BOSS・呪闘流皆伝『地獄門守護者』タック③/呪闘流の継承者
先生は、炎を使わない。
俺も使わない。使うのは基礎四大行だけ。
甲の型、流の型、滅の型、蝕の型。呪闘流を習うときに、最初に覚える基礎の型。
この四つの型の先に、八極式……七つの地獄炎、それぞれに特化した『型』がある。
俺は、この八極式を習う前に、地獄門に入った。
だから、使えるのは四大行のみ。まぁ、セキドウやヒョウカたちと戦ったおかげで、地獄炎の型がどのようなものか理解した。
その気になれば使える。でも、先生相手ににわか仕込みの技は通じない。
俺は、今まで俺を支えてきた四大行で先生と戦う。
「滅の型、『桜花連撃』!!」
「甘い!! 一度破られた技を再び繰り返す───ん!?」
「からの!! 流の型、『紫電』!!」
桜花連撃は、拳と蹴りの連続攻撃。一瞬で先生に接近してから殴りかかるが、俺はテンポをずらす。さっき、先生に桜花連撃を食らわせたのと同じタイミングでの攻撃をあえて仕掛け、先生が対応した瞬間に一瞬だけ動きを止めたのだ。
その瞬間、先生は間違いなく無防備。だが、先生ほどの達人だと、無防備は一瞬の半分以下。でも……それは間違いなく、無防備。
俺は、自分の最大速度の突きを、先生の肩に食らわせた。
ただの突き。複雑で威力のある技は、躱される。
「くっ……」
「や、やった。はじめて、先生に」
「集中!!」
「ッ!!」
だが、すぐに先生の突きが俺の顔面を掠める。
先生が何も言わなければ、俺の顔面に突きが刺さっていただろう。
俺はバックステップで距離を取り、構えを取る。
先生は、俺の突きが当たった場所を手で払う。
「『紫電』を選んだのはよかったぞ。お前の最大速度の突き、見えてはいたが、身体が動かなかった」
「……はいっ」
「これでわかったな? お前が、ワシに喰らいつく方法」
「ええ、いまのでなんとなくわかりました」
「よし……」
先生の雰囲気が変わる。
俺は背中に冷たい汗が流れるのを感じていた。
「本気で、行くぞ」
と、先生の姿が消えた。
「え」
「シッ!!」
「───ッッッ!?」
瞬間的に頭を下げると、そこに先生の裏拳が飛ぶ。
迷うことも戸惑うことも許されない。
引いたら死ぬ。俺は呪符を何枚も投げ、全身強化の呪いを使う。
それでも、先生の動きについて行くので精一杯だった。
速すぎる。
「滅の型、『羅漢打厳』」
足、腰、捻りの全てを加えた突き。
躱したが、衝撃が空間内を突き抜ける。
確信する。今のは『鉄丸』程度じゃ防げない。岩どころか鉄の塊ですら粉々に砕け散る。
俺が同じ技を使っても、威力は雲泥の差だ。
「躱すだけか?」
「ッッ!!」
「ふ、話す余裕もないか」
ボボボボボボボッ!! と、先生の連撃が俺を掠める。
気を抜けば死ぬ。先生は、本気で俺を殺しにかかっている。
大汗を流し、俺は目を見開く。先生の動きを読むために。
「───ッッ!!」
チャンスは、必ず来る。そう信じて。
◇◇◇◇◇◇
マンドラは、ポツリと呟いた。
「タックめ……本気で、フレアを殺すつもりじゃな」
「フレア……っ」
ヴァジュリが祈るように手を合わせていた。
すると、新しい煙草に火を点けたラルゴが言う。
「タックは本気だ。だが、気付かねぇか?……ワシらですらあいつの本気を相手にするのは難しい。でもよ、フレアのやつ……躱してるぜ」
「……そうだねぇ。昔のフレアだったら、十秒もたなかった。でも今は、ちゃぁ~んと躱してる。躱し、隙を伺い……チャンスを待っている」
「……フレアは、どうなるの?」
「あいつはわかってる。タックを倒すには、『極』しかないってな」
呪闘流の奥義である『極』
八極式の『極』と違い、基礎四大行の『極』は習得が非常に困難である。
ラルゴ、マンドラ、ヴァジュリですら、二つ以上習得できていない。タックですら三つまでだ。
「かかか。驚いたぜ……フレアのやつ、四つ全ての『極』をあの若さで習得したんだからな。あの時のタックの顔、今でも覚えてるぜ」
「…………」
「マンドラ様?」
「……呪闘流の歴史で、四つ全ての『極』を習得した者はほぼいない」
マンドラは、フレアを見てニヤリと笑う。
「四大行を全て納めし者。八極の極みに至る、とな」
「八極の、極み?」
「気付かんか? 八極式という名のくせに、烈、冰、鋼、曲、嵐、黒、幻の七つの型しか存在しない。つまり……あるんだよ。最後の一つの型が」
「「!!」」
ラルゴとヴァジュリはフレアを見た。
今も、タックの攻撃を躱しながら隙を伺っている。その眼は、強い喜びと希望に満ちていた。
呪闘流、最後の継承者としての強い眼だ。
マンドラは言う。
「見せてみな、フレア……呪闘流最後の型、四大行を修めし者だけが使える最後の『極』を。それを使う時、お前はタックを超えることができる」




