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地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第三章・神風の銀狼カグヤ

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新たな十二使徒

「ほぇぇ……もう嫌だぁ」


 聖天使教会本部。

 十二使徒のズリエルは、高く積まれた書類の山を見てゲンナリし、机に突っ伏してしまった。

 やることが多すぎる。

 ラーファルエルの降格、好き放題やってる残りの十二使徒、様々な残務処理。なぜかズリエル一人で処理をしていた。


「うぅ、なんで私ばっかり……出会いが欲しい、美味しい物たべたい、ふわふわな布団の中で居眠りしたい……」


 十二使徒イチの苦労人ズリエルは、死んだ目で書類の一枚を掴む。

 それには、『十二使徒『風』ラーファルエル降格報告書』と記されている。ミカエルが出した書類で、誤字脱字だらけなのでズリエルがチェック、アルデバロンに提出する書類だ。


「ラーファルエルさん……」


 ラーファルエルが、地獄門の呪術師に敗北した。

 報告では、最初こそ優勢だったが、第二地獄炎の炎が現れ平静を乱し敗北ということになっている。

 ラーファルエルは千年前の大戦に参加しておらず、地獄炎にも種類があることをわかっていなかった。圧倒的な熱量を持つ第一地獄炎相手なら負けない。それこそがラーファルエルの敗因だ。

 『十二使徒神器』を没収され、第七階梯天使にまで降格したラーファルエル。今は反省用の独房で一人過ごしていることだろう。


「あ゛~~~……地獄門の呪術師って、どうすりゃいいのよ……ミカエルさんは戦う気満々だし、他の方たちもなんかやる気になってるし……たった一人しかいないなら放っておけばいいのにぃ……それより、誰か私を助けてくれぇぇぇ~~~……」


 ズリエルの意見は正しい。

 フレアは、天使に興味がない。「悪い奴らは俺が倒す!!」とか「悪しき天使、その組織は俺が壊滅させる!!」など考えてすらいない。楽しく世界を冒険するのがフレアの目的であり、今までは喧嘩を売られたから買っただけだ。

 ぶっちゃけ相手にしないのが正しい。だが、ラーファルエルを倒したという結果が、十二使徒やその下の天使たちの目に留まったのだ。

 頬もこけ、青ざめた表情でズリエルは笑う。


「そうだ、熱いコーヒーを淹れよう……ははは、仕事仕事~♪」


 フラフラと立ち上がり、自分の執務室の隅にあるコーヒーポッドのもとへ向かう。

 コーヒーポットに手を伸ばすと……。


「あれ?」


 ポットがスーッとずれた。

 もう一度手を伸ばすが、ポットは再びずれる。まるでズリエルの手には捕まらない、そう言っているように見えたが……ズリエルにはすぐにわかった。


「これは……あぁ、メタトロンさんですね」

「あ、バレちゃった。あははは」

「もう、もっと上手くやりなさいよ」

「ごめんごめん。姉さん」


 執務室の天井に、少年と少女がいた。

 全く同じ顔をした金髪の天使だ。双子の天使は手を繋ぎ、クルクルと踊るように執務室内を飛び回る。


「サンダルフォンさん、メタトロンさん……あの~、よければ仕事の手伝いを」

「「や~だよっ! あははははっ!」」

「あ、あはははは……はは」


 聖天使教会十二使徒。

 姉のサンダルフォン、弟のメタトロン。

 双子の天使は、ズリエルをからかうように飛び回り言う。


「ねぇズリエル。ラーファルエルを倒した呪術師だけど」

「あたしたちが狩ってもいい?」

「え、あーいや、うーん……その、危険なのでやめたほうがいいかもですな」

「なぜ?」

「なぜ?」

「ボクたち」

「あたしたちが」

「負けると思うのかい?」

「負けると思うの?」

「い、いえ。そういうわけじゃ……その、ラーファルエルさんもやられちゃいましたし、情報を集めないと」

「いらないよ」

「いらないわ」

「だって」「だって」


 メタトロンとサンダルフォンは手を繋ぎ、ズリエルの前で止まった。


「ボクと姉さんが揃えば無敵」

「あたしとメタトロンが揃えば無敵」

「「あははははっ!!」」

「あ、あはは……」


 ズリエルは、この双子が苦手だった。

 二人の能力は組み合わせれば確かに無敵。過去に、ミカエルに手傷を負わせたこともある。

 だが、目的がよろしくない。


「あの~……地獄門の呪術師と戦う理由がないので」

「そんなの関係ないよ。ヒマだから戦いたいのさ」

「そうね。やることないんだもの」

「じゃ、じゃあ書類仕事を」

「「やだ」」

「…………」


 メタトロンとサンダルフォンは翼を広げ、窓から出ていった。

 ズリエルはコーヒーポットに手を伸ばし、自分のカップにコーヒーを注ぐ……。


「あ……入ってない」


 コーヒーポットは、空っぽだった。

 ズリエルは「ははは」と笑い、一人ぼっちで仕事を再開した。

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
連載中です!
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― 新着の感想 ―
[良い点] ズリエルさん来たー! [一言] ズリエルさんが実はものすごく強く、そして報われると私は信じています。
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