LAST BOSS・終滅神ジハド⑦/地獄炎の魔王たちによる蹂躙
第一地獄炎、火乃加具土命。
両翼を開き、全身を一気に燃え上がらせる。そして、そのまま急降下。
『火ぃぃぃぃヤッハァァ───ッ!!』
それだけで、銀翼天使が蒸発した。
いかにジハドが生み出した量産型天使といえども、地獄炎の魔王本体には遠く及ばない。火乃加具土命は、興奮を抑えきれず叫びまくった。
『ああっっひゃぁぁぁ!! もう楽しくてしょうがねぇぜ!! ありがとよ相棒!! オレ様自ら、このクソ共を焼き尽くせるとはなァァァァァッ!!』
翼を広げて羽ばたくだけで、銀翼天使が燃え上がる。
火乃加具土命だけで、数千の銀翼天使が消滅していった。
もちろん、暴れているのは火乃加具土命だけではない。
『フン……雑魚どもが』
アヴローレイアが作り出した氷の兵士が、銀翼天使を氷漬けにして砕いていた。
その数、数千。一体一体がミカエルを遥かにしのぐ強さを持つ氷の兵士だ。玉座に座るアヴローレイアは、つまらなそうに言う。
『量産型天使だったかえ? 数万、数百万いようが、わらわたちの敵ではないわ』
本当に、つまらなそうにアヴローレイアは言った。
チラリと視線を向けると、黄色く燃えるモグラたちが銀翼天使を齧っていた。
『もぐもぐもぐもぐ!』『もぐもぐもぐもぐ!』『もぐもぐもぐもぐ!』『もぐもぐもぐもぐ!』『もぐもぐもぐもぐ!』『もぐもぐもぐもぐ!』『もぐもぐもぐもぐ!』『もぐもぐもぐもぐ!』『もぐもぐもぐもぐ!』『もぐもぐもぐもぐ!』『もぐもぐもぐもぐ!』『もぐもぐもぐもぐ!』
黄色く燃えるモグラは分身。
本体であるガイアは、モグラたちに命令した。
『みんな、いっぱい齧るんだな! これまでの借りを返すんだなっ!』
『もぐもぐもぐもぐ!』『もぐもぐもぐもぐ!』『もぐもぐもぐもぐ!』
ガイアの分身。数は二万。
小さいが、一体一体がアルデバロンに匹敵する強さ。
それらが一斉に、銀翼天使たちに襲い掛かっていた。いくらミカエル並みの強さを持とうが、アルデバロン並みの強さを持つモグラが二十以上一斉に齧りついたら、瞬く間に喰い尽くされる。
『よーし! この調子で……あ!』
と、ガイアが視線を向けると、天照大御神が包囲されていた。
『あらあら、私を狙うとは……ふふ、回復しかできない炎だと思われてるのかしら?』
唐傘をくるりと廻し、にっこりと微笑む。
傘を閉じた瞬間───天照大御神の姿が消え、銀翼天使たちが爆発するように吹き飛んだ。
吹き飛んだのは、数百。
何が起きたのか。
『ふふ、私……何もしなくても強いんですよ?』
天照大御神がやったのは、高く足を上げ地面に叩き付けただけ。
それだけで、空間が軋むほどの衝撃波となり、銀翼天使たちを吹き飛ばしたのだ。
生身最強。それが、天照大御神。
『天照大御神、頼むからこの空間を壊さないでくれよ……まぁ、そこまでは無理だと思うけど』
タケジザイテンは、扇を開いて仰いでいた。
彼の近くには、黒く燃える数千の銀翼天使たち。
『さぁ、暴れていいよ』
扇をパチッと閉じると、黒く燃える銀翼天使たちが隊列を形成し、他の銀翼天使たちに襲い掛かる。
呪術により、操られていた。
タケジザイテンの兵隊となった銀翼天使たちは、統率された動きで他の天使たちを葬る。
すると、統率されていない動きがあった。
『死ね、死ね、死んじゃえ』
人形を抱き、うずくまるティル・ナ・ノーグ。
第七地獄炎の幻を利用し、銀翼天使たちを同士討ちさせていた。
ティル・ナ・ノーグは暗く嗤う。
『死ね、死ね、死ね……フレアをいじめるやつ、みんな死んじゃえ。ふふ、ふふふ』
銀翼天使たちは、己の首を己で絞める。
数千の銀翼天使たちが、自分の首を一斉に絞める光景は、恐ろしく異様だった。
こうして、十万ほどいた銀翼天使たちの数は半分以下まで減る。
地獄炎の魔王相手に、たった十万の軍勢が相手になるわけがない。
火乃加具土命は、魔王たちに向かって叫んだ。
『オメぇら!! さっさと終わらせて、相棒の元へ!!』
『わかっておる!!』
『おう、なんだな!!』
『わかりました!!』
『ギーギーギー!!』
『ふふ、楽しいねぇ!!』
『フレア、待ってて!!』
銀翼天使たちの全滅は、時間の問題だった。




