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地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第四章・ジャングル/ジャランダーラ/怪しい学者

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ルート3/カグヤ・レイチェル⑤/BOSS・円剣のマルチューラ

 円剣のマルチューラ。

 彼女の武器は両手に持った巨大なリング。カグヤはそう考えて思う。

 円剣(・・)。どう見ても剣ではない。カグヤは構えたまま、マルチューラを観察した。

 小麦色の肌、胸を覆うサラシと短いスカート、装飾の施された襟巻き、足は動きやすさを重視したサンダルだ。長い黒髪をまとめ、骨のような髪留めをしている。

 表情は気だるげでやる気があまり感じられないような気がした。

 

「観察終わった?」

「ええ。アンタがよくわかんない……でも、だから戦いって面白いのよね!!」

「ん、そうだね」


 マルチューラは、大きなリングを腕に通してクルクル回す。

 リングは直径五十センチほどだろうか。あの武器でできそうなことをカグヤは計算。マルチューラが魔法使いという考えも考慮に入れて戦術を組み立て……。


「いっくわよっ!!」


 ……る、ことはなかった。

 どんな攻撃だろうと足技でねじ伏せる。それがカグヤの戦闘スタイル。

 フレアと違うところはこの短絡的な思考にあった。それが強みであり弱点ということにまだ気付いていない。


「神風流、『礫蹴り』!!」


 カグヤは思いきり地面を蹴り、マルチューラに向かって小石を飛ばす。

 小石は近くで戦っていたジャランダーラの戦士とレッドルビー王国軍兵士に直撃するが、カグヤは無視。

 マルチューラに向かって数発の小石が飛ぶ。


「ふふ……」


 マルチューラは、リングを手に持ち小石を叩き落とす。もちろん、こんな小技を喰らうとは考えていない。

 カグヤはすでに次の攻撃に移っていた。


「神風流、『連牙脚』!!」


 小石を囮に一瞬で近づき、連続蹴りを食らわせる。

 だが、マルチューラはその全てを躱し、リングで受け流した。

 

「このっ!!」

「っく……」


 カグヤの連続攻撃。

 前蹴り、回し蹴り、飛び蹴り、かかと落としを組み合わせ、マルチューラを追い詰めていく。

 だがマルチューラは全てを辛うじて回避していた。

 最初の余裕は消え、カグヤの激しい攻撃に反撃する暇がない。リングは防御に使われている。


「しゃぁっ!!」


 カグヤは顔面を狙った蹴りを放つ。

 マルチューラは蹴りを躱し、リングを突き出した足に通した。


「わわっ!?」

「ふんっ!!」


 カグヤの足に通ったリングをマルチューラが引くと、カグヤの体勢が崩れた。

 そこに、もう片方のリングを腕に通したマルチューラの拳が、カグヤの腹に突き刺さった。

 苦悶の表情をしたカグヤはマルチューラから離れ、お腹を押さえる。


「ぐっがぁ……い、いいパンチじゃん」

「どーも」


 互いに、接近戦が得意な者同士だ。

 マルチューラのリングは拘束用。手足を封じて接近戦に持ち込むための物。

 カグヤはそう解釈するが関係ない。自分も同じ、足技だけなのだ。


「うっし……アンタの手持ちはわかった。もう喰らわない」

「あっそ。私もなんとなくわかった。あなた、お肌も髪も綺麗……鍛えてるみたいだけど柔らかいし、抱いて寝たら気持ちよさそうね」

「……は?」

「ふふ、決めた。あなた……私の家に連れていくね」

「え、やだ。なんかキモイ」


 なんとなく、カグヤは悪寒を感じた。

 マルチューラの目の色が変わったのだ。まるで蛇のように獲物を狙う爬虫類の目へ。

 カグヤは構え、本気で狩ることに決めた。周囲を見ると、ジャランダーラの戦士とレッドルビー王国軍兵士の戦いも終わりが近い。ジャランダーラの戦士がやや不利な状況だ。

 コクマとレイチェルは……。


「ヒトの心配? ふふ、一瞬だけ意識が別のところに向いた……誰かいるんだ?」

「っ!! さ、さぁね~? なんのことかしら~♪」

「噓ヘタすぎ」


 ドクン────ドクン────ドクン────。

 カグヤは、心臓が高鳴るのを感じた。

 このままではコクマとレイチェルが見つかる……そんな不安が心臓に現れて────ではない。


「…………!?」

「どうしたの?」

「べ、別に……!! な、なんでもないっつーの!!」

「ふふ」


 マルチューラは、ニタリと笑う。

 カグヤの胸の高鳴りが、止まらなかった。

 胸が熱い。呼吸がおかしい。顔も熱い────そして、ようやく気付いた。


「あ、アンタ……あ、アタシに……なんかした!?」

「気付いた? ふふ、ドキドキするでしょ? まるで恋してるみたいに」

「っく────……」


 カグヤは胸を押さえた。

 息苦しい。胸が熱い。鼓動が高鳴る。

 でも、でも、でも。


「気持ちいい、でしょ?」

「ふ、っざけんなぁぁぁっ!!」


 カグヤは飛び出した。

 マルチューラに向かって全力で飛び上がり、飛び蹴りを食らわせる。

 だが、胸が熱い。毒でも受けたのか。

 飛び蹴りは容易く躱された。いつもなら二手三手繰り出すのだが、なぜか動けなかった。

 マルチューラは、甘い声で囁く。


「教えてあげる……私、《特異種》なの」

「……っ」

「ふふ。可愛がってあげるね」

「あっ────」


 プツリと何かを刺されたカグヤは、あっけなく崩れ落ちた。


 ◇◇◇◇◇◇


「ぼぼぼ、ぼくはレッドルビー王国考古学院所属の」

「姫、こいつらはどうしますか?」

「んー、とりあえず連れていこっか」

「っく……」


 コクマとレイチェルはあっけなく捕まった。

 カグヤはスヤスヤ眠り、マルチューラの乗っていたラキューダに乗せられる。

 ジャランダーラの戦士は敗北し、怪我人を連れて撤退したようだ。

 レイチェルは、マルチューラに言う。


「おい、私たちをどうするつもりだ」

「んー、怪しいから連れてく。この子は私が可愛がって、そっちの男は身分照会してあとはお任せ、あなたは……好みじゃないけど、この子の次に可愛がってあげる」

「き、貴様、まさか……同性愛者か!!」


 そう、マルチューラは同性愛者だった。

 ジャンルは違うが似たような性嗜好を持つレイチェルは看破した。マルチューラはカグヤを愛でる……レイチェルがニーアにしているように。

 そして、その次は自分……。


「な、なんてことだ……待て、私は「じゃ、帰ろう。いいオモチャ手に入った」ま、待って!! 私は坊ちゃま、坊ちゃまがぁぁぁーーーっ!!」


 こうして、カグヤたちは一足先にレッドルビー王国へ……。

 

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
連載中です!
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― 新着の感想 ―
[一言] まあなんですか?ヘンタイが多すぎません?
[一言] カグヤって主人公戦じゃ呪いでさっくり負けて この間の八本腕でもあの醜態で、今回もこんなんで… 設定上は強キャラだけどまじかませだなw
[一言] カグヤ‥足手纏いすぎるw
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