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地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第四章・ジャングル/ジャランダーラ/怪しい学者

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炎の在り方

 オアシスの町で二泊してから出発した。

 俺は町を救った英雄ともてはやされた。水で乾杯し、砂豚の肉を焼いて宴会を開いた。しかも水が冷えてて美味い! 第二地獄炎で凍った水はすこーしずつ溶け、町の人たちはこれから冷水を飲めることだろう。

 樽にたっぷり水を入れ、氷を削って浮かべてあるからキンキンに冷えていた。

 レイチェルは水を飲みながら手綱を握る。


「ふぅ、冷えた水は美味いな」

「ふふふ」

「なんだ貴様……恩着せがましい奴め」

「放っておきなさいよ、そんなやつ」

「…………」


 レイチェルとカグヤ、いつの間にか仲良くなったのか……? 

 御者席に座るレイチェルと荷台の屋根に寝転ぶカグヤ。そしてニーアが荷台の窓を開け、シラヌイと一緒に顔を出した。


「フレアさーん、そろそろ休憩しなくて大丈夫ですかー?」

「ああ、まだまだ楽勝だ。お前は水分取って休んでろよー! シラヌイ、ニーアを頼むぞー!」

『わんわんっ!!』

「はーい! フレアさん、無茶しないでくださいねー!」

「おーう!」


 そう、俺はラキューダ車を追いかけるように走っている。

 荷台と並走し、砂漠のジャングルを目指して進んでいた。

 

「なぁレイチェル、ジャングルはまだかー?」

「まだ先だ。それに今日はジャングル手前で野営をして、ジャングルに入るのは明日だ」


 レイチェルは前を向き、俺を見ずに答えた。

 カグヤは欠伸をしながら言う。


「ジャングル……アタシ、入ったことないわ」

「そうなのか?」

「うん。だって虫いっぱいいるし……強い魔獣がいっぱいいるみたいだけど、キモイ虫の魔獣もいっぱいいるから嫌なのよ」

「虫の魔獣かぁ……」

「出たらアンタに譲るから」

「別にいいけど」


 カグヤはそう言って荷台から飛び降り、俺の隣で走り出した。


「っと、身体も鈍るし少し走ろうっと! じゃ、競争開始ーっ!」

「あ、待てこら!」

「お、おい!! ラキューダが興奮するだろう!? おい!!」

「わわわっ!? あははっ、速くなったぁ!!」


 カグヤが走り出し、俺が負けじと追い、ラキューダが興奮して俺たちを追い、レイチェルが手綱を必死で握り、ニーアが笑いだす。

 旅はとても楽しく、順調に進んでいた。


 ◇◇◇◇◇◇


 ジャングル前に到着。近くに川もあり、ジャングルに続いていた。

 今日は水辺でキャンプ。砂豚の肉を焼いて冷えた水を飲む。オアシスの町ではあまり補給できなかったので、パンが残り少なかった。でも食べる!!

 食事を終え、片付けを終える。


「レイチェル、水浴びしよっ!」

「ああ。では坊ちゃま、キレイキレイにしましょうね~♪」

「い、いいよぉ……ぼくはフレアさんと」

「だ~め♪ ささ、身体と頭と……あ、あそこも、お尻もキレイキレイぶっふぁぁぁぁっ!!」

「何アンタ……川が汚れるから鼻血止めなさいよ」


 興奮したレイチェルが鼻血を噴き出した……こいつ、マジでキモイな。

 すると、カグヤが俺を睨む。


「アンタ、覗いたら蹴り殺すからね」

「いや、興味ないし」

「……それはそれでムカつく」

「じゃあどうしろってんだよ……いいからさっさと行けって」

「ふん」


 ニーア、レイチェル、カグヤの三人は水浴びへ。

 俺はシラヌイと一緒に焚火に当たってのんびりしていた。


『くぅん……』

「あ、今日はお前も洗うからな」

『きゅーん』

「そんな声出しても駄目だぞ。ちょっと汚れてるし臭う」

『わんわんっ!!』

「はは、キレイにしてやっから」


 俺は水を飲み、大きな欠伸をした────。


『────火火火、聞こえるか、兄ちゃん』

「……ん? この声……親切な焼き鳥?」

『だーれが焼き鳥だコラ』


 すると、俺の右腕がボワッと赤い炎に包まれ、第一地獄炎の魔神器『火乃加具土命』が現れた。

 声は魔神器から聞こえる。


『よぉ、久しぶりじゃねぇか。元気してるかい?』

「いやいや、なんで? 普通に喋れんの?」

『ああ。波長が合った時とお前が死にかけてるときだけな。今回はたまたま波長が合ったから話しかけただけ』

「ふーん……」

『火火火。驚かねぇの?』

「別に。今更だろ。ところでなんか用?」

『別に。波長が合ったから話しかけただけ』

「そうかよ。あ、そうだ聞いていいか? ラーファルエルと戦った時に言われたんだけど……俺の炎、ヌルいって」

『ヌルいねぇ……そりゃそうだ、第一地獄は不完全だしな。それに第二地獄炎、あのクソババァの炎も中途半端な覚醒だし』

「え」

『いいか、炎を使えばいいってもんじゃねぇ。魔神器を使えばいいってもんじゃねぇ。地獄炎はオレたち魔王そのもの。火火火……もっともっと、オレたちの力を引き出せば……』

「ひ、引きだせば……?」

『ま、面白いことになるだろうぜ。それと、オレや第二地獄炎のババァだけじゃない、他の連中も兄ちゃんに力貸してくれるかもな』

「え? また?」

『火火火、兄ちゃん、けっこう好かれてるぜ? 第三地獄炎のあいつも……っと────き────ら』

「あれ? おーい?」

『ああ────時間────じゃあな────』


 次の瞬間、右腕が燃えあがり魔神器が消えた。

 再度、自分の意志で魔神器を出してみたが『火乃加具土命』の声は聞こえなかった。


「……ま、いっか」

『くぅん?』


 シラヌイを撫でると、顔を赤くしたニーアを連れたレイチェルとカグヤが戻ってきた。


「ふぃー、気持ちよかったぁ」

「坊ちゃま、ねんねしましょうねー?」

「ひ、一人で寝れるよぉ」

「お、戻ったか。じゃあ次は俺。シラヌイ、行くぞ」

『わんわんっ』


 カグヤたちと交代で水場へ。

 さぁて、シラヌイを綺麗に洗おう。


「…………」


 ちょっとだけ気になった。

 第三地獄炎……どんな炎だろう?

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
連載中です!
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― 新着の感想 ―
[良い点] 面白く読ませて貰っています。 [気になる点] 焼き鳥さんはよく「火火火」と、言っていますが、 これの読みは「ヒヒヒ」か、「カカカ」のどちらでしょうか? 気になって昼夜構わず寝てしまいそうで…
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