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地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第三章・神風の銀狼カグヤ

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冒険者ギルド長『マスル・マッスル』

 なぜか俺が悪役。そんな雰囲気だった。

 冒険者ギルド長『マスル・マッスル』とかいう筋肉ダルマと一緒に、冒険者ギルドの二階に来た。

 レイチェルとニーアはすでにいない……まさかと思うけど、このまま町を出たりしないよな。

 というか、さっきからマスル・マッスルとかいう筋肉ダルマがやかましい。


「冒険者は決闘をすることが認められてるのよ。血の気の多い連中ばかりでさぁ、発散する場所が必要なわけ。それで決闘制度を設けて戦いの場を提供するのもギルドの役目なのよ。ルールは簡単、死んだら負け……いい? 君は決闘を申し込まれた。その時点であの四等冒険者キグルくんの挑戦を受けるか蹴るかのどちらかだったのよ。それを無視してキグルくんに暴行……これはダメねぇ。ダメダメだよね」

「あのー、クビでいいんで帰っていい?」

「いやいや、それもダメダメ」

「なんで? 冒険者ってのがクソってのはよくわかったけど……」

「あっはっは。言うねキミ」


 マスル・マッスル。

 焦げたように黒い肌、とんでもなく膨張した筋肉、にこやかで彫りの深い顔、サラサラの髪は七対三に分けられ、風になびくたびに櫛でセットしていた。

 

「きみに損害賠償請求がされてるんだよねぇ。四等冒険者ギグルくんの治療費と慰謝料、合わせて白金貨二枚……きみ、払えるの?」

「むり。つーかあいつがニーアの足をひっかけたのが原因じゃん」

「いや、どう考えても殴ったキミが悪いでしょ? ギグルくんは王国裁判所にキミを訴えるってさ」

「ふーん。まぁいっか、じゃあ」

「いやいや待って待って」

「なんだようっさいなぁ。もういいって」

「いやいや、よくないでしょー? このままじゃキミ、逮捕されちゃうよ? 傷害罪だよ?」

「しょうがいざい? なんだそれ?」

「あはは。犯罪者ってこと」

「犯罪者かぁ……まぁいいや」

「おいおいおい。王国兵に連行されて塀の中、裁判まで臭いメシ食うことになっちゃうぞ? それでいいのかい?」

「嫌だよ。よくわかんねーけど、来るなら迎え撃てばいい。俺、強いしね」

「…………」


 マスル・マッスルは何故かニヤッと笑い、立ち上がる。


「そう。キミはとーっても強い」

「?」

「すぐにわかったよ。しなやかで一切無駄のない動き、地獄のような環境で修行したことがすぐわかる。ギグルくんを敵と認識してからの動きに一切の迷いがなかった」

「…………」

「今時、子供でもわかる。冒険者ギルドでもめ事を起こすことの愚かさをね。キミはそれすら視野に入れず……いや、冒険者ギルドの存在を知らなかったのかな? やると決めたらやるという凄みを感じたよ」

「で?」

「ふふ、キミのような男を待っていた」

「だから、で?」

「キミに、仕事を頼みたい」

「え、やだ。ニーアの護衛をしなくちゃならんし」

「なら、私からニーアくんにお話ししよう。私の仕事をキミに受けてもらいたいから、ニーアくんが許可してほしいとね」

「あ、ずっけぇな」

「もちろん、報酬も支払おう。いやはや、よかったよかった。キミのような男ならなんとかなるかもしれない」

「???」

「うん。キミに依頼したいのは、とある冒険者を叩きのめして欲しい」

「……?」

「私がやってもいいんだけど、それじゃちょっとね……他の冒険者じゃ束になっても敵わないし、なによりあの子は『特異種』だ。魔法使いでも敵いっこない」

「???」

「詳細は明日話そう。キミの泊まっている宿は?」

「『砂のお宿』ってとこ」

「素直すぎるねぇ……わかった。ニーアくんに手紙を届けさせるから、明日また話そう」

「んー、わかった。あ、ニーアの足をひっかけ引っかけた奴は」

「大丈夫。私がきっちり『お話し』しておこう」

「…………まぁいいや」

「大丈夫。今日はこのまま帰っていいよ。キミが逮捕されるようなことはないから」

「ふーん……」


 ま、帰っていいなら帰るけどな。

 というかレイチェル、このままいなくなってたら本気で許さん。呪いのフルコンボを喰らわせて俺がニーアと二人で町を出てやるからな。


「では、また」

「ん、ああ」


 マスル・マッスルはにこやかな笑顔で俺を見送る。

 部屋を出て大きく伸びをして、冒険者ギルドの一階へ。

 俺を見るなりピタッと静寂になる……なにこれちょっと気持ちいい。


「ふん、どういう処分が出た?」

「あ、お前」


 ニーアを転ばせたヤツが俺の前に。

 なんかもう疲れたから、適当に言った。


「お前に『お話』があるってよ」

「は?」


 そして、いつの間にかマスル・マッスルが背後に。ニーアを転ばせたヤツの肩に大きな手が置かれる。


「四等冒険者ギグルくん。そしてその仲間たち……少しいいかな?」

「「「「え……」」」」

「ふふ、すぐに終わる。さぁ私の部屋へ。美味しいお茶とお菓子も出そう」

「「「「…………」」」」


 俺の時はお茶もお菓子も出なかった……なんとなく、そんなことを思った。

 さーて、とりあえず帰るとするかな。 

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
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