキューダよりも大きいダンゴ虫みたいな形になった。

 もぞもぞ動き気味悪い……これ、絶対に砂漠の魔獣っぽくない。

 黒いダンゴ虫は、口っぽい部分を開けて叫んだ。


『ピギィィィェェェェアァァァァーーーッ!!』

「うるさっ」

「ひぃぃっ!?」


 ニーアは耳をふさぎ、ラキューダは怯えてしゃがみ込む。シラヌイはニーアたちを守ろうと四肢と顔の一部を燃やし戦闘態勢に。

 俺はすでに駆け出し、右手から『火之迦具土』の籠手を出して全身を燃やしていた。

 こんな気持ち悪いの、一刻も早く消し去るべきだ。


「第一地獄炎、『炎撃』!!」


 かっこよく叫ぶが、まぁ要は炎を載せた右のパンチ。

 俺の右拳は黒いダンゴ虫の顔面部分に突き刺さり、ダンゴ虫は灰すら残さず消え───……って。


「か……硬ぇ!? つーか燃えない!?」


 ダンゴ虫の身体は鋼鉄のように硬く、炎で燃えなかった。

 今までこんなことなかった。俺の炎は鋼鉄ですら溶けるのに───……。


『ピッギェェェッ!!』

「うわっ!?」


 ダンゴ虫は、溶解液を吐き出した。

 俺は横っ飛びで躱し距離を取る。だがダンゴ虫は身体を丸め、どういう原理なのかその場で回転して転がってきた。

 

「くっ……第一地獄炎、『火炎砲』!!」


 右手を向け、炎を勢いよく噴射する。

 だが、炎の噴射をものともせずにダンゴ虫は転がってくる。火炎砲がまるで効いていない。

 まさか、俺の炎で燃えない魔獣がこの世にいるなんて。

 すると、籠手から声が聞こえてきた。


『火火火……本質を理解してねぇ。オレの炎の本質をな』

「焼き鳥……っ!! どういうことだ!?」


 火炎砲を止め、横っ飛びでダンゴ虫を回避する。

 久しぶりに聞いた声だ。親切な焼き鳥こと第一地獄炎の魔王『火之迦具土』……炎の本質。

 俺は、ラーファルエルの声を思い出す。


『キミの炎、ヌルいんだよ』


 そう、俺の炎はヌルい……のか?

 違う。そんなことはない。俺の炎はいつだって燃やしてきた。


『お前のことは気に入っているが、全てを教えるには未熟……ちゃんと自分で理解するんだな』

「あ、おい!!」

『それと、この敵……普通の――』


 と、ここで声が途切れた。

 俺を執拗に狙い転がるダンゴ虫。ニーアたちの元へ行かせないように位置を調整しないと。

 あと、燃えないなら別にいい。燃えないなら……殴る!!


「はぁぁぁぁりゃぁぁぁっ!!」


 俺はダンゴ虫を最小限の動きで躱し、身体の横を思いっきり蹴る。

 すると、ダンゴ虫は横に吹っ飛んで止まった。俺は一気に近づいて拳を握る。

 ダンゴ虫は丸めた身体を伸ばし、体勢を整えようとモゾモゾしている。その瞬間を俺が逃すはずはなかった。


「オラオラオラオラオラオラオラァァーーーっ!!」


 俺はひたすら殴る。

 ダンゴ虫の身体に乗り、両手を使い、全身を強化する呪いを使い、ダンゴ虫が体勢を変えようとするのをひたすら殴って止める。そして右手をダンゴ虫の身体に押し付け、思い切り炎で焼く。


「燃えろやぁぁぁーーーっ!!」


 炎が荒れ狂い、砂漠の砂ですら黒くなる。

 ダンゴ虫はビチビチ暴れるが……黒い装甲みたいな身体が真っ赤になるだけで傷一つ付かない。

 ここまでやってもノーダメージ……地味にショックだ。

 そして、ダンゴ虫がピチっと暴れ、俺は身体の上から飛ばされた。


『ギィィィィィーーーッ!!』

「くっそ、なんだこいつ……炎が効かない」


 第二地獄炎を使おうにも水がない。凍らせれば勝てるかもしれないけど……。

 どうする……ラキューダに乗って逃げるか。

 だめだ。こいつが転がる速度はかなり速い。レッドルビー王国まで付いてくるだろうな。

 まさか森まで引き返すわけにもいかないし……くそ、めんどくさい。




『なら、ぼくに任せればいいと思うんだな!!』




 と、頭の中に声が響き……左腕から『黄色』の炎が一気に燃え上がった。

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
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