船の上
「海は広いなぁ~……」
「あ、あわわわわ……ふ、フレアさん」
「なぁニーア、これってなんだ?」
「わわわ、わかんないですぅ……あわわわわっ……うっ」
「あ、おい」
腰を抜かしたニーアの股からジョロロロロ~っと黄色い液体が。おいおい、するならトイレでしろよ。
すると、船室からレイチェルが飛び出し、剣を構えて叫ぶ。
「お坊ちゃまの聖水キターーーッ!! じゃなくておのれお坊ちゃまになんという辱めをヲヲヲヲヲヲヲヲーーーーーーっ!!」
「やっぱキモいなあんた」
「やかましい!! それより貴様、さっさと仕事をしろぉぉぉぉーーーーーーっ!!」
「はいはい」
俺は腰を抜かしたニーアを立たせる。うわっ、ズボンが小便でビッチャビチャだよビッチャビチャ。
ニーアはガタガタ震え、股間を押さえながら言う。
「ふぇぇ……ふ、フレアさぁぁん」
「大丈夫大丈夫。あとは俺に任せて」
「お坊ちゃぁぁぁぁぁーーーーーーっ!!」
俺はニーアをレイチェルに任せ、船の前方を見る。
海面から、長くて太くて青い巨大なウミヘビが船を見下ろしていた。
そう、このウミヘビ……レッドルビー王国港に向かっている途中でいきなり現れたのだ。あまりにも突然だったので船の乗組員も護衛っぽい奴らも誰も対応できなかった。
船首で海を眺めていた俺とニーアが最初に見つけ、思いきり目が合い……今に至る。
ニーアはしょんべんを漏らし、俺は初めて見るヘビに興味津々だった。
「プリムがいたら喜んだろうなぁ……」
『カロロロロロ……』
ヘビは大きな口を開け、反り返ってギザギザになってる牙を見せつけた。
船の護衛っぽい連中が槍や銃を持って出てきた。
そのうちの一人、髭面ムキムキのおっさんが言う。
「おい小僧、そこから離れろぉぉぉぉぉーーーーーーっ!!」
「あ、大丈夫。それよりさ、こいつって食える?」
「バカ言ってんじゃねぇ!! こいつはこの海域の主『リヴァイアサン』だ!! 何隻も船が沈められた海の主、この船も沈められちまうぞ!!」
「え、ほんと? じゃあいっか」
俺は右手から蒼い炎を出し、リヴァイアサンとかいうヘビに向けて放つ。
「第二地獄炎、『フリーズタイム』」
炎がリヴァイアサンを一瞬で包み、カッチカチの氷像にした。
俺はエリザベータおばさんからもらった銃を取り出し弾を込める。弾の込め方はこの船の船員から聞いて覚えた。
「食えたらいい土産話になったんだけどな」
そう言って、引き金を引く。
発射音が響き鉛玉が発射。凍り付いたリヴァイアサンの頭に命中すると、氷像となったリヴァイアサンは粉々に砕け散り、海の底に沈んでいった。
唖然とする乗組員たちに、俺は言う。
「食える奴が出てきたら教えてよ。じゃ」
そう言って、俺は船室に行ったニーアとレイチェルのもとへ向かった。
◇◇◇◇◇◇
「さぁ坊ちゃま、お着換えしましょうね~♪」
「ひ、一人でできるよぉ」
「駄目です。おっと、そのまえにお風呂でキレイキレイにしましょうねぇ? だいじょうぶ。私が綺麗にしてあげますからね~? ささ、脱いで脱いで……はぁ、はぁ」
「れ、レイチェルぅぅ……ふえぇ」
「おっぶぅ……ぼぼ、坊ちゃま、坊ちゃまかわええ、はぁはぁ、はぁはぁ」
「…………」
船室に入ると、レイチェルがニーアの服を脱がしていた。
間違っていない……んだよな? なんか悪いことしてるように見えるのはなんでだろう。
ニーアが俺を見ると顔を輝かせた。
「フレアさん!」
「チッ、生きてやがった……ふん、喰われればよかったのに」
「…………えい」
「ほっがぁぁぁぁっ!?」
なんかムカつくのでレイチェルを急性胃腸炎にしてやった。
ニーアは下半身素っ裸のままレイチェルから離れ、俺のもとへ。
「あ、あの、魔獣は?」
「うん、やっつけたからもう安心。つーかズボン履けって」
「あ、ご、ごめんなさい」
「ぐ、おぉぉ……おなか、痛いぃぃ……き、貴様、私に何を」
「え、急性胃腸炎にしてやった。ほれほれ、下痢ピーで床をクソまみれにするか? さっさとトイレに行っトイレ、なんちゃって」
「お、覚えてろぉぉ~」
レイチェルはケツを押さえてトイレに。
呪力は弱めに撃ちこんだから、明日の朝には回復してるだろう。
「ニーア、着替えたらメシ食おうぜ。ウミヘビ見てたら肉食いたくなった」
「は、はい。あの、フレアさん」
「ん?」
「ぼく、フレアさんのお話、いっぱい聞いてみたいです。フレアさん、すっごく強いんですよね……ぼく、フレアさんみたいに強くなりたいなぁ」
「あはは。悪いな、指導資格持ってないから教えることはできないけどよ、話くらいならいくらでもしてやるよ。じゃあ行くべ」
「は、はい! あ、レイチェルは?」
「ほっとけ。トイレがお友達みたいだし、寂しくないだろ」
俺とニーアは、船の食堂へ。
食堂に向かうと英雄扱いを受けた。なんでも、俺がデカいウミヘビを倒したことで、この辺りの海が安全になったとか。
ニーアは俺をキラキラした目で見るし、俺はお礼にと肉を山ほど食わせてもらえるし、海の旅も悪くないなと感じていた。
「く、ぉぉ……ぼ、坊ちゃまぁ……わ、私が、お傍にぃぃ……っくっは」
レイチェルは、朝方までトイレに引きこもっていた。




