最終話 これからも、地獄の業火は燃え続ける
俺がプリムたちと再会し、二年が経過した。
俺、プリム、カグヤは十八歳。クロネは十七歳。アイシェラは十九歳になった。
呪術師の村は、この二年で開拓が進んだ。
現在、俺たちは先生の住んでいた家を改築し、みんなで住んでいる。
朝……まぶしい陽射しが窓から入り込む。
俺はベッドから顔を出し、欠伸をした。
「ん~……カグヤ、朝だぞ」
「やぁん……もう少しぃ」
「朝だって。ほれ、服着ろって……」
俺は脱ぎ散らかした服を着て、一階へ。
すると、エプロンを付けたプリムが、朝食を作っていた。
プリムの隣にはミカエル。同じく、朝食を作っている。
「あ、フレア。おはようございます」
「おはよっす」
「カグヤは?」
「まだ寝てる。あいつ、朝弱くなったよな」
「夜遅くまで起きてるからでしょ」
「俺はちゃんと起きたぞ」
「はいはい」
俺は椅子に座る。
すると、ほとんど裸のカグヤが、欠伸をしてダイニングへ。
まだ寝ぼけてやがる。こいつ……ここに住むようになってからダラダラしまくってるな。
「カグヤ、ちゃんと着替えないと」
「別にいいでしょ……ふぁ~あ」
「だらしないわね、まったく」
ミカエルは、熱いお茶を淹れてカグヤの前に。
カグヤは寝ぼけながら茶を啜り、盛大に舌を火傷した。
「あぁっづぁ!? あぢぢぢぢっ!?」
「目、覚めた?」
「ええ、もうばっちりね……!!」
カグヤは目元をピクピクさせながらミカエルを睨む。
この二人、仲がいいんだかか悪いんだか。
すると、クロネが二階から下りてきた。
「おう、クロネ」
「にゃん。今日は薬草を採りに出かけるにゃん。フレア、手伝ってほしいにゃん」
「あいよ、任せとけ」
開拓を始めて約二年。
呪術師の村は、少しずつ発展していった。
エルフのナキが、仲間を連れて移住したおかげで、開拓は大いに進んだ。さらに、ヒョウカが村にやってきて移住、家を建て、サリエルやキトリエルと住んでいる。俺は夫だし、よく顔を出すようにしていた。
「在庫を調べにゃいと……」
クロネは、持ち前の調合スキルを駆使し、村で薬屋を始めた。
この辺りの森は、薬草の宝庫らしい。ナキたちエルフも驚くほど、多種多様な薬草が生えてるとか。
と、俺は気付く。
「あれ、アイシェラは?」
「アイシェラ。早朝鍛錬を終えて、温泉で汗を流してから来るそうです」
「自警団の団長サマは頑張るねぇ」
アイシェラは、村に移住した冒険者たちを率いて自警団を結成。
村の警護をしたり、訓練したりと大忙しだ。
たまに俺も呼ばれて訓練する。
話をしていると、朝食が完成。アイシェラを除いた五人で食べ始める。
ミカエルは、パンをちぎって食べながら言う。
「フレア、今日の予定は?」
「畑の手入れと、ナキたちの手伝いかなぁ」
俺は、村の開拓を手伝いながら、のんびり畑を耕していた。
この二年、戦いらしい戦いはない。
俺の中にいる地獄炎の魔王たちも、のんびりしているようだ。アメン・ラーたちもずいぶんと馴染んだみたいだしな。
すると、プリムがいう。
「フレア、村でのんびり過ごすのもいいですけど、やりたいことってないんですか?」
「そうだなぁ……また冒険してみたいな。まだ行ってないダンジョンとかあるし、まだまだ世界には面白いもんがありそうだ。それに、今まで出会った人たちに挨拶とかもしたい」
「ふふ、だったら冒険します?」
「え、いいのか?」
「はい。開拓も落ち着いてきましたし……ミカエル、カグヤ、クロネ、どう思います?」
「賛成!! 村で修行するのも飽きてきたのよねぇ~!!」
「あたしもいいわ。ラティエルたち、元気にしてるかしら……聖天使協会の様子、見たいわね」
「にゃん。うちもたまには外で遊びたいにゃん」
四人とも、賛成みたいだ。
この二年、開拓や休養でのんびりしてたしな。
世界はまだまだ広い。久しぶりに、冒険心が沸き上がってきた。
「よし!! じゃあみんな、久しぶりに冒険しに行くか!!」
「「「「賛成!!」」」」
「待て待て待てっ!! 私抜きで面白そうな話をするなっ!!」
「あ、アイシェラ帰ってきた。アイシェラ、冒険に行くぞ!!」
「ふっ……そう言うだろうと思って、馬車の手入れはしてあるぞ」
「よっしゃ!! 思い立ったが吉日、さっそく出かけるぞ!!」
食事を終え、荷物を馬車に入れ、馬車は走り出す。
すると、木材を担いだナキとすれ違った。
「お、おいフレア!? どこ行くんだ!?」
「悪いナキ!! 俺たち、冒険に出かけるわ!! 村と俺の畑のことは任せたぜっ!!」
「はぁぁ!?」
馬車は走り出す。
手綱を握るアイシェラ、その隣に座るクロネ。
「はははっ! なんだか懐かしい気持ちだっ!」
「にゃん。うち、冒険が楽しみって感じるの、初めてにゃん!」
馬車の窓から身を乗り出すミカエル、プリム。
「まずは、ブルーサファイア王国に行きませんか? 海で泳ぎたいですっ!」
「いいわね! あと、おいしい海産物も食べたいわ!」
すると、どこからかシラヌイが飛び出して、馬車と並走する。
『わぉぉーんっ!! わんわんっ!!』
「シラヌイ、冒険よっ!! アタシたちの冒険っ!!」
シラヌイは鳴き、カグヤは馬車の屋根で大はしゃぎだ。
街道を爆進していると、道を塞ぐように巨大なイノシシがいた。
俺はニヤリと笑い、馬車から思い切りジャンプする。
「お前ら、久しぶりに行くぞっ!!」
そういうと、俺の全身が燃え上がる。
七つの地獄炎……だけじゃない。虹色、水色、灰色の炎も燃え上がった。
そして、火乃加具土命が言う。
『相棒!! 久しぶりに熱くいこうぜっ!!』
「おうっ!! 第一地獄炎、『烈火爆撃』!!」
炎を纏った拳が、巨大イノシシを丸焼けにした。
俺は走り出す。
まだまだ、俺の冒険は終わらない。
地獄の業火で全身を燃やし、広い世界をひたすら走る。
『ふふふ、わらわも楽しくなってきたのじゃ!!』
『冒険の始まりなんだな!!』
『ふふ、主殿に出会えて本当によかった』
『ミーンミンミンミンミー!!』
『さぁ、燃え上がろうじゃないか!!』
『フレア、行こっ!!』
『はぁー……ボク、こんな気持ちは初めてだ』
『あたしもよ。ふふふ……悪くないわ』
『───、───!!』
地獄の業火は、これからも燃え続ける。
俺は真っ赤に燃える右腕を掲げ、叫んだ。
「行くぞ、冒険だ!!」
『おう、相棒っ!!』
さぁ、燃え上がろう。
まだ見ぬ世界へ───最高の冒険を!!
─完─
完結です!!
2年と約2ケ月。応援ありがとうございました!!




