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地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第四章・ジャングル/ジャランダーラ/怪しい学者

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ルート1/フレア・ニーア④/BOSS・アパパネパ

 ジャランダーラの戦士アパパネパ。

 ガチムチの体躯、二メートル超えの身長、魔獣の骨や羽根で作った鎧や飾りをつけ、跪いて森にお祈りをしている……どうやら、戦いの儀式らしい。

 こいつと戦うことになった俺は、町の中央広場で準備運動をしていた。

 周囲には大勢の観客が。観客と言うかジャランダーラの町民、そして戦士たち……あ、俺がぶん殴った奴らもいる。めっちゃ俺を睨んでブーブー文句言ってる。


「アパパネパ、やっちまえ!!」「ジャランダーラの戦士の力を!!」

「アパパネパ!! アパパネパ!!」「誇りを見せろ!!」

「「アパパネパ!!」」「「アパパネパ!!」」「「アパパネパ!!」」


 やっかましいなぁ……そりゃ敵陣っぽいところだから仕方ないけど。

 ニーアとシラヌイはウッポポムーさんと一緒にいる。ちょっと居心地悪そうだけど我慢してもらうか。

 俺は屈伸して腕を回し、首と指をコキコキさせる。


「ウーッ……スポポイ!!」

「は?」

「「「「「「ウーッ……スポポイ!!」」」」」」

「うおっ」


 いきなりアパパネパが万歳して叫ぶ。すると周囲の連中も同時に叫んだ。

 なにこれ。儀式だろうけどちょっと怖い。

 アパパネパは俺をまっすぐ見て言った。


「待たせたな」

「いや、いいよ」

「武器は?」

「俺の武器は身体全部。あんたは?」

「オレもだ。鍛え抜かれた鋼の肉体こそがオレの武器。そして鎧!!」


 アパパネパは全身に力を込める。すると着ていた鎧に亀裂が入りはじけ飛んだ。


「「「「「おおぉーーーっ!!」」」」」

「…………」

「フッ……さぁ、やるか」

「あ、うん」


 いや、なにこれ。そんな無駄なことするくらいなら鎧なんて着てなくていいじゃん。

 そう言おうと思ったが、アパパネパはすでに構えに入っている。

 ま、いいか。呪術を使えば簡単に終わるだろうけど、肉弾戦でこれほどの相手、そうはお目にかかれない。炎も使わず、呪闘流だけで戦いますかね。


「ジャランダーラ神森の戦士アパパネパ。推して参る!!」

「呪闘流甲種第三級呪術師ヴァルフレア。さぁ、やるか!!」


 俺とアパパネパの戦いが始まった。


 ◇◇◇◇◇◇


 なんとなくだけど、負ける気がしなかった。

 だって。ここはジャングル……町と言っても集落に毛の生えたような場所で、武器も魔獣の骨や皮を使ったものが多い。

 食事も肉や木の実がメイン。農耕も多少はやっているだろうけど、やはり文明の高さは今までの町に比べると低いと言わざるを得ない。

 決して馬鹿にしてるわけじゃない。個人的にはここは好きになれそう。

 だが、技術の発達は遅れている……そう思うほかなかった。


「ガァッ!! ダァッ!! ゼヤァァッ!!」

「…………」


 俺は、アパパネパの攻撃を全て躱していた。

 実に容易かった。だって腕や足を振り回すだけなんだもん。動きは単調で読みやすい。

 でも、鍛え抜かれた肉体は本物だった。カウンターで当てた拳や蹴りが殆ど効いていない。金的やツボを突いても耐えるくらいだしな。

 筋力、耐久力はアパパネパが遥かに優る。でも……武術という概念が存在しないジャランダーラの戦士に、武術を修めた俺が負けるはずがない。


「流の型、『(さざなみ)』」

「ムォォッ!?」


 豪快なパンチ。

 まっすぐ飛んでくる拳を横から軽く叩いて軌道を逸らし、アパパネパの体勢を崩す。

 崩れた瞬間を狙い、俺は全身を硬直させて関節を締める。


「甲の型、『鉄震甲(てっしんこう)』」


 そのまま肘撃ち。カウンターで腹にめり込み、アパパネパは苦悶の表情を浮かべる。

 俺は右手を開き、アパパネパの顔面を軽く叩いた。


「滅の型、『百花繚乱(ひゃっかりょうらん)』!!」


 両手を使った目にも止まらぬ連撃を、全て顔面に叩き込む。

 筋肉の薄い顔ならダメージは通る。アパパネパは鼻血を噴き出し涙を流した。


「ク、アァァ……ッガァァァ!!」

「頑丈な奴だな……よし、とどめといくか」


 俺に覆いかぶさろうとするアパパネパ。

 俺は一瞬でしゃがみ、全身のバネをフルに使った蹴りをアパパネパの顎に叩き込む。


「滅の型、『飛翔鉄槌(ひしょうてっつい)』!!」

「ぷっげぁぁぁっ!?」


 アパパネパは吹っ飛び、脳震盪を起こして気を失った。


「押忍っ!!」


 楽勝。そうは言わず、俺は頭を下げた。


 ◇◇◇◇◇◇


「さすがだね」

「いやどうもどうも」


 再び、俺とニーアとシラヌイはジャランダーラの長に呼ばれて家へ。

 煙管をプカプカふかす老婆は実に楽しそうだった。


「あんたとアパパネパを見て、昔ここに来た女暗殺者と戦りあったことを思い出したよ……実に懐かしい気分になれた」

「あ、はい」

「さて、あんたは力を示した。ここであんたに意見する奴はもういないだろうね。うちの若衆が戻るまでのんびりするといい。あんたの仲間を見つけたら連れてこさせるからね」

「お、やった!! ありがとう婆ちゃん!!」

「ふふ。あたしもあと五十年若けりゃ、あんたの相手をしてやったんだがね」

「えー? 婆ちゃん、あのアパパネパだっけ? あいつより強いの?」

「…………そういう意味じゃないんだけどね。まぁいい、今夜は宴さね」

「やった!! あのさ、肉いっぱい食べたいな!! なぁニーア、シラヌイ!!」

「え、は、はいっ!!」

『わんわんっ!!』


 というわけで……俺とニーアはここでのんびり待つことにした。


 でも……まさかあんなことになるとは思わなかった。

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
連載中です!
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― 新着の感想 ―
[一言] ヨポポイ・トポポイ・スポポポーイ!! 懐かしいな
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