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地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第四章・ジャングル/ジャランダーラ/怪しい学者

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レッドルビー王国へ

「「…………」」

「さぁフレアよ!! 道中の護衛は我らジャランダーラの戦士たちに任せよ!!」

「あ、はい」

「…………ふ、フレアさん」

「なにも言うな。気持ちはよーくわかる」


 ジャランダーラの戦士たちがジャングルの外まで護衛してくれるということになったんだが……彼らの騎乗する乗り物が非常に気持ち悪かった。

 一言で言うなら『デカキモいゴキブリ』……緑色のゴキブリに手綱を付けて、それに跨がっているのである。

 ラキューダは嫌そうにゴキブリから離れ、シラヌイもさっきまで振っていた尻尾がピタッと止まってしまった。だがジャランダーラの戦士たちはそんなことに気付いていない。

 ウッポポムーさんとアパパネパがゴキブリを俺の左右に並べ、その後ろを数匹のゴキブリ、さらに前にもゴキブリが数匹……完全に包囲されちゃったよ。


「最短距離で行く。きみはただ付いてくるだけでいい」

「はいよ。あのー、皆さんが乗ってる奴ってなんです? ゴキブリ?」


 ウッポポムーさんはゴキブリの頭をピシピシ叩く。おいおい、触角が揺れて気持ち悪い。


「こいつは『ゲイルローチ』だ。森の中で最速の昆虫魔獣で、飼い慣らすのも楽だし食事も残飯でいい。気を付けねばならないことは、オスメスを一緒にしておくとあっという間に繁殖してしまうことだな。あっはっは」

「ゴキブリじゃん……」

「ウッポポムー!! そろそろ行くぞ!!」

「おお!! ウーッ!! スポポイッ!!」

「「「「「ウーッ!! スポポイッ!!」」」」」

「いや、それマジでなんなの?」


 俺の問い掛けには答えず、ゴキブリに囲まれたラキューダは歩き出した。


 ◇◇◇◇◇◇


 案の定、ゴキブリはカサカサとした動きで走り出した。

 アパパネパたちはまるで気にしていない。でも、今も昔もゴキブリが台所の敵という認識があるらしい。ゴキ退治用の毒エサとか売ってるらしいからな。

 

『ブルルルルッ!! ブルルルルッ!!』

『わんわんっ!!』

「お前たち、もう少しの辛抱だからな」


 シラヌイとラキューダもイヤみたいだ。

 アパパネパは、手綱を片手で握り、ゴキブリの尻を素手で叩いた。


「あと数十分で森を抜け、その先は砂漠になっている!! 森を出てまっすぐ進めば、数日ほどでレッドルビー王国に到着する!!」

「まっすぐだな!!」

「ああ。ひたすら真っ直ぐ、太陽に向かって進め!!」


 そして、隣からウッポポムーさんが叫ぶ。


「我らジャランダーラの戦士は砂漠に進むことはできん。最後まで見送りたいが……」

「いいよ。案内だけでも嬉しいからさ!!」


 本当に、こいつらには世話になった。

 美味いメシも食べれたし、水もいっぱいもらった。最初は喧嘩したけど、今は感謝の気持ちしかない。

 今度、プリムを連れて挨拶に行こう。この森に住む蛇とか食べさせたい。

 俺はアパパネパとウッポポムーさんを交互に見て、感謝の言葉を―――。


「―――」

「どうした!!」

「―――なにか……来る!!」


 俺の中の何かが危険を察知した。

 振り返ると、そこには……なにもない。

 だが、アパパネパとウッポポムーさん、そしてジャランダーラの戦士たちは首だけ振り返り、ウッポポムーさんが思いきり舌打ちした。


「くそ……このタイミングで『神森の魔物』かっ!! アパパネパ!!」

「わかっている!! 皆の者、走れーーーっ!!」

「お、おい? なんだ? なにが」

「いいから走れ!! 後ろを振り向くなっ!!」


 すると、後ろを守っていたジャランダーラの戦士たちが横に並んだ。

 俺は手綱を握り、震えているニーアに言った。


「ニーア、しっかり掴まってろ!! ラキューダ、シラヌイ、気張れよっ!!」

『ブルルルルッ!!』

『わんわんわんっ!!』


 すると、後ろからバキバキと樹木をなぎ倒すような音が聞こえてきた。

 間違いなく、何かが来ている。


「神森の魔物だ!! ジャランダーラの神森を荒らす古の魔物!! 我らジャランダーラの戦士たちが滅ぼさなければならない宿敵っ!!」


 と、アパパネパが叫ぶ。

 どうやら、とんでもない魔獣がこの森にいるようだ。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇

名称・『神森の魔獣ジャランダーラ・グリンワーム

討伐レート・S+~

◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 ◇◇◇◇◇◇


 後ろを振り向かず進むこと数十分……ついにジャングルの外へ。

 ジメジメした熱気が、カラカラの熱気に変わる。

 俺たちは土の地面から砂の地面へ。ラキューダは問題なく進むが、アパパネパたちのゴキブリは一気にスピードが落ちた。そう、ゴキブリは砂地を走れない。

 

「さぁ行け!! ここは我らジャランダーラの戦士に任せよ!!」


 俺とニーアは、ここで初めて振り向いた。

 アパパネパたちが武器を取り、森から出てきた巨大なミミズと戦いを始めた。

 しかも、ただのミミズじゃない。緑色で、大きな身体から八本の身体に枝分かれしている異形のミミズだった。


「アパパネパ!!」

「行け!! こいつは我らジャランダーラの戦士に任せろ!!」

「でも……」

「お前の目的はこいつではない。先へ進むのだぁぁぁーーーっ!!」


 アパパネパは叫び、ウッポポムーさん、そしてジャランダーラの戦士たちは「ウーッ!! スポポイッ!!」と叫ぶ。


「ふ、フレアさん……」

「よし、行くぞ」

「えっ……で、でも」

「いいから行くぞ」


 俺はラキューダの腹を軽く小突いた。

 ラキューダも少し迷いを見せたが走り出す。

 ニーアは歯を食いしばり、俺の腕をがっしり掴んだ。


「ふ、フレアさん!! あの……あのバケモノ、ジャランダーラの皆さんだけじゃ」

「んー、たぶん相打ちくらいには持ち込めるかもな」

「だ、だったら……フレアさん、フレアさんも一緒に戦ってあげてください!!」

「…………」


 ちょっとだけ驚いた。

 俺の手を掴むニーアは、今までにないくらい男の顔をしていた。

 この間にもラキューダは走っている。もうアパパネパたちの姿は見えない。


「フレアさん!! お願いします!!」

「はは。安心しろって。こんな機会めったにないからな、お前とラキューダとシラヌイが安全な距離になったら行くつもりだったさ」

「え……き、機会?」

「ああ。ずっと森の中で手加減してたからな……少し、本気出してくる」


 俺は、両手から真っ赤な炎を出す。

 そう……ずっと森の中で炎を使えなかった。思いっきり炎を出したいと思ってたところであの魔獣だ……うひひ、燃やしてやる。


「じゃ、行ってくる!!」


 俺はラキューダから飛び降り、両手から炎を噴射して跳躍、足の裏と両手から炎を噴き出してアパパネパたちのもとへ向かった。

 

「いやっっふぁぁぁぁーーーっ!! きんもちいぃぃぃぃーーーっ!!」

「……!? なんだ!?」

「おーいどけぇぇぇぇぇーーーっ!!」


 アパパネパたちがデカミミズと戦っていた。

 けっこうな距離があったがほんの数十秒で到着。燃え上がる俺を見てジャランダーラの戦士たちは驚愕、デカミミズも八つの身体を上空へ。

 俺は全身を燃やし、空を炎で埋め尽くす。


「燃え上がれぁぁぁーーーっ!! 第一地獄炎、『九龍神火刀(くりゅうしんかとう)』!!」

『ピギッ!?…………ピギェェェェェェッ!?』


 炎は八つの細長い『龍』となり、デカミミズの身体にそれぞれ巻き付く。そして、巻き付かれたデカミミズはあっという間に燃え上がり、ビチビチと身体をくねらせて消滅した。

 アパパネパたちは唖然とした。

 そして俺は着地。アパパネパたちを確認すると、多少の怪我はしていたが全員無事のようだ。


「お、おお……すごい」

「悪いな、横入りして。ふぃぃ~~~……思いっきり炎出してスッキリした。よし、俺行くよ。じゃあな!!」


 俺は手を振り、アパパネパたちと別れようとする。すると、アパパネパが言った。


「フレア!! また来い!! ジャランダーラはお前を歓迎しよう!!」

「ああ!! 今度は仲間と一緒に行くからよ、またウシの丸焼き食わせてくれ!!」


 そして、ウッポポムーさんと戦士たちが並び、両手を広げて叫んだ。


「ウーッ!! スポポイッ!!」

「「「「「ウーッ!! スポポイッ!!」」」」」

「あはは!! じゃあなーっ!!」


 俺は再び全身から炎を噴射し、ニーアたちのもとへ戻った。


 ◇◇◇◇◇◇


 数十秒後、俺はニーアのもとへ戻り、ラキューダの背中に着地した。


「終わったぞ」

「よかったぁ……」

「うっし。じゃあ今度こそレッドルビー王国に行くぞ」

「はい!!」

「えーと、お前の爺ちゃんが待ってるはずだけど……」

「そうですね……でも、先にレイチェルとカグヤさんを助けないと」

「はは、言うじゃん……よーし、じゃあ行くか!!」

「はい!!」

「ラキューダ、シラヌイ、行くぞ!!」

『わんわんっ!!』

『ブルルルルッ!!』


 ラキューダは走り出す。

 太陽の先にあるというレッドルビー王国へ。

 ニーアを送るという旅は、いつの間にかレイチェルとカグヤの救出に変わっていた。

 爺ちゃんの所へニーアを預けるって手もあるけど、今のニーアは納得しないだろう。


 だったら、一緒に行くだけだ。

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
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