LAST BOSS・終滅神ジハド①/地獄の業火に焼かれても
終滅神ジハド。
黒い、とにかく黒い。そして気持ち悪いし……何より強い。
ジハドはゆっくり降り、背中にある骨のような翼を消す。
そして、俺に向かって指をクイクイ……は?
『来い、次元の違う強さを見せてやろう』
「…………」
ピキッと来たね。
俺は呪符を取り出し、『最強無敵であるために』を発動させた。そして、右手に火乃加具土命Spec2を装備、全身を真っ赤に燃やし走り出す。
ジハドは、俺を見てニヤニヤしているだけだ。
ふざけやがって。だったら食らいやがれ!!
「滅の型、『極』───……『紅蓮・破戒拳』!!」
地獄の業火を載せた破戒拳は、ジハドの腹に突き刺さる。
そして、一瞬で全身が燃え上がった。
手ごたえあり。間違いなくベストヒッ『そんなものか』
「えっ」
『そんなものか、と聞いている』
「……なっ」
炎が消えた。
俺の拳はジハドの腹に突き刺さって……いない?
馬鹿な。ジハドの腹で止まっていた。しかも、傷一つない。
愕然としていると、ジハドが俺の肩をポンポン叩く。
『ほら、次だ』
「…………あ?」
『思いつく限りの攻撃を出せ。全て受けてやろう』
「…………」
ココロがスゥ~~~───……っと冷え、一気に燃え上がった。
「馬鹿にすんじゃねぇぞテメェェェェェッ!!」
俺は全ての魔神器を装備し、全身を黄金に燃やす。
そして、思いつく限りの技を食らわせる。
「第一、第二、第三地獄炎!! 『MIX・BREAK』!!」
三種の炎を載せた拳を叩き込む。
「第二、第四、第六地獄炎、『GATLING・GUNKICKS』!!」
氷の両脚に、自己強化の呪いを込め、第四地獄炎で回復しつつ限界を超えた連続蹴りを叩き込む。
「第一、第五、第六、第七地獄炎、『SKYHIGH・AVATER・SOUL』!!」
そして、第七地獄炎で分身。右拳に第一地獄炎を纏い、背中に第五地獄炎の羽を付け、百人以上の俺が連撃を叩き込んだ。
炎を解除し、俺は肩で息をする……かなり疲れた。
少し休んだとはいえ、先生と戦ったばかり。かなり体力を持っていかれた。
「油断するな!!」
「───ッ!?」
先生が叫ぶ。だが、遅かった。
ジハドが立っていた場所から、スゥーっと手が伸びてきた。
指先が、俺の額に向けられる。
そして、恐るべき衝撃が俺の頭に響いた。
「う、っがぁぁぁぁっ!?」
バチン!! と、とんでもない痛みが頭から全身を駆け巡る。
吹っ飛び、地面を転がった。
何十、何百メートル吹っ飛ばされたのか。先生たちがはるか遠くに見える。
俺が食らったのは、デコピン。
ジハドのデコピンが、俺を吹っ飛ばした。
『次だ』
「ッ!?」
ジハドが俺の後ろに立っていた。
馬鹿な。
俺が吹っ飛ばされるより速く、俺の後ろへ。
ツゥー、と汗が流れる。
強い。先生より、天使の誰よりも。
ジハドは俺の腕を掴んで立たせ、正面を向かせる。
『どうした? まだまだこれからだろう?』
「…………っ」
構えを取るが、力が湧いてこない。
まずい。
勝ち目がない。俺は悟りかけていた。
こいつは、次元が違う。
アメン・ラーともトリウィアとも黒勾玉とも違う。
魂の融合で、こうも変わるのか。
『まだ始まったばかり。さぁ、遊ぼうじゃないか』
ジハドはゆっくりと拳を握り、俺に見せつける。
そして───。
「───ッッッ!?!?」
瞬間的に両腕を交差した瞬間、衝撃が。
ジハドの拳。見えない。何をしたのかわからない。ガードできたのは奇跡。次はない。
一瞬で思考が巡る。
身体が硬直した瞬間───銀色の炎が、俺を包み込んだ。
「う、っがぁぁぁぁっ───ッッッ!?」
『はははははっ!! どうだ? 地獄炎の味は……?』
「ぐ、アァァァァァッ……」
『相棒!! しっかりしろ、相棒!!』
火乃加具土命が叫ぶ。
アメン・ラーの炎とは桁が違う。
かろうじで第一地獄炎で防御したが、銀色の炎は第一地獄炎を飲み込んだ。
『さぁ、まだまだこれからだ。ふはははは……共に滅びようではないか』
「ふ、ざけん……な」
俺は立ち上がり、構えを取る。
負けるな俺。心で負けたら終わりだ。
絶対に勝つ。こいつを倒さなきゃ……世界が終わる。
「負けない。俺は、負けない……絶対に、負けない!!」
『ふふふ。敗色濃厚な戦いでこそ、貴様は真価を発揮する。なら……絶望してもらおうか』
銀色の炎が、次元のはざまを燃やす。
そして、炎がヒトの形を取る。
次元のはざまを埋め尽くすほどの、銀色の軍勢だった。
「なっ……」
『我が軍勢、フレアを攻撃しろ』
それは、量産型天使。
だが、色が違う。
銀色の鎧に、銀色の翼。装備も強さもあの黒い量産型とは違う。
しかも、この感じ───まさか。
『一体一体が、ミカエルと同程度の強さだ。数は十万……さぁ、どこまで耐えられる?』
「…………っ」
ミカエルが、十万人。
絶望的な数字だ。
でも、俺は……折れない。折れてたまるか。
『さらにさらに、絶望を……世界中の観客に見せてやろう』
「えっ」
ジハドがパチッと指を鳴らすと、次元のはざまが透明になる。
まるで上空。
下は地面が見える。でも、上空何千何万メートルなのか。
『世界に住む者たちよ!! 我が名はジハド!! この世界に終焉をもたらす神なり!! 見えるだろうか……世界の終焉に抗う、一人の男を!! この者が破れた瞬間、この世界は終わる!! くははははははははははははははははっ!! 見よ!! 世界の終焉を、絶望を!! くはははははははははははっ!!』
こいつ……!?
俺との戦いの様子を、世界中に見せつける気か!!
俺を倒して、世界を絶望させて……その上で、世界を終わらせる気かよ!!
「この、野郎……ッ!!」
『さぁ抗え!! 地獄炎の呪術師ヴァルフレア!!』
十万の軍勢が、俺めがけて向かってきた。




