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地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第四章・ジャングル/ジャランダーラ/怪しい学者

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パーティ分断

 俺はニーアを追って木の上を跳んでいた。

 レイチェルたちとかなり離れているのがわかる。このままじゃマズイ……と、枝から枝へ跳び移りながらニーアとシラヌイを乗せたラキューダを追う。

 そして、見つけた……爆走するラキューダだ。


「わぁぁぁぁーーーっ!?」

『わんわんっ!!』

「ニーア!! シラヌイ!! 待ってろ、今行く!!」


 ラキューダ、かなり速い。荷台をぶつけながら走っているのか、車輪がガタガタになり積み荷がボロボロ落下している。

 やばいな、食料を積んだ木箱や水の入った樽が落下してる……早く止めないと。

 そう思い、枝から枝へ飛び移っていると────。


『キッキーッ!!』

『ウキキキキッ!!』

「なんだお前ら……邪魔だっ!!」


 俺の左右、そして背後と上から、俺と同じくらいの大きさのサルが襲い掛かってきた。

 サルにしては腕が長く、口からは牙が生えてやがる。

 サルたちは俺を獲物と決めたのか、枝から枝へ跳び移り跳び蹴りをかましてきた。


「おわっ!? この……」

『キキーッ!!』『ウッキーッ!!』


 両手で枝を掴んでスイング、そして勢いに任せての跳び蹴りはけっこう速くて鋭い。しかも足には鋭利な爪が生えており、スイングキックがこいつらの攻撃手段とわかる。

 だが、その程度で俺がやられるわけがない。


「『腱鞘炎の激痛(ゲン・ジョー・エン)』!!」

『ウギッ!?』『ギギギッ!?』『ギャッギィッ!?』


 両手に呪力を込め、飛んできたサルに触れる。

 飛び蹴りしたサルは枝を掴むことができず落下。岩や地面に叩き付けられた。

 ふふ、重度の腱鞘炎じゃ枝は掴めまい。


「おらサルども、邪魔すんなら……叩き落とすぞ!!」

『ッキ……ッ!!』『キキーッ!!』


 サルたちは俺から離れた。どうやら知能はそこそこあるようだ……って、そんな場合じゃない!!

 荷台はすでに限界だった。屋根がめくれ、蹲るニーアが見える。

 興奮したラキューダはめちゃくちゃに走り回り、落下したサルを踏み潰す。


「くっそ……こうなったら」


 俺は枝から枝へ跳び移り、右手を逸らして仕込みナイフを出す。

 そして近くの木に絡まっていた蔦を切断、蔦の先端に斬った枝を巻き付ける。この作業、ニーアを追い枝から枝へ飛び移りながらやる俺ってすごい。


「よっし……ニーア、シラヌイ!! そのまま動くなよ!!」

「は……はいぃぃっ!!」


 俺は全力で飛びラキューダを追い越し、持っていた蔦をぶん投げる。

 蔦は近くの木の枝に絡まる。軽く引いて確認し、俺は向かってくるラキューダを見てタイミングを合わせた。


「行くぞ……っ!!」


 俺は枝から飛び降りる。蔦を摑んだ状態でそして振り子のように揺れ、ボロボロになった荷台に蹲るニーアを掴んだ。

 ニーアを掴んだことを確認したシラヌイは、なんと自ら荷台を飛び降りる……そうか、ニーアを守ってくれたのか。


「よっしゃ捕まえたっ!!」

「わぁぁぁぁーーーっ!!」


 蔦が切れ、俺とニーアは空中へ。そしてニーアを抱いたまま着地。

 岩を避けたラキューダに繋がれた荷台は、遠心力で岩に叩き付けられて木っ端みじんに。衝撃でラキューダの一匹が転倒、もう一匹はそのまま走り去った。


「大丈夫か?」

「は、はい。あの、ありがとうございます!」

『わんわんっ!!』

「いいって。よしよしシラヌイ、お前も……おっと、あいつもか」


 俺はニーアを下ろし、倒れて気を失ったラキューダに近づく。


「おい、しっかりしろ……おい!!」

『ブルルル……』

「ったく、このアホめ」


 ラキューダは無事だ。落ち着きを取り戻し、申し訳なさそうに俯いている。

 ニーアも心配そうにして、消え去ったもう一匹のラキューダが消えたほうを向く。


「もう一匹は……」

「ま、速いし大丈夫だろ。魔獣が出ても上手く逃げるだろうさ」

「はい……」


 ニーアは優しいな。死にかけたってのにラキューダの心配か。

 ラキューダは俺とニーアにすり寄る。どうも暴れたことを反省しているようだ。

 さて、どうするか。


「さーてどうするか。積み荷は全部おじゃん、地図もないしここがどこかわからない。レイチェルたちとはかなり離れたみたいだし……」

「うぅ……」

『くぅん……』


 シラヌイはニーアにすり寄る。

 ま、こうなったのは仕方ない。レイチェルにも言ったけど、先に進むしかない。

 俺はニーアの頭を撫でる。


「とりあえず、使えそうなモンを拾っていくぞ。レイチェルたちと合流しなくちゃな」

「……はい」

「ほら元気出せって!! なんとかなるからよ!!」

「わわっ」

『わんわんっ!!』

『ブルルル!!』


 俺、ニーア、シラヌイ、ラキューダ。

 二人と二匹。さーて、さっさと行きますかね。


 ◇◇◇◇◇◇


 カグヤはイラついていた。


「…………」

『ゲッゲッゲッゲッゲ……』


 気色の悪い笑みを浮かべる八本腕の魔獣、そして魔獣から分離した手の魔獣だ。

 手の魔獣は十体を超え、レイチェルが必死に相手をしている。

 カグヤは、八本腕の魔獣を相手に戦いを繰り広げる……が、もう限界だった。


「レイチェル、こっち来なさい!!」

「なに?」

「いーから!!」


 手の魔獣相手に剣を振るうレイチェルは、言われた通りカグヤの傍へ。

 ちょうど、八本腕の魔獣から距離を取ったカグヤと合流、八本腕の魔獣と手の魔獣がゾロゾロ集まり包囲した。

 

「何をするつもりだ!?」

「面倒くさいから終わらせる。アンタはしゃがんでなさい」


 カグヤは、右足を硬質化させ伸ばし、地面に突き刺す。足の先端が螺旋状になっており、回転することで地面に深く深く突き刺さる。

 カグヤは独楽のように回転、勢いを増していく。

 そして、左足が鋼のように硬くなり、脛の部分が刃のように変化。

 回転したまま横蹴りの要領で足を数十メートル伸ばした!!


「裏神風流、『無双独楽(むそうごま)』!!」


 鋭利な刃となったカグヤの左足が、独楽のように回転。

 八本腕の魔獣と手の魔獣は一瞬で両断。まるでだるま落としのように身体が斬られていく。

 当然のことだが、魔獣たちは絶命した。


「ふぃぃ~……これ、目が回るのよねぇ」

「な、なんという……」


 魔獣だけでなく、周囲の樹も両断……一帯が更地となった。

 足を地面から引き抜いたカグヤは、絶命した八本腕の魔獣を見る。


「あーあ。生身で戦りたかったけど……仕方ないか」

「はっ……ぼ、坊ちゃま!! おい、すぐに坊ちゃまを追う……」


 レイチェルは、気が付いた。 

 木々が倒れたことで、ニーアがどちらの方向へ行ったかわからない。

 青ざめるレイチェルの肩を、カグヤが叩く。


「ニーアはフレアが追ったから平気でしょ。それよか……アタシらのがまずいじゃん」

「…………え」

「荷物、ぜーんぶあっちだよ? 飲み水もないし、ヤバいよ」

「…………」


 レイチェルとカグヤ。二人のサバイバルが始まった。

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
連載中です!
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