表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第十四章・炎の彼方へ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

377/395

BOSS・呪闘流皆伝『地獄門守護者』タック②/父と師

 先生の拳は、重い。

 重量とかじゃない、俺とは違う何かが、拳に宿っていた。

 俺は、先生の拳を『漣』で受け流す。俺の拳も『漣』で流され、互いに決定打にならない。

 何度か拳の応酬をして、互いに距離を取り構え直す。


「先生、やっぱすごい……」

「当たり前だ。まだまだ本気じゃないぞ?」

「知ってる。俺の知ってる先生は───……もっとすごい!!」


 俺は先生の懐へ潜り込み、胸にそっと手を当てる。

 今の俺が出せる全速力。さすがの先生も対応───……え、待った。おかしい、先生が……先生が、俺の全力に(・・・・・)対応できない(・・・・・・)

 そんなわけない、と、俺が速くなった。二つの想いがせめぎ合い、攻撃となる。


「流の型、『波動掌(はどうしょう)』───「迷ったな」


 俺の手は先生の手に触れたまま、先生は俺の手首を取り捻り上げる。


「いででででっ!?」

「この、馬鹿モンが!! 流の型、『波動掌』!!」

「ぐぉあぁぁぁっ!?」


 先生の手が、俺の背中に触れ───衝撃が駆け巡る。

 俺は吹っ飛ばされ、地面を転がった。


「この馬鹿モン!! 迷いながら攻撃を繰り出すとは何事だ!? まったく、ワシに攻撃を当てるチャンスを自ら棒に振りおって!! ワシの教えを忘れたのか!!」

「す、すみませんでした!!」


 立ち上がり、思わず頭を下げる俺。

 すると、どこからかクスクス笑い声が……って、ヴァジュリ姉ちゃんだ。


「まるで、昔に戻ったみたいね……ふふ、懐かしい」

「「…………」」


 思わず顔を見合わせる俺と先生。よく見ると、マンドラ婆ちゃんとラルゴおじさんも肩を震わせていた。

 先生は頭をボリボリ掻き、バツの悪そうに言う。


「あ~……うむ。まぁ、そういうことだ」

「は、はい……え? ってことは、先生……俺の速度に対応できなかった?」

「……さぁな」

「え、え……まさか、先生が?」


 と、ここでマンドラ婆ちゃんが。


「フレア、自信を持ちな。お前さん、修行時代より遥かに速く、強くなってるよ」

「うそ……」

「嘘じゃないさ。今の時代での戦いが、お前の経験に、強さに繋がってるんだ」

「…………」


 俺は拳を見つめる。

 これまで、楽な戦いも多かったけど、ヤバい戦いも多かった。

 頭を使ったこともあるし、勢いだけで殴りかかったこともある。

 それらが経験となって、今の俺を……ヴァルフレアを作っている。


「フレア」

「あ……はい」

「自信を持て。今のお前は強い……修行時代、ワシにかすり傷すら付けられなかったお前とは違う。お前の旅路全てが、お前の力となっている」

「…………」

「自覚しろ。お前は強い」

「……はいっ!!」


 先生は力強く笑った。

 俺も笑い、構えを取る。

 もう迷わない。俺は強い、先生にだって勝てる!!


「先生、行きます!!」


 俺は全力でダッシュする。

 先生は「チッ」と舌打ちした───そう、直線のダッシュ力なら、俺は先生より上。

 右拳を握り、勢いを付けて殴る。


「滅の型、『打厳』!!」

「ぬ、うっ!?」


 先生は両手を交差させて防御。さらに後ろへバックステップして威力を殺した。

 あまりダメージはない。でも、俺の攻撃が当たった。

 先生は無敵じゃない。当てればダメージはある。

 当時の俺は、先生を神格化しすぎていた。絶対に勝てない、やられるに決まってる、せめて痛くない負け方……なんて、後ろ向きなことばかり考えてた。

 でも、今は違う。


「勝つ、先生に……勝つ!!」

「ふふん。ワシも全力を出せる日が来たようじゃな!!」


 もう、気持ちでも負けない。俺は───先生に勝つ!!


 ◇◇◇◇◇◇


「ふふ、不器用だね」

「どっちがだい?」

「どっちも」


 ヴァジュリは、迷いの消えたフレアを見て笑う。

 マンドラも、嬉しそうに笑っていた。

 そして、ラルゴが煙管を咥えて煙を吐きだす。


「タックのやつも不器用だからなぁ……」


 三人とも、昔を思い出していた。

 タックの怒鳴り声、謝るフレア。でも、嫌な感じはしない。

 タックに怒られてしょげているフレアを見たのも久しぶりだった。


「あぁ、懐かしいぜ……」

「うん……」

「……ふふ」


 もう、千年前。

 過去には戻れない。そして、過去を想うにも時間が流れ過ぎた。

 この光景を見れただけでも、安心した。


「……チッ」

「ラルゴさん……」

「もう、あまり時間がねぇな」


 ラルゴの腕に亀裂が入った。

 ヴァジュリも、マンドラもだ。

 死が、消滅が近い。


「「「…………」」」


 三人はもう喋らず、タックとフレアの戦いを目に焼き付けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
連載中です!
気に入ってくれた方は『ブックマーク』『評価』『感想』をいただけると嬉しいです
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ