LAST BOSS・終滅神ジハド④/きみに贈る希望の言葉Ⅰ
レッドルビー王国では、ほぼ全ての国民が空を見上げていた。
王城のバルコニーでは、国王ダルツォルネ、ニーア、レイチェル、マルチューラが並んで空を見上げている。
視線の先に映るのは……砕けた魔神器、傷だらけ、血塗れのフレア。
肩で息をしているのが見えた。ボロボロの状態で炎を出し、『銀翼天使』と戦っている。ちなみにこの名前は、ダルツォルネが即興で付けた。
ニーアは、フレアからもらった銃を胸に抱く。
「フレアさん……負けないで!!」
胸に熱いモノがこみ上げ、涙となって流れる。
自分には何もできないもどかしさが、ニーアの胸を満たしていた。
レイチェルは、ニーアをそっと抱きしめる。
「坊ちゃま。ご安心ください……あの馬鹿が、負けると思いますか?」
「レイチェル……」
「私は信じています。あの馬鹿は誰よりも強い。世界を救う炎を燃やし、たとえ神であろうと殴り倒すでしょう」
「……あ」
「信じましょう。そして……私たちにできることは、まだあります」
「え?」
「応援です。黙って見上げていても、何も変わりません」
「でも、届かないよ……」
「きっと届きます。きっと……」
マルチューラは、ダルツォルネに言った。
「陛下。私たち、どうすれば」
「……レイチェルが言ったであろう?」
「え?」
「応援。声を送るのだ」
そして、ダルツォルネは胸いっぱいに息を吸い───叫んだ。
「ヴァルフレア!! 勝て!! 負けるでないぞ!!」
「───っ!?」
いきなりの怒声に、マルチューラは耳を押さえた。
レイチェルも、負けじと叫ぶ。
「ええい!! 貴様が負けるとは思っていない!! さっさと終わらせろ!!」
そして、ニーアも涙を拭い、力いっぱい叫んだ。
「フレアさぁぁんっ!! 頑張れーーーーーーッ!!」
砂漠の国から、フレアを応援する声が上がり始めた。
◇◇◇◇◇◇
ブルーサファイア王国では、ギーシュが複雑そうに空を見上げていた。
「……ムカつくやつだけど、応援したほうがいいよなぁ。はぁ……世界が終わるのは嫌だし、せいぜい頑張ってくれよ。ヴァルフレア「あなた、死にたいようですわね」えっ」
と、現れたのはヒョウカ。
そして、メイドとなったサリエル、執事となったキトリエルだ。
いきなり現れた女と使用人に、ギーシュは驚く。
ヒョウカが指を鳴らすと、サリエルとキトリエルの翼が開いた。
「てて、天使様!?」
「あなた、王族にして次期国王のギーシュですわね? わらわの旦那様になんて態度……」
「え、え、だ、旦那? え?」
「協力してもらいますわよ。わらわたちの声を、フレア様に届けるのです!!」
「え、ええええっ!?」
そもそも、ギーシュがいるのは、ギーシュがいくつも持っている隠れ家の一つだ。
いきなり踏み込んできて無茶な命令をするヒョウカに驚きつつも、翼を広げたまま笑う二人の天使にビビってしまい、ウンウン頷く。
ガブリエルがいなくなり、ようやく自由になったと思ったギーシュ。だが、今度は怖い女と二人の天使が、ギーシュの平穏を脅かしていた。
「さっさと働きなさい!! さぁ、早く!!」
「はは、はいぃぃ!!」
ギーシュの平穏は、まだまだ訪れそうにない。
◇◇◇◇◇◇
イエロートパーズ王国では、魔法学園の中庭に大勢の人が集まっていた。
上空に見えるのは、天使と戦うヴァルフレア。
世界の終焉を宣言したジハドの存在にパニックになり、民衆たちが非難してきたのだ。
その中に、魔法学園の剣士フリオニールと、ラモン、レイラの三人がいた。
共に、フレアを知る三人である。
「フレアくん……!!」
「ふ、フレアくんが、一人で……」
「ど、どうしよう。私たちにできること、ないの?」
レイラが言うと、フリオニールが頷く。
「フレアくん!! 頑張ってくれぇぇぇぇぇっ!!」
と、いきなり叫ぶフリオニール。
いきなりだったのでレイラ、ラモンはビックリしていた。
さらに、大勢の人がフリオニールに注目する。
フリオニールは、この場全ての人に聞こえるように言った。
「皆さん!! 上空で戦っているのは、私の親友ヴァルフレアくんです!! 彼は、この世界を守るために一人戦っています!! 私たちは見ているだけしかできない……でも!! 声を、声援を送ることはできる!! お願いします!! フレアくんのために、皆さんの声を!! お願いします!!」
フリオニールの叫びは、魔法学園の中庭に響き渡る。
「フレアくん!! 負けるな、頑張ってくれぇぇぇぇぇ!!」
「頑張れー!!」「頑張れ、フレア!!」「頑張ってぇぇ!!」
と、少しずつ……フレアを応援する声が。
中庭にいる人たちは、フレアを応援してくれた。
フリオニールは、レイラとラモンに言う。
「届いてるかどうかはわからない。でも……応援せずにはいられないだろう?」
「ふふ、確かにねぇ」
「届いてます。きっと……!!」
イエロートパーズ王国では、フレアを応援する声が響いていた。




