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地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第三章・神風の銀狼カグヤ

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熱い国

 船が止まったのは、クソ暑い港だった。

 船から下りるとすぐわかる。ブルーサファイア王国がカラッとした暑さなのに対し、レッドルビー王国のそれはジリジリジリっとした暑さだ。なんというか、日差しがヤバい。雲もないし、火傷するような日差しだ。


「ま、俺は関係ないけど」

「何を言ってるんだ貴様……」

「あ、あついよぉ~……」


 ニーアはさっそく汗をかいていた。すると、レイチェルが持っていた布をニーアに被せる。

 いつものだらしない顔ではなく、真面目な表情で言った。


「坊ちゃま。レッドルビー王国の日差しは肌を焼きます。手足の露出は控えてください」

「うぅぅ……暑いなぁ」

「それと、喉が渇いていなくてもこまめな水分補給を。脱水症状には十分気を付けて」

「だっすい? なーにそれ?」

「身体の水分が失われる現象です。頭痛やめまいを起こします」

「ふぇぇ……こ、怖いよぉ」

「大丈夫。私が付いていますから」

「ほぉ……レイチェル、あんたも真面目な顔でモノ言えるんだな」

「貴様、それは私に対する侮辱行為か?」

「い、いや」


 普段が普段だからな。

 たった数日の船旅だけど、レイチェルのニーアに対する常軌を逸した過保護っぷりは正直引く。

 一緒のベッド、一緒の食事、トイレはもちろん風呂まで一緒に入ろうとしやがる。トイレの時なんてめっちゃハァハァしてたから『口内炎』の呪術を何度も食らわせた。

 ニーア、自分が狙われてるって気付いてるのかいないのか。プリムみたいにドス黒い暗黒面を持ってないから、イヤイヤしつつも流されちまう。

 なんとなく、ニーアをレイチェルの魔の手から救うのは俺の役目……そんな気がした。

 ったく、天使よりめんどくせぇ。レイチェルのやつ、何度も口内炎や虫歯にしても懲りないんだもんな。


「おい、まずは坊ちゃまの装備を整えるぞ。服屋に向かう」

「あいあーい。なぁなぁ、なんか美味いモンも食おうぜ」

「黙れ。その辺の虫でも食ってろ」

「レイチェルぅ……ぼく、おなかへったよぉ」

「はい坊ちゃま♪ この辺りでは美味しい『サソリ焼き』があるので食事にしましょうね♪」

「おいこら」


 レイチェルの案内で、まずは『サソリ焼き』とかいう虫の丸焼きを売ってる出店に向かった。


「おい、これ……食えんのか?」

「ふん。サソリ焼きはレッドルビー王国の名物だ。さぁ坊ちゃま、お召し上がりください♪」

「う、うん……」


 ニーアは、串に刺さったまま丸焼きになった『サソリ』を見た。

 見た目は黒い甲殻類だ。尻尾にハサミ、長い尾には針が付いていたような跡がある。見た目はグロイけど……なんか、いい匂い。

 躊躇しているニーアを置いて、俺はサソリ焼きを尻尾から齧る。


「ん……ん!? おお、美味いじゃん!!」

「ふふ、そうだろう? さぁ坊ちゃま、尻尾からパクっとどうぞ」

「う……わ、わかった! い、いただきます!」


 ニーアも覚悟を決めたのか、サソリの尻尾を豪快に齧る。

 そして渋い顔で咀嚼……『あれ?』という表情、そして俺を見た。


「お、おいしいです!」

「ああ、美味いなぁ!」


 硬そうな黒い甲殻はコリコリして、意外にも肉厚でジューシーな中身からは肉汁があふれ出る。コリコリした触感と鳥肉のような歯切れの良さ、そしてほんのり利いた塩味がたまらない。

 俺とニーアはあっという間に完食。俺は二本目、ニーアはレイチェルの差し出した水をコクコクと飲んでいた。


「基本的に、レッドルビー王国領内では焼き料理がほとんどだ。領内の中ほどでは水は貴重品となっているから、調理に余計な水分を使えないという事情もあるのだがな」

「へぇ~、でも焼き物は好きだから問題ないぜ」

「ぼ、ぼく。お肉はあまり……脂身はダメなんです」

「おいおい、好き嫌い言うなって」

「うぅ……」

「貴様、坊ちゃまを苦しませるんじゃない!!」

「え、いや俺のせい?」


 食事を終え、俺たちは服屋へ。

 そこで、ニーアとレイチェルの装備を整えた。

 レイチェルは鎧を脱いで服屋に預け、ニーアと二人で全身をすっぽり覆うローブを買った。

 鎧を脱いでも剣を腰に装備したレイチェル。なんか一気に旅人っぽくなったな。


 ちなみに俺は何もなし。熱は感じるけど『あちぃぃぃぃっ!?』っていう感覚はなくなった。燃える盛る焚火に手を突っ込んでも火傷しないし、一定の温度は感じるけどそれ以上は全く感じなくなった。なので日焼けなんてしない。日差しも心地いいくらいだ。


「船の上でも説明したが、ここで『ラキューダ』を購入する」

「乗り物だっけ?」

「そうだ。坊ちゃまを乗せる荷車とラキューダ二頭、そして砂漠越えの準備を済ませるぞ」

「あいあーい」

「砂漠……うぅ、不安だよぉ」

「大丈夫大丈夫。魔獣は俺がやっつけるからさ」

「は、はい……」

「馬鹿め。魔獣の危険もだが、砂漠の危険はそれだけじゃない。昼夜の温度差や毒虫、流砂や方位などの自然環境こそ真の敵だ」

「そのへんはあんたにお任せ。俺は護衛だからな」

「フン……」

 

 レイチェルは鼻を鳴らし、二ーアの手を引いて歩きだした。


 ◇◇◇◇◇◇


 ラキューダ。

 デカい馬みたいなやつだ。ふてぶてしそうな顔に砂色の体毛、足は太く蹄は大きい。

 荷車と合わせて二頭買い、砂漠用の荷車に繋ぐ。荷車には食料やテント、旅の道具などを入れ、水を入れた樽をこれでもかと詰め込む。

 さて、少し気になることがある。

 俺は、荷物が満載の荷車を見てレイチェルに言う。


「おいおい、こんなに荷物入れたら座れないだろ」

「バカを言うな。見ろ、乗る場所ならある」

「…………」


 確かにある。

 荷車の椅子の部分に僅かなスペースがあった。ご丁寧に窓際で、荷物が崩れる心配がないように固定されている。

 というか、嫌な予感……。


「さぁ坊ちゃま、お席へどうぞ」

「う、うん」

「おい、まさか」


 二ーアが座り、荷車のドアが閉じられた。

 レイチェルは御者席に座り、ラキューダの手綱を握る。


「さぁ、宿に向かうぞ。付いてこい!」

「やっぱな!! おいこら、俺は走りかよ!?」


 ラキューダが走り出し、俺は慌てて後を追う。

 レイチェルが振り返ると、ニヤリと笑った……こいつ、呪術を喰らったお返しかよ!?


 まさか、俺だけ走りで砂漠越え……ちくしょう、レイチェルの野郎覚えてろよ!!

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
連載中です!
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― 新着の感想 ―
[気になる点] 前話でラーキュダだったのが今話でラキューダになってるから統一した方がいい
[良い点] フレアキャラがとても面白い地獄門の魔王や女王とかに普通に失礼な事を素でやってる辺りが面白いです [気になる点] フレアは死の呪いを習ったって言ってるけどいつか使うのかな? [一言] フレア…
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