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地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第四章・ジャングル/ジャランダーラ/怪しい学者

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ルート1/フレア・ニーア②/BATTLE・ジャランダーラ

 とりあえず、妙な連中をぶっとばすか。

 俺は脱力し、左手を前に右手を軽く握る。


「流の型」

「砂の民め!!」


 骨で造った剣を振りかぶる敵……まぁジャングル部族とでも呼ぶか。

 ジャングル部族はなかなか鋭い動きで剣を振ってくる。俺は剣の動きをよく見る。武器相手の訓練もやったからな……先生に比べたら大したことない。


「この、砂の民っ!! 死を受け入れ土に還れ!!」

「え、やだ」


 俺は振り下ろされた剣に左手の甲を当て、右手で左手の掌を叩く。

 衝撃が骨の剣に伝わり、剣はあっけなく砕ける。ジャングル部族はギョッとした。


「なっ……」

「流の型、『刃砕(じんさい)』 っとりゃ!!」

「ぐっぼぁぁっ!?」


 そのまま、顎を狙って思い切り蹴り上げるとジャングル部族は吹っ飛んだ。

 『刃砕』は剣破壊の技。振り下ろしのタイミングと手の甲を合わせるタイミング、そして衝撃を伝えるタイミングが全て合わないと成功しない技なんだよね。

 先生との訓練では模擬剣だったけど、百回中百回成功しないとメシ抜きだったから必死だった。おかげで武器破壊は自信あるんだよねー!


『がるるるっ!!』

「この犬、燃えてるぞ!!」

「近づくな、弓で狙え!!」


 と、そんな声が聞こえてきた。

 シラヌイの方を見ると、すでに何人かが火傷で倒れていた。

 というかシラヌイ……知らない間にかなり強くなってやがる。飛んでくる矢を躱し、その内の一本を空中で咥えて近くのジャングル部族の肩に突き刺した。そして耳に噛みつき炎で炙ってる。

 

「砂の民め!!」

「おっと!!」


 俺はジャングル部族の槍を躱し、流れるように肘打ちを食らわせて顎を蹴り上げる。

 せっかくだ。大暴れさせてもらおうかな。


「シラヌイ、無茶すんなよ!!」

『わんわんっ!!』


 俺は手をゴキゴキ鳴らし、ジャングル部族に向かう。

 何人か殴り倒し、蹴り倒すとジャングル部族の一人が叫ぶ。


「こいつ厄介だ、弓だ!! 弓を使え!!」

「はっ、そこか!!」


 アホめ。樹の上を見ながら叫ぶってことは、そこにいるってことじゃんか。

 俺は泉に向かい、水を思い切り蹴った。


「第二地獄炎、『ブリザラ・チェイン』!!」


 水は蒼い炎で燃え上がり、空中で氷の鎖が形成される。その数たくさん!! 氷の鎖は何百本も樹の中に突っ込み、全身が氷の鎖で巻かれたジャングル部族がボトボト落ちてきた。

 リーダー格っぽいジャングル部族が叫ぶ。

 

「この力……貴様、『神の使徒』か!!」

「はい?」

「ええい、人の身でありながら神の奇跡を使うとは……やはり砂の民は汚れている!!」

「いやーもうなんでもいいわ」


 めんどくせぇなぁ……さっさと終わらせるか。


 ◇◇◇◇◇◇


「おらよっとぉ!!」

「ごぷぁっ!?」


 ジャングル部族最後の一人を殴り倒し、あらかた片付けた。

 誰も死んでない。何本か骨は折れてるだろうけど、襲い掛かってきたのはこいつらだし、そのくらいは勘弁してもらおう。

 俺はシラヌイを撫でる。


「よしよし、よくやったな」

『きゅぅん』


 撫でられるシラヌイは尻尾をブンブン振る。

 俺は周囲を警戒し、ニーアたちを囲っている氷の牢獄を解く。すると、なぜか恍惚の表情を浮かべるニーアとラキューダがいた。


「終わったぞー……って、どうした?」

「あ、フレアさん。あの……この中、とっても涼しくて」

「はは。氷の牢獄だからな。このクソ熱いジャングルじゃ最高のテントか」


 シラヌイはニーアに擦り寄ってぺろぺろと頬を舐め、ニーアはシラヌイを抱っこして撫でた。

 俺は泉に近付いて確認……ふと思ったが、この泉の水はかなり綺麗だ。


「どれ……ん、うまい」


 ためしに掬って飲んでみたが、透き通っているし冷たいしかなり美味い。

 空き瓶に水を入れ、濡らした手拭いを巻いて凍らせておく。ニーアとラキューダを呼び、たっぷり水を飲ませた。


「お、おいしい!」

「ああ、うまいな」

『わんわんっ!!』

『ブルルルルッ!!』


 水分補給完了。

 ニーアたちはともかく、これで俺は一週間は水分補給しなくても大丈夫。 

 ジャングル部族たちが起きる前に、さっさとジャングルを出るか。


『…………』

「ん、どうしたシラヌイ?」

『…………くぅん』


 ふと、シラヌイが泉を見たまま動かなくなった。

 そして、唐突に身体を燃やし遠吠えをしたのである。


『ワォォーーーーーーン……』

「し、シラヌイ……? って、なんだ……?」


 すると、泉の中央に変化があった。

 なんと……一メートルほどの水玉がコポッとせり上がり、俺たちの目の前で形を変えていく。

 水玉は弾けて小さな水の粒となり周囲を浮き、その中心に何かがいた。


「……なんだあれ?」

「あれ、お魚……ですよね?」


 そう、水色の魚が浮いていた。

 細長く、ヒレが大きい。口の部分がやたら尖っている魚だ。


『キュゥゥゥ……』

「な、なんだろう……なぁ、喰えるのか?」

「い、いえ、なんかそんな雰囲気じゃないですよね」

「どうする? 今日の晩メシ」

「こ、このタイミングでそれを言うんですか?」


 俺とニーアは、今日の夕飯の話を始める。すると、背後で気配がしたので振り返る。

 そこには、俺に吹っ飛ばされてボロボロのジャングル部族たちがいた。全員戦意を失い、泉の中央を見て涙を浮かべて跪く。


「も、申し訳ありません。偉大なる『水』を司る霊獣、『泉魚アルレシャ』様」

「霊獣?」


 霊獣……はて、どこかで聞き覚えが。


『きゅぅん』

「あ、そっか。お前も霊獣だっけ……すっかり忘れてた」

『わんわんっ!!』


 確か、シラヌイは火の霊獣『焱犬アマテラス』とかいうワンコだった。

 んで、目の前に浮いてる魚が水の霊獣か。

 ジャングル部族たちは俺の言葉に反応した。


「霊獣だと……?」

「うん。シラヌイは火の霊獣。な」

『わんわんっ!!』

「…………っ」


 シラヌイが遠吠えすると、水の霊獣も水玉をくるくる回した。どうやら互いに反応してるようだ。

 これにはジャングル部族たちも驚いた。


「おお……アルレシャ様が喜んでおられる!」

「そうなのか?」

「アルレシャ様、彼らは……はい……わかりました」

「あの、聞いてる?」

「旅人よ。これまでの非礼を詫びる。貴殿らをジャランダーラの正式な客人として迎えるようにとアルレシャ様から賜った。我らの町に案内しよう」

「超展開すぎる……」


 というわけで、ジャランダーラとやらの町に行くことになった。

 これ、もしかしてシラヌイのおかげなのか?


『わんわんっ!!』


 ま、可愛いからいいや。

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
連載中です!
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