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地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第五章・砂漠の王国と双子天使

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マルチェーラの部屋

「ん……っくぁぁ~……あれ?」


 眼を覚ましたカグヤが最初に見たのは、豪華なシャンデリアが吊された天井だった。

 大欠伸をして身体を起こす。寝ぼけ眼を擦り、乱れた髪を適当に撫で付け、大きく伸びをして背筋を反らし……気が付いた。


「……ここ、どこ?」


 やたらと大きなベッドの上にいた。

 かなり寝ていたのか頭が回らない。窓から射す日の光がとても明るく、カグヤの意識は徐々に回復……そして、ようやく気が付いた。


「あれ、アタシ……服、あれ? 下着も……あれ!? は、裸じゃん!!」


 カグヤは、生まれたままの姿で寝ていた。

 部屋を見回すが、自分の着ていた服はない。自分で脱ぎ捨てた記憶もない。誰かに脱がされたとしか考えられず、顔が赤くなった。

 そして、徐々に蘇る記憶。


「……アタシ、あの変な輪っかを持つ奴に喧嘩売って……ああ、そっか」


 負けた。

 カグヤは、変な輪っかを持つ奴……円剣のマルチェーラに負けたのだ。

 そして、殺されることもなくこの場所に連れてこられた……裸で。

 今気付いたが、身体からいい匂いがする。まるで香水のような甘ったるい香り。それに、髪はいつも以上にサラサラになっていた。


「起きた?」

「ッ!!」


 突然、ドアが開く。

 入ってきたのは円剣のマルチェーラだ。手には食事のトレイがあった。

 同時に、カグヤのお腹が鳴る。


「ふふ、お腹減ったよね。ごはんの時間だよ」

「…………」

「それと、汚れてたから綺麗にしてあげた。ふふ、思った通りツルツルのスベスベ……身体もだけど、髪もとっても綺麗」

「……アンタ、アタシに何したの?」

「まだ身体を洗っただけ。お楽しみはこれから……」

「違う。アンタと戦ったとき、妙に身体がむずがゆかった……アンタの能力は『毒』、そうなのね?」

「んー……半分正解」

「あ?」


 マルチェーラは、食事のトレイをカグヤに渡す。そしてマルチェーラは近くの椅子に座った。

 パンとスープ、肉と野菜の炒め物に瑞々しい果物だ。お腹も減っていたので遠慮なく食べ始めるカグヤに、マルチェーラは少し驚いていた。


「あれ? 『敵の施しはうけない』とか言うのかなーって思ったけど」

「は? なにそれ? お腹も空いたしちょうどいいわ。ありがとね」

「……っぷ。変な子。そんなところも可愛い♪」

「あと、服返しなさいよ。あと装備」

「だーめ。この部屋にいる限りあなたは裸のまま。帰ってきた私を優しく出迎えて抱きしめるのが最初の仕事……もちろん、その後の仕事も用意してるわ」

「ふざけんな……ごちそうさ、まっ!!」


 カグヤは食事を終え、トレイをマルチェーラに投げつけた。同時にベッドから飛び上がりマルチェーラに向かって蹴りを……蹴りを。


「あ、れ……っ?」


 ガクンと、力が抜けてしまう。

 そのまま床に崩れ落ち、妙な動悸がして全身がむずがゆくなる。

 マルチェーラは妖艶に微笑む。

 そして、崩れ落ちたカグヤの下へ向かい、そっと顎を掴んで自分に向き合わせた。


「もうあなたは私に逆らえない。わからない? とぉ~っても敏感になってるでしょ?」

「ッ……っく」

「教えてあげる。私の能力は『艶媚香(パフューム)』……私の身体から出るフェロモンを吸った者の感覚を操るの。あなた、接近戦が得意みたいだけど、私のフェロモンをたくさん吸ったみたいですぐに自由を奪えたわ。私に興味を抱かない人には通じないけど……あなた、私に興味津々だったみたいで安心したわ」

「こ、この……っ」

「これから時間を掛けて可愛がってあげる。まずはこの綺麗な身体……私色に染めてあげる」

「ふ、ふっざけんな!! アタシはそのケはないっつーの!!」

「ふふ、ほらベッドに戻って」


 マルチェーラの手でベッドに戻されたカグヤ。

 カグヤは、全身に力が入らなかった。多少は動けるがここから脱出は難しい。

 そして、ようやく気付いた。


「……レイチェルは?」

「ああ、あの金髪の子? そこで寝てるわよ」

「え……」

 

 窓際のソファに、レイチェルが横になって寝ていた。

 カグヤのように裸ではなく、ドレスを着ている。


「綺麗でしょ? 光を当てると髪が金色の輝くの……まるでお人形さんね」

「趣味わるっ……つーか、ここどこよ?」

「レッドルビー王国。私の部屋よ」

「レッドルビー王国……先に来ちゃったか」

「ん?」

「ふん、別に」


 マルチェーラは、ゆっくりドアへ向かう。


「じゃ、お仕事してくるね。帰ってくるまでいい子にしててね」

「うっさいバーカ!! あっちいけペッペッペ!!」


 マルチェーラはクスリと笑い、部屋を後にした。

 残されたカグヤはため息を吐き……窓の外を眺める。


「絶対にこんなとこ脱出してやる……!!」


 空は蒼く、どこまでも澄んでいた。

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
連載中です!
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