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地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第三章・神風の銀狼カグヤ

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レッドルビー王国への進路

「貴様だけはぜっっっっっっっっっったいに許さんからな」

「悪かったって。あと、トイレ詰まらせたのは俺のせいじゃないからな」

「だ、黙れ!! それ以上喋ると貴様の舌を斬り落とすぞ!!」

「わかったわかった」

「あ、あの。二人とも喧嘩しないで……」

「はい坊ちゃま♪ ふふふふふ、今日も可愛いですねぇ~♪ 食べちゃいたい、ちゅ♪」

「ふえぇ、ぼくは男の子だよぉ……」

「フォーーーーーーーッ!! 元気でたぁぁぁぁっ!!」


 朝からやかましいなぁ……。

 リヴァイアサンを退けた翌日。俺の呪いの効果が切れてトイレから解放されたレイチェルは、俺に怒りをぶつけながらニーアの困り顔に興奮するという器用なマネをした。

 一睡もせずに下痢ピー状態だったから頬がこけ、目元もクマができている。でもニーアと喋るレイチェルは幸せそうだった。

 俺は欠伸をして聞く。


「なぁ、レッドルビー王国に向かってんだろ? あとどんくらいで到着すんだ? 今後の予定は?」


 俺、ニーアの護衛をよろしくと言われただけで、レッドルビー王国のことを何も聞かされてねーや。

 レイチェルは俺を睨んでそっぽ向くが、ニーアが『お願い、教えてあげて』と上目遣いで言う。するとニヨニヨとだらしない顔をしてから俺のほうを向いた……こいつ、ほんと忙しいな。


「馬鹿にもわかるように説明してやる」


 レイチェルは椅子に座り、俺はベッドに座った。するとニーアは俺の隣に座る。


「ぼ、坊ちゃまは私の膝の上に来ましょうね~♪ はいはいカムカム」

「い、いいよぉ。ぼく、フレアさんの隣がいい」

「ぐっきぃぃぃぃっ!! 貴様、覚えてろよ……」

「なんで俺が……いいから教えてくれよ」

「くっ……」


 レイチェルはポニーテールをふわっと揺らし、息を整える。


「現在向かっているのがレッドルビー王国領土際にある港町だ。そこでラーキュダを手に入れ、レッドルビー王国へ向かって進む」

「え、すぐにレッドルビー王国じゃないのか?」

「そうだ。レッドルビー王国は砂漠の国、ラーキュダを使って砂漠越えをせねばならん。それに、いくつか町を経由して進まねばならんから……最低、三十日以上はかかる」

「え!? ま、マジか!? 聞いてないぞ!?」

「今言っただろう」

「うっそ……」


 てっきり、船を下りた先にあるのかと思ってた。

 おいおい、サバク……。


「なぁ、サバクってなんだ?」

「無知な馬鹿と聞いていたが案の定だな。砂漠とは砂の大地だ。限られた場所にあるオアシスを経由しながら進む。私は何度か砂漠越えをしたことがあるから案内は任せろ」

「砂の大地……じゃあ、ラーキュダって?」

「砂漠越えに欠かせない動物だ。暑さに強く脚力も非常に強い。砂の大地を歩ける唯一の動物だ」

「へぇ~」

「へぇ~」


 って、ニーアまで感心していた。

 俺はニーアに言う。


「お前も知らなかったのか?」

「は、はい。ぼく、ずっと宿屋で働いてたので……読み書きも得意じゃないし、本も読めないので」

「ふーん」


 読み書きか。

 千年経った今でも、文字や数字は変わっていない。俺は先生に習ったから読み書きはできるし、呪術師の言語も読める。


「なんなら、俺が教えてやろうか?」

「え? い、いいんですか?」

「ああ。いいぞ」

「ふわぁぁ……よ、よろしくお願いします!!」

「おう「待て待て待てーーーーーっ!! 貴様、その役目は私、私のものだ!!」……うるさいなぁ」


 案の定、レイチェルが興奮して俺に詰め寄る。

 今度は口内炎にしてやろうかな。


「ぼ、坊ちゃまに個別授業……せ、性教育もありだよね? ぐふふ、お、お姉さんが手取り足取り……ハァハァ、ハァハァ!! たまんねぇぇぇーーーーーっ!!」

「ニーア、こいつ海に捨ててくか?」

「だ、だめです!! えと……あはは」


 レイチェル、マジでアイシェラと同類だわ。

 聖騎士ってのはこんなド変態ばかりなのかな。

 すると、我に返ったレイチェルが咳払いをする。


「貴様の役目は護衛だ。いいか、砂漠やレッドルビー王国周辺には高レートの魔獣が多く出現する。Aレートのリヴァイアサンを屠った貴様なら問題ないだろうが、坊ちゃまをしっかり守れよ」

「あいよー……って、レートってなんだ?」

「そんなことも知らんのか……いいか、魔獣は全て『格付け』……つまり『レート表記』されている。最低はE、最高はSまで……いや、それ以上もあるが今はいい。それらは全て、『冒険者ギルド』の『魔獣対策部門』が格付けをしている」

「冒険者ギルド? 魔獣対策部門?」

「…………貴様、そんなことも知らんのか」

「しょうがねぇじゃん。千年前と全然違うし、つーか俺、村から出たことないし」

「「……千年前?」」


 お、ニーアとレイチェルの声が被さった。

 まぁ、別に隠すことじゃないし言ってもいいか。


「ああ。俺、千年間ずっと炎の中を彷徨ってたみたいでな、この世界のこと全然知らないんだ」


 ニーアとレイチェルは、同時に首を傾げた。


 ◇◇◇◇◇◇


 かくかくしかじか、うまうまがじがじ。


「……信じられん」

「地獄門の呪術師……ぼ、ぼくでも知ってます。天使様と戦争をして滅んだ、世界を呪う炎を使った人たちだって」

「俺、それの生き残り」


 生け贄になったこと、炎に包まれたけど死ななかったこと、地獄門の中にあった宝石を吸収したら地獄の炎が消え、外に出たら千年経過してたことを伝える。やっぱり信じられないようだ……まぁそうだよな、俺だってよくわかってないもん。

 でも、親切な焼き鳥や青いおばさんの力は確かに感じている。


「ま、俺はそういうこと。故郷も廃墟になって知り合いも誰もいないから、世界を回ろうと思って冒険中……ああ、今はプリムのためにお前をレッドルビー王国に届ける手伝いをしてるけどな」

「あ、あの、ぼく……今のお話」

「信じなくてもいいよ。俺はお前をじいちゃんの所に送るだけだからな」

「フレアさん……」


 レイチェルは、ふんと鼻を鳴らす。


「確かに、貴様の素性はどうでもいい。貴様に求めるのは、命を掛けて坊ちゃまを守れということだけだ」

「はいはい。言われんでもわかってるって」


 それにしても、砂漠かぁ……どんなところか楽しみだな。

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
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