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地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第四章・ジャングル/ジャランダーラ/怪しい学者

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ルート3/カグヤ・レイチェル②

 洞窟は薄暗い。

 完全な暗闇というわけではない。壁に埋まっている鉱石がぼんやりと発光しているおかげで、僅かながらの視界は確保されていた。

 カグヤはずんずんと進み、レイチェルは警戒しながら進む。


「おい、少しは警戒しろ」

「へーきだって。魔獣の気配は感じないし……それに、ここ涼しいし、意外と外まで繋がってたりして」

「楽観的な奴め……」

「ま、魔獣が出てもアタシがなんとかするから」

「……虫が出て大騒ぎするくせに」

「う、うっさい!」


 カグヤの言う通り、魔獣は現れない。

 曲がり道もなく、ひたすら真っ直ぐな道しかない洞窟だ。洞窟と言うよりトンネルに近いだろう。

 特に魔獣も現れず、ひたすら進んでいくと……。


「お!! 見て見て、なんか明るい!!」

「本当だ……どうやら出口のようだな」

「行こっ!!」

「ま、待て!! 少しは警戒しろ!!」


 走り出したカグヤを追うレイチェル。

 そして、二人は洞窟の出口へ。


「…………」

「…………」


 二人は硬直した。

 なぜならそこは出口ではなかった。


「なにこれ……?」

「これは……」


 そこは、とても広い空間だった。

 巨大な半円形状で、壁の至る所に穴が空いている。線路のようなものが敷かれ、朽ちたトロッコやショベル、ツルハシなどの道具も落ちている。そして、何より目立ったのは……無数の人骨だった。

 レイチェルは、人骨の一つに近付く。


「見ろ。これは……」


 レイチェルの見つけた人骨。

 頭蓋骨の部分に朽ちたツルハシが刺さっていた。他にも、折れた腕骨、槍のような物が刺さり壁にもたれ掛かる人骨と様々ある。


「恐らく、ここは鉱山……そして内乱が起きたのだろう」

「内乱?」

「ああ。鉱山で内乱が起こる理由は一つ」


 と―――次の瞬間、カグヤが渾身の回し蹴りを繰り出した。


「―――っひ」

「誰?」


 凍てつくような銀の殺気……カグヤの背後には、いつの間にか一人の男性がいた。

 突然の回し蹴りに身を固くし、首の手前で止まったカグヤの足に目だけを向ける。

 男は持っていた本を落とし、ゆっくりと手を上げる。


「誰、って聞いてんだけど?」

「あ、怪しい者じゃない……ぼ、ボクはこの鉱山調査をしてる考古学者だ」

「考古学者ねぇ? アタシに気付かれずに背後に回るなんてねぇ」

「そ、それはボクが《特異種》だからだよ!! ボクは自分の出す『音』や『気配』を消すことができるんだ! この力のおかげで魔獣には狙われないし、危険地帯にも入り放題で……し、信じてくれ!!」

「ふーん……でも、声も掛けずにアタシの射程内に入るのはどうかなぁ?」

「っひ……」


 カグヤの足が硬質化し、レガースの脛と脹ら脛の部分に刃が形成される。

 男は青ざめガクガク震えていたが、ようやくレイチェルが助け船を出した。


「よせ。せっかくの情報源だ」

「えー」

「いいからやめろ……大丈夫か?」


 カグヤが文句を言いつつも足を引っ込める。

 どうやら背後を取られたことにかなりムカついているようだ。

 男はへなへなとへたり込み、レイチェルの差し出した手を掴んだ。


「あ、あれ……あはは、腰抜けたみたい」

「……やれやれ」


 ボサボサの髪、無精髭、片眼鏡を付けた三十代ほどの男だった。

 緑色のローブを身につけ、身体がすっぽり隠せそうなリュックを背負い、腰にランプをぶら下げている。鉄パイプのような棒を杖代わりにした、学者風の男性だった。

 男はへたり込んだまま自己紹介した。


「ボクはコクマ。レッドルビー王国考古学院の研究者さ」

「私はレイチェル。彼女はカグヤだ。さっそくだがいくつか聞きたいことがある。それと……会ったばかりで心苦しいのだが、水をもらえないだろうか」

「あはは。いいよ、っと……じゃあ、場所を変えようか。この鉱山跡地に作業員の休憩所があったはず。そこの水源はまだ生きているはずだ」

「さっすが現地民、ってことでいいの?」

「うん。ここには何度か調査に来てるからね」


 コクマはリュックから水の瓶を二本取り出し、レイチェルとカグヤに渡す。

 

「きみたち、旅人かい? かなり軽装だけど……水も持たずにこの『ジャランダーラの神森』に踏み込むなんて、上級冒険者でもしないよ」

「ジャランダーラの、しんりん?」

「え、知らないのかい? ここはレッドルビー王国の中にある独立国家、ジャランダーラの森人が管理する森だよ……って、レッドルビー王国民じゃないならわからないか」

「……詳しく頼む。私たちの状況も説明しよう」

「んー、なんか大変そうだね。わかった」


 レイチェルとカグヤ、そしてコクマは、鉱山跡地の休憩所へ向かった。

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
連載中です!
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