ルート1/フレア・ニーア⑤
「さぁ飲め!! 森の酒は果実から作られる故に甘い!! 飲みやすくていくらでも腹に入るぞ!!」
「おお!! あっははは、酒ってうんめぇなぁぁ!!」
アパパネパとの戦いから数時間後、俺とニーアはジャランダーラの町の宴会におよばれしていた。
町の中央広場に大きな櫓が組まれ、ごうごうと燃えている。その櫓の周りで女たちが踊り、俺とアパパネパとジャランダーラの長、そしてニーアの四人は特等席で眺めていた。
俺はアパパネパから大きな実をくり抜いて作った器を受け取り、その中に入っていた甘い酒をガブガブ飲んでいた。
「っぷっはぁぁ~~っ!! ジャランダーラ最高!!」
「はっはっは!! その通りだ!! 森の戦士は砂の民などには負けーーーんっ!!」
「「「「「うおぉぉぉーーーっ!!」」」」」
アパパネパの叫びに戦士たちが雄叫びを上げる。
なんというか、すっごく楽しかった。
俺は酒を飲みながらアパパネパに聞いてみた。
「つーかお前、怪我は平気なのか? けっこう強めに殴ったつもりだけど」
「問題ない。オレは頑丈でな」
けっこう顔面殴ったのに、薬草を塗りたくっただけでピンピンしていた。
こいつの厄介なところって頑丈さかもな。打撃はあんまり効いてないようだ。
ニーアというと……ジャランダーラの若い女たちに絡まれていた。
「あ、あの、ぼく……」
「可愛いわねぇ」「ボウヤ、今夜どう?」「ふふ、綺麗な肌……」
「っひ、あのぼくはその……フレアさぁ~んっ!!」
「あっはっは。なんだニーア、楽しそうじゃん」
「そ、そんなわけないですぅ!! 助けてくださぁ~いっ!!」
「男だろ? そのくらい自分でなんとかしろって」
「うぅぅ……」
俺は酒を飲み、ウシの丸焼き肉を食べる……やっぱ美味い。
真っ昼間から大騒ぎして申し訳ない。でも、カグヤとレイチェルが見つかるまでは慌ててもしょうがないからな。
ちなみに、ラキューダとシラヌイも肉をガツガツ食べている。
「いやぁ~……肉は美味いし酒も美味いし、俺ここに住みたいなぁ」
「はっはっは!! 気に入ってもらって何よりだ。砂の王国よりも森を選んでくれるか」
「うん。暑いのとか砂漠は嫌いじゃないけど、なんとなく森のが好きだ」
アパパネパは酒をがぶ飲みしながらウンウン頷く。
そんなアパパネパを見て、長はタバコを吹かした。
「ったく。調子に乗るんじゃないよアパパネパ。おい客人、あんたも滅多なこと言うんじゃない」
「えー、けっこうマジだけど」
「そうだぞ長。よし、用事が済んだらここに戻ってくるといい」
「あー……悪い、俺約束があるから」
「む、そうか……なら、約束を済ませて戻って――」
と、アパパネパの言葉は最後まで続かなかった。
「た、大変だーっ!! 砂の民が来た!! 戦士たちが怪我して戻ってきたぞー!!」
と、ジャランダーラの戦士が叫びながら飛び込んできたからだ。
◇◇◇◇◇◇
宴会は中止。中央広場は怪我人だらけになった。
「す、砂の民が……廃鉱山に。円剣、と……銀髪の少女が、戦って……負けた。女が二人と、細い男の三人が……連れ去られた」
「マジで?」
「あ、ああ……金髪の女、銀髪の、蹴り技を使う少女……あと、男だ」
「男? うーん、金髪はレイチェル、銀髪はカグヤだな。男ってなんだろうな?」
「れ、レイチェル……カグヤさん」
怪我人の一人から話を聞いた。
どうも、レッドルビー王国の軍隊にカグヤたちは連れ去られたようだ。つーかカグヤの奴が負けるとは思わなかった。あいつけっこう強かったし。
「んー……どうする、ニーア」
「行きます」
「どこに?」
「レッドルビー王国……レイチェルとカグヤさんを助けないと!!」
「助けるって、あいつら別に悪いことしたわけじゃないだろ? 王国まで行って、適当に尋問されたらポイされると思うぞ。あとは回収すればいい」
「…………」
ニーアは俺を見て歯を食いしばる。
だが、ジャランダーラの長はフンと鼻を鳴らした。
「甘いね。今のレッドルビー王国軍はそんな甘っちょろくない、国王が死にかけてピリピリしているから、疑わしき奴はどんな理由だろうと罰せられるよ。他国の間者って判断されればその場で処刑さね」
「かんじゃ……かんじゃね」
「……スパイですね?」
ニーアが補足してくれた……なんかすまん。
長が話を続ける。
「ゆっくり話してやろうかと思ったが時間がなさそうだ。とりあえずこれだけは覚えておきな。今のレッドルビー王国は二人の王候補によって動かされている。一人はレッドルビー王国軍を牛耳る第一王子ダルツォルネ。もう一人はレッドルビー王国冒険者ギルドを牛耳る第二王子カガリビだ。この兄弟のどちらかが次期国王となるだろうね。現王がおっ死ねばすぐに殺し合いを始めるような血の気の多い奴だ」
「で? なんか関係あんの?」
「フレアさん、話を聞きましょう」
「……おう」
ニーア、なんか雰囲気変わったな……へへ。
「あんたらの仲間を連れ去ったのが円剣なら、レッドルビー王国軍の中でもヤバい連中なのは間違いない。取り返すってんなら……軍に喧嘩売るってことさね。その覚悟はあるのかい?」
「覚悟もなにも、レイチェルとカグヤは何もしてないぞ」
「バカタレ。円剣のマルチューラは重度の美少女好きなんだ。殺さず連れ帰ったってことは、楽しむために決まってるじゃないか」
「ゑ……」
「か、カグヤさんと、レイチェルが!?」
女ってそんな奴ばっかりなのか?
女は男を好きになるのが俺の常識だったんだけど……アイシェラといいレイチェルといい、その円剣とかいう奴といい、妙なのばっかだな。
すると、ニーアが俺に向かって言う。
「ふ、フレアさん!!」
「ん?」
「ぼ、ぼく……レイチェルたちを助けたいです!!」
「そうか。じゃあ行くか」
「はいっ!!……え」
「行くんだろ? シラヌイ、ラキューダ!!」
『わんわんっ!!』
『ブルルルルッ!!』
シラヌイがニーアのカバンを咥え、ラキューダがその後ろを付いてくる。いつの間にかラキューダはシラヌイの部下みたいになっていた。
俺はニーアのカバンをラキューダに積む。
「行くぞ」
「あ、あの」
「俺はお前の護衛だからな。お前が行くってんなら付いていくし、どんな奴だろうとぶっ飛ばしてやる。それがお前との約束だしな」
「フレアさん……」
「へへ、なんか格好良くなったじゃんニーア。さっきまで女に囲まれてオドオドしてた奴とは思えないな」
「う……だ、だって、レイチェルが」
「はは、ほら乗れよ。行くぞ」
「……はいっ!!」
ニーアをラキューダに乗せ、ニーアに覆い被さるように俺も座る。
シラヌイは準備運動と言わんばかりにその場で跳躍し、ラキューダは唸りを上げた。
「じゃ、婆ちゃん、メシ美味かったよ。森を出るにはあっちでいいのか?」
「待ちな。客人の見送りくらいさせとくれ……アパパネパ、ウッポポムー!!」
「「ウーッ!! スポポイッ!!」」
「え」
長が呼ぶと、奇声を上げてアパパネパとウッポポムーさんが来た。
「客人が出発する。道案内と護衛を務めな」
「いや、別にいいって。怪我人いっぱいいるんだろ?」
「いいから任せろ。ウッポポムー、『ビッグローチ』と戦士たちを」
「スポポイッ!! 任せとけ」
うーん、義理堅い……ま、案内してくれるならいいや。




