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地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第十四章・炎の彼方へ

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LAST BOSS・終滅神ジハド③/たとえ声が届かなくても

 ボロボロだった。

 魔神器は砕け、全身血まみれ。

 気持ちでは負けていないが、それでも劣勢……敗色濃厚だった。

 プリムたちは、空を見上げる。

 ジハドの力なのか、上空にフレアが見える。だが、実態があるのではなく、透き通った映像のような物がみえた。

 そこに、空を埋め尽くすほど多い銀の量産型天使。フレアを襲い、ボロボロになりながら迎撃する。

 さらにジハドが接近。フレアを殴り、吹き飛ばす。

 転がったフレアに向け、光線が照射される。フレアは地面を転がって回避するが、息も絶え絶えで動きが鈍い。

 何発か光線を喰らい、血が出た。


『ぐ、あぁぁっ!?』

「フレア!!」


 プリムが叫ぶが、声は届かない。

 涙が止まらず、祈るように両手を握ることしかできない。

 隣にいたカグヤも、歯ぎしりしていた。


「ねぇ!! あそこに行けないの!? あんな天使、アタシがブチ殺してやる!!」

「無理よ。行けるならとっくに行ってる……あそこに見えるだけで、あそこにいない。どういう原理なのか知らないけど……」


 ミカエルも、悔しがっていた。

 

「にゃん……あいつ、ヤバいにゃん」

「フレアが、あそこまでやられるとは……」


 クロネとアイシェラは青ざめていた。

 いつも見ていたからわかる。フレアは強い……間違いなく、この世界で最強だ。だが、新たに生まれた神は、そのフレアすら圧倒していた。

 フレアを除いた、この世界全ての戦力が集まっても勝てるかどうか……いや、決して勝てない。

 文字通り、フレアが負ければ世界は滅びるだろう。

 

「我々は、何もできないのか……」

「にゃあ……」


 空を見上げ、アイシェラとクロネは茫然としていた。


 ◇◇◇◇◇◇


 聖天使教会でも、フレアの戦いを見ていた。

 上空に現れたのは、異形の黒い神。アメン・ラーたち三柱とは違う姿。

 だが、持っている力は、聖天使教会……いや、全ての天使が終結しても、まるで歯が立たない力。

 まさに、世界を終わらせ、滅するという名にふさわしい神だ。

 アルデバロンは、上空を見つめたまま言う。


「この世の終わり、または始まりか……」

「あわわわわわ……どどど、どうしましょうアルデバロン様ぁぁぁっ!!」


 ズリエルが慌てる。だが、アルデバロンは落ち着いていた。


「もはや、我々にできることはない。呪術師ヴァルフレアが勝つか、終滅神ジハドが勝つか……」

「うぅ……結婚したかった」

「「この、馬鹿垂れ!!」」

「あいっだぁぁぁっ!?」

 

 いつの間にかいたジブリールとガブリエルが、ズリエルをブッ叩いた。

 吹っ飛ぶズリエル。壁に激突してピクピクしていた。


「アルデバロン、あんた……新しい聖天使教会を、天使の歴史を始めるんじゃなかったのかい? 諦めるなんてあんたらしくないね」

「全くだ。アルデバロン、あたしらにもできることはあるんじゃないかい?」

「何……?」

「あ、あの……なんで私を叩いたんですか?」


 聖天使教会の後ろには、天使の町ヘブンがある。

 これだけの騒ぎ。今頃、階梯天使たちが治安維持に走っているはずだ。

 アルデバロンは、フッと笑った。


「そうだな。我々にも、祈りを捧げるくらいはできよう……くくくっ、呪術師に世界の未来を託すことになろうとはな」

「それでいい。たとえ戦えなくても、祈ることくらいはできる」

「届かなくても、声援くらいは送れるさね」


 ジブリールとガブリエルは、アルデバロンの背中をバシッと叩いた。

 アルデバロンは、頷く。


「ズリエル、ヘブンに住まう全ての天使に伝えろ。呪術師ヴァルフレアの勝利を祈り、声を送れと。我々天使はこの世界を守護してきた。どんなことでもすべきだと、な」

「あ、アルデバロン様……」

「ズリエル。生き残ったら……メシを奢ってやる。任せたぞ」

「は、はいぃぃぃっ!!」


 ズリエルは立ち上がり、天使の翼を広げて窓から飛んで行った。

 そして、上空を見上げ、叫ぶ。


「呪術師ヴァルフレア!! 絶対に負けるなよ!!」


 声は届かない。

 でも、伝えることはきっと、間違っていない。

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
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