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地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第一章・地獄の業火で焼かれ続けた少年
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明るく行こう

「私はホワイトパール王国第七王女プリマヴェーラ。プリムとお呼びください」

「姫様……だいぶぶっちゃけましたね」

「も、もう! アイシェラも自己紹介!」

「ふん……かなりの使い手のようだが、感謝する。私はアイシェラ。プリマヴェーラ様の聖騎士だ」

「…………どうも、ヴァルフレアです。フレアでいいです」


 ホワイトパール王国。

 第七王女プリマヴェーラ。

 聖騎士。

 

 わけわからん単語がいっぱいだ……つーか、ホワイトパール王国ってなんだ?

 王国。確か、王様が治める国のことだよな。姫。つまり、王様の子供……第七王女。つまり、七人目の子供。

 そんな子供が、こんな森でなにを?


「おい、お前……この『死の森』でなにをしていた?」

「へ? 死の森?」

「とぼけるな。強力な磁場が常に発生している森で、入ったら二度と出られないと言われている森だ。お前のような軽装の若者が、こんなところで何をしている」

「いや、それを言うならこっちも……女の子二人でなにしてんのよ」

「う、うるさい!! 見ての通り、だまされたんだ!!」

「……は、はぁ」


 だまされたって……見てわからん。

 転がる男は十人で、一人は燃えてしまった。残りは俺の呪術で苦しんでいる。

 すると、プリムがおずおずと言う。


「護衛を雇ったのですが、姉上の回し者でして……この森に連れられ、殺される寸前でしたの」

「そうだったのか……って、殺される!? あんたが!?」

「姫様に無礼な口を利くな!!」

「アイシェラは黙って!! もう、いちいち喧嘩を売らないの!!」

「も、申し訳ございません……」

「えーと……よくわからんけど、無事ならよかった」


 なんか面倒そうだな……どうしよう。

 

「お、お待ちください!!」

「はい?」

「その、ヴァルフレア様」

「フレアでいいよ」

「ではフレア様。私の護衛になっていただけません?」

「なっ、姫様!?」


 護衛。

 つまり、このお姫様を守るのか。

 身体も鈍ってるし、俺も話を聞きたいし、別にいいか。


「私は反対です!! 素性の知れない青年を同行させるなど……姫様、あなたは自分がどれほど美しい存在か理解していない!! 見た感じ、同世代の少年……隙を見つけ、姫様のお美しい肢体に飛び掛かるやもしれません!!」

「か、考えすぎ……ってかアイシェラ、考えがキモイ」

「うっ……ふぅ。それに、護衛なら私がいます。やはり大人数で動くより、私と姫様の二人きりで」

「それはそれで嫌。アイシェラ、たまに怖い目で私を見るし、ヨダレ垂らしてるの見たことあるし」

「うっ……ふぅ」


 なんかこの女騎士ヤバい……初対面でもわかるぞ。

 

「俺はいいよ。人を探していたし、今の時代の話を聞きたいから」

「まぁ!! では決まりですね。よろしくお願いいたしますわ、フレア様」

「ああ、よろしく」

「ぐぅぅ……私と姫様の二人きりの逃避行が……おのれ、フレアめ」


 アイシェラからの視線が痛い……やっぱりこいつが一番の危険人物じゃね?


 ◇◇◇◇◇◇


 森は強烈な磁場とか言ってたけど、俺には関係ない。

 呪符を取り出し、呪力を込める。


「『出口どっちだ?(デルデルゾー)』……よし、あっちだ」


 呪符が燃え、蛇のような炎が矢印の形となり、俺たちに道を示す。

 道案内の呪術。村で習ったときは使い道なかったけど、役に立つじゃん。


「不思議な魔法ですね……」

「姫様、徒歩で申し訳ございません……馬が生きていれば、二人で乗って森を抜けられたのですが」

「アイシェラ、黙って」

「うっ……ふぅ」

「えーと、とりあえず森を出たらいろいろ話を聞かせて。俺、生き返ったばかりで今の時代のことがよくわからないんだ」

「「…………???」」


 プリムとアイシェラは首を傾げた。

 あ、そっか。俺の事情を話しておいたほうがいいかな。別に隠すようなことじゃないし、話しておけば質問しやすい。それに先生も言ってた。『嘘つきは泥棒の始まり』ってね。


「俺、『地獄門』の炎を安定させるための生贄として門に入ったんだ。なぜか死ななかったんで、地獄の炎を全部喰らって出てきたばかりなんだよ。村に戻ったら廃村になってるし……」

「…………はい?」

「お、お前……何を言ってるんだ?」

「え? だから地獄の炎を魂で喰って出てきたんだって」

「「…………」」


 俺は、自分の考えが正しいかどうか試してみる。

 右手を開き、軽く念じる……すると、赤い炎が皮膚から飛び出した。グラブや衣服は燃えず、自分の意志である程度コントロールできるようだ。

 でも、まだよくわからない。検証が必要だ。


「な?」

「ま、待て。お前……まさか、『地獄門の呪術師』の関係者か!?」

「は? 地獄門の呪術師って……俺は呪術師だけど」

「「!!」」


 アイシェラとプリムとは目を見開く。

 なんだこの反応? 俺、変なこと……言ったんだよな。けっこう時間たってるし、わけわからん頭のおかしい奴って認識されたのかも。


「フレア様……あなた、死の森の先にある村から来たんですの?」

「ああ。俺の故郷だよ」

「……まさか、生き残りがいたなんて」

「は?」

「フレア様。落ち着いてくださいね……あの村は、地獄門の呪術師と呼ばれた、七つの炎の管理者が住まう村でしたの」

「……七つ?」


 おかしいな、炎は八つあったけど。

 アイシェラが立ち止まり、プリムの前に出る。


「地獄門の呪術師は地獄の炎を操る最強の集団と呼ばれた。徒手空拳で重騎士を圧倒し、たった五人の呪術師が千人の大部隊を滅ぼしたとも言われている。この世界最強の戦闘部族として、世界中から恐れられていた」

「へぇ~、そうなんだ」

「ああ。千年前にな(・・・・・)

「……………………はい?」


 千年前。

 え? せ、千年前?


「地獄門の呪術師は、千年前の大戦で滅びた。呪術師の炎と対になる『聖天使』の力によってな」

「そうなんだ~……」

「ああ。子供でも知っている話だ」


 な、なんか……すごい話を聞いているようだ。


「千年前の大戦時、地獄門の呪術師は聖天使を圧倒していた。だが、戦いの最中、なぜか呪術師の炎が弱まり、聖天使が呪術師を倒し始めた。天使の力に地獄の炎が屈服したと伝わっているが……当時の天使は言っていた」

「……ゴクリ」




「地獄の炎が呪術師を見限ったのではない。炎が喰われ力を失った(・・・・・・・・・・)のだ、とな」

「…………え」




 炎が喰われた。

 え、うそ。待て待て。まさか……お、俺のせい?

 地獄門の呪術師が力を失ったのは、俺が炎を喰ったから。

 赤い宝石、青、黄、緑、紫、黒、白……そして黄金の宝石を吸収した。

 全ての炎が消えて、俺は肉体を手に入れて戻ってきた。

 千年前の大戦。あれが、千年前の出来事だったのか?


「…………マジかよ」


 つまり、俺のせい?

 え、呪術師が滅びたのは……おれのせい?


「…………」

「フレア様?」

「あ、いや……なんか、ショックだな。ははは」


 なんてこった……ははは。

 俺、呪術師の生き残りか……なんでだろう。あんまり悲しくない。


「貴様の話を信じたわけではないが……その炎、そしてこの案内、呪術なのだろう?」

「……まぁ」

「なら、この話は終わりだ。外まで案内してくれ。次は、私と姫様の出会いの話をしよう」

「しませんー、私の護衛のお願いの話ですー」

「うっ……ふぅ。そ、そうだった。ではフレアよ、案内を頼む」

「わかった」


 ま、仕方ないか。

 今更悲しんでも仕方ない。生きるために今は歩こう。



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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
連載中です!
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― 新着の感想 ―
[良い点] 呪文がアホくさくてクスってくる しゅき
[一言] 護衛の女、何回イッたら気が済むねん
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