表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第四章・ジャングル/ジャランダーラ/怪しい学者

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

68/395

ルート3/カグヤ・レイチェル④

「貴様ら!! ここはジャランダーラの神森であるぞ!!」


 カグヤたちが休憩所から出ようとすると、鉱山入口から何人もの男たちがなだれ込んできた。

 コクマは慌ててカグヤたちを止める。


「じゃ、ジャランダーラの戦士だ!! まずい、今出るとぼくたちも敵と見なされる!!」

「は? ぶっ飛ばせばいいじゃん」

「駄目だって!!」

「静かにしろ。様子を見るぞ……」


 レイチェルがゆっくり入口から外の様子を窺う。すると、王国軍とジャランダーラの戦士が言い合いをしているようだった。

 

「砂の民め!! ここは我らがジャランダーラの……」

「黙れ!! ここはレッドルビー王国。全ての大地は国の物……」

「ここから去れ!!」「さもなくば……」「戦争……」


 戦士と兵士の怒号はボルテージを上げていく。

 そんな中、カグヤは落ち着いた様子で怒号が飛び交う中を観察していた。


「へぇ……」


 カグヤの視線は、レッドルビー王国軍のマルチューラに向いている。

 ぼーっとしているようだが、怒号が飛び交うこの状況を冷静に観察していた。兵士と戦士が一触即発の状況で、いかに有利に戦えるか。そんな風に考えている目だ。


「ねぇ、ここでアタシらが出たらどうなる?」

「そんなの決まってる。余計に混乱させるだけだ……今の状況でぼくらが出たら」


 と、コクマの言葉は最後まで続かなかった。

 カグヤが石を拾い、そのまま軽く投げたのである。

 

「え」

「なっ……」


 コクマも、レイチェルもカグヤを止めることはできなかった。

 止めるも何も、カグヤがこんな行動をするとは思わなかったのである。

 石は高く上がり落下……落ちた先は、レッドルビー王国軍の兵士の頭上だった。


「っづ!? な、この……誰だ!!」

「黙れ砂の民!! この地から出ていけ!!」

「~~~っ!! この、痛ぇじゃねぇかこの野郎がぁぁっ!!」

「ごあっ!?」


 兵士は、近くにいた戦士を殴った。

 これをきっかけに、戦士と兵士たちが武器を抜いてぶつかり合う。

 レイチェルはカグヤを睨んだ。


「貴様、何を考えている!!」

「決まってんじゃん。あいつらが戦ってる隙にここから出るのよ。ほらコクマ、案内しなさいよ」

「で、でも……出口はあそこしかない。脱走防止のために、入口と出口は一か所しかないんだ」

「ああ、じゃあ……この戦いが終わるまで出られないのね。というか、こんな状況だとアタシらの居場所もすぐにバレるわね……ほら」

「え……う、うわっ!?」

「くそ……カグヤ貴様、こうなることを」

「さぁね。アタシは強い奴と戦いたいのよ」


 ラキューダに乗った円剣のマルチューラが、カグヤたちのいる場所をジーっと見ていた。


 ◇◇◇◇◇◇


「じゃ、アンタらはここに隠れてなさい。アタシは……遊んでくるっ!!」


 カグヤは飛び出した。

 狙いは円剣のマルチューラ。マルチューラはラキューダから下りると、ラキューダにぶら下げていた巨大なリングを取り、くるくると回す。

 カグヤの襲撃などお見通し。そんなはずはないのだが……無表情なのでよくわからない。 

 ジャランダーラの戦士とレッドルビー王国軍の戦いの隙間を抜い、カグヤはマルチューラに向かって跳躍、飛び蹴りを放つ。


「神風流、『流星撃(りゅうせいげき)』!!」

「…………」


 岩をも粉砕する鋭い蹴り。

 マルチューラは半歩だけ横に移動し、流星のような蹴りをギリギリで躱した。

 カグヤはマルチューラのすぐ近くに着地。そのまま回し蹴りを繰り出すが、マルチューラは後ろに倒れるようにして回避した。

 ここで、レッドルビー王国軍とジャランダーラの戦士は、ようやくカグヤの存在に気が付いた。


「あなた、だれ?」

「カグヤ。奇襲みたいで悪かったけど、アンタと戦いたくて我慢できなかったの」

「ふーん……ふむふむ、お人形さんみたい」

「あ?」

「綺麗な髪、綺麗な目、綺麗な身体……精巧に作られたお人形さんみたいだなって」


 カグヤの額に青筋が浮かぶ。


「遊びたいの?」

「うん。強い奴を見ると身体が疼いちゃうのよ。アンタ強そうだし、相手してくれる?」

「いいよ。私、強い女の子嫌いじゃない。連れて帰ってペットにしてあげる」

「はっ……」


 カグヤは半身で構え、マルチューラは巨大リングを両手に持つ。

 

「みんな、私はこの子と遊ぶから。邪魔な奴はみーんな殺しちゃっていいよー」

「「「「「はっ!!」」」」」


 マルチューラはレッドルビー王国軍兵士にそう指示した。

 ジャランダーラの戦士たちも雄叫びを上げ、兵士たちとの戦いはさらに白熱する。

 この状況を、コクマとレイチェルは見ていた。


「ああくそ……カグヤめ、面倒なことをして……!!」

「ど、どうします?」

「…………あいつを見捨てて逃げるのは簡単だが、坊ちゃまが悲しむな」

「で、では加勢を」

「バカを言うな。数人程度ならなんとかなるが、この人数相手では不利だ。円剣のマルチューラに数十人のレッドルビー王国軍、そしてジャランダーラの戦士……両軍から攻撃を受ける可能性もある」

「じゃあ……」

「今はここに隠れて様子を見る。まだ出るときじゃない」

「は、はい……」


 レイチェルはため息を吐き、もう一度呟いた。


「全く、カグヤめ……面倒なことをして」


 廃坑の戦いは、ますます過激になっていく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
連載中です!
気に入ってくれた方は『ブックマーク』『評価』『感想』をいただけると嬉しいです
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ