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地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第三章・神風の銀狼カグヤ

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とあるお話

 ずるり、ずるりと砂の上を歩く。

 ここは、レッドルビー王国のとある砂漠。

 全身を白いボロ布で覆った、一人の人間が歩いていた。


「············」

 

 皮膚の露出が一切ない。

 口元が少しだけ見えるだけで、男か女かもわからない。ただ、砂漠の上を歩く何者かは只者ではない。

 何故なら、砂の上を歩く何者かは······大きな荷台を引いていた。

 腰にロープを巻き、荷台と連結している。荷台はラキューダ二頭で引くような大きな物で、砂の上を進む用にソリが取り付けられていたが、それでも人間が引くような物ではない。

 そもそも、歩きにくい砂の上を、巨大な荷台を引いて歩ける人間などいるのだろうか。


「···········!」


 荷台を引く何者かは立ち止まる。

 僅かに覗く口元は汗一つかいていない。周囲を見渡しても何もない砂の上で立ち止まった理由は、ただ一つ。


「へへ、よく気付いたじゃねぇか」


 何者かが立ち止まった少し先の砂上が盛り上がり、斧を持った髭面の男が現れた。

 髭面の登場と同時に、周囲から銃を持った男たちが続々と砂から現れ、何者かに銃を突きつける。


「············」


 何者かは、何も答えない。

 代わりに、髭面の男が答えた。


「一度だけだ。積荷を置いて失せな。命は助けてやる」


 髭面の男、そして何者かに銃を突き付ける連中。

 そう、彼らは強盗団。砂漠を通る商人や旅人を狙う悪質な連中だ。砂に潜り獲物を待ち伏せ、通りかかった者を包囲、そして奪う。

 狙いは、何者かの荷台だ。


「オレはBレート盗賊『砂斧』······冒険者ギルドの連中が付けたレートも役に立つもんだ。ちょいと脅せばすぐに竦み上がっちまう」

「············」

「あん?」


 何者かの口が、パクパク動いた。

 砂斧は何者かがボソボソ喋っていることに気がつく。

 そして、聞いた。




「───釣れた(・・・)




 何者かの口がニヤリと歪む。

 そして、ローブを脱ぎ捨て叫んだ。


神風流(カミカゼりゅう)───『砂波(すなみ)』!!」


 ほぼ垂直に足を上げて下ろし、踵落としを地面に打つ。

 たったそれだけの動きで砂が爆発。まるで津波のように砂が舞い、何者かを包囲していた盗賊たちが銃を構えて引金に指を───。


「撃つんじゃねえ!! 同士撃ちになるぞ!!」

「ぶげあっ!?」「ぶがふっ!?」


 砂が舞う中、盗賊たちの叫びが響き渡る。銃声や暴れる音が響く。

 砂斧は斧を構え銃を抜く。そして、宙に舞った砂が落ちると同時に、何者かが纏っていたローブもフワリと落ちてきた。


「······ウソ、だろ?」


 仲間が、ほとんど倒れていた。

 何人か残っているが、片手で数えられるほどしかいない。

 そして、何者かが引いていた荷台が銃弾により破壊されていた。中身は······岩がゴロゴロと入っているだけ。

 ここで、砂斧はようやく理解した。


「まさか······」

「そ、アタシの狙いは最初からアンタたち。正確には、大きな積荷を狙って襲ってくるマヌケな盗賊たちね」


 砂斧の背後から声が聞こえた。

 振り返るとそこには───。


「なっ───お、女? しかもガキ!?」

「ガキ? アタシは十六、立派な大人よ!!」


 そこにいたのは、少女だった。

 しかも、ただの少女じゃない。腰近くまである銀髪、レッドルビー王国に住んでいるとは思えない純白の肌、そしてとても美しい碧玉の瞳を持っていた。

 胸当てをしてお腹と肩は露出し、両手にはグローブ、膝から上にはレガースを装備している。しかもこのレガース、特注品なのか凝った装飾が施されているようだ。

 砂斧は、この少女に心当たりがあった。


「聞いたことがある······盗賊や高レートの賞金首ばかりを狙う、銀色の冒険者の話」

「お、噂になってんの? ふふーん。アタシも有名になったわね」

「冒険者イチの問題児とも聞くぜ」

「は? だ、誰が問題児よ!!」


 銀色の少女はプンスカ怒る。 

 そして、話は終わりとばかりにつま先を砂地にグリグリと擦りつけた。


「じゃ、やろっか······少しは楽しませてよね」

「舐めんじゃねえぞガキ······!! お前ら!!」


 砂斧の残りの部下が銃を構え、砂斧は斧をブンブン振り回す。


「うっはーっ!! 滾ってきた滾ってきた!!」


 銀髪の少女は笑いながら言った。


神風流(カミカゼりゅう)皆伝七代目『銀狼』カグヤ」

「名乗る名はねえ、砂斧と呼びな」


 戦いが、始まった。


 ♢♢♢♢♢♢


 銀髪の少女カグヤは、一人で砂漠を歩いていた。


「Bレート、あんなもんか······『能力』使うまでもなかったな」


 砂斧とその仲間たちをあっさり倒したカグヤ。

 賞金首や盗賊団をいくつも壊滅させたにもかかわらず、度重なる不祥事で未だに五等冒険者のままだが、カグヤにはどうでもよかった。

 

「はぁ〜あ······つまんなーい。アタシをゾクゾクさせるような強い奴、どっかにいないかなぁ」


 そう言って、オアシスを目指す。

 汗を流し、もう少し賞金首や盗賊でも探すかと退屈そうに欠伸をした。

 カグヤは、ニヤリと笑う。


「アタシを満足させる奴、どこかにいないかなぁ?」

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
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