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地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第十四章・炎の彼方へ

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BOSS・呪闘流皆伝『地獄門守護者』タック①/拳と拳

 相手は、俺の人生で間違いなく最強の先生。

 様子見なんてしない。最初から全力で行く。

 俺は呪符を取り出し投げる。


「『最強無敵であるためにフォース・ゼア・ギルファドム』!!」


 呪術最高の肉体強化。

 身体中に力がみなぎる。ミカちゃんにも持たせた切り札だ。

 俺は真正面から先生に殴りかかる。

 小細工は先生相手じゃ意味なし。真正面から叩きのめす。


「甲の型、『鉄芯甲』!!───えっ!?」


 岩が砕けるような音がした───と思ったら。

 俺の渾身の肘内は、先生の左手の平で軽々受け取められていた。そして気付く……先生の手にも、呪符が握られていた。


「ほれほれ、動け動け」

「ッ!!」


 おちょくるような声は、昔と全く変わっていない。

 懐かしさに揺れかけるが、俺は半歩下がり廻し蹴りを繰り出す。

 だが、先生はほんの少し身体を動かしただけで躱した。


「くっ」

「どうした?」

「まだ、まだぁぁっ!!」


 連続攻撃を繰り出す。

 突き、蹴り、連撃で先生に打撃を与えようとするが、先生は軽々と躱す。

 俺も、いろんな相手と戦って来た。だからこそわかる……先生は、『読み』の力が半端じゃない。経験がなせる先読みで、俺の動きを殆ど予測している。

 たぶん、力は俺が上。速度は同じくらい……でも、先読みにかけて先生は俺の遥か高みにいた。


「滅の型、『桜花連撃』!!」

「流の型───」


 桜花連撃。俺の得意技の一つ。

 先生が先読みできても対応できない速度で攻撃を当てるしかない。そう思った一撃。

 だが。


「ぶへぁ!?」


 顔の右側に、裂けるような痛み。

 先生の手のひらが開いていた。

 そして、動きが止まった瞬間、今度は首に同じ痛みが。


「い、っでぇ!?」


 思わずバックステップ。

 先生は、甲の型ではなく揺れるような流の型で構えていた。

 そして。


「流の型、『蛇行』」

「!?」


 蛇のように、態勢を低く這いずるような動き。

 俺もたまに使う。だが……先生のは次元が違う。

 速度、動きが俺とは違う。

 まるで、数百匹の大蛇が目の前で這いずり回るような。


「流の型、『蛇鞭』」

「ぐぁっ!?」


 バチィン!! と、叩かれた(・・・・)

 それだけで、皮膚に電撃が走ったような痛みが全身に広がる。

 そういや先生は言ってたっけ。殴る蹴るのダメージより、手のひらでバチンと叩いた方が痛いって。

 俺は、身をもって体験していた。


「ほれほれ、どうしたどうした?」

「ぐぬぬぬぬっ!!」

「ワシに一撃入れたら、晩飯の肉を大盛にしてやるぞ……ってか?」

「っ……」


 くそ、くそ、くそ。

 わかっていても、わかっていても……なつかしさで頭がおかしくなる。

 でも、それは先生も同じように見えた。

 先生は、動きを止め……食いしばる。


「ワシもまだまだ修行が足りんなぁ……」

「……」

「ふふ、だがそれもいい。フレア、来い!!」

「───はいっ!!」


 俺は立ち上がり、もう一度先生に向かって走り出した。


 ◇◇◇◇◇◇


 少し離れた場所で、二人の戦いを見守る三人。


「楽しそうにしやがって……」


 ラルゴは、煙管を吹かしながらつぶやく。

 二人が修行時代に戻ったような、そんな風に見えた。

 よく、酒を持ってタックの修行場に遊びに行ったことを思い出す。フレアにつまみを作らせ、無理やり酒を飲ませたことが、昨日のように感じた。


「…………」

「ヴァジュリ」

「ごめんなさい、マンドラ様……」


 ヴァジュリは、涙をぬぐう。

 呪術師の村で、ヴァジュリに敵う呪術師は存在しなかった。だが、強すぎる力は恐怖となり、呪術師の村でもよく思われなかったヴァジュリを、フレアだけが優しく介抱してくれた。

 身体が弱く、満足に起き上がったりできなかった。移動は車椅子で、フレアとする散歩が何よりの楽しみだった。

 そんなフレアが、タックと戦っている。

 強くなった。かっこよくなった。

 ヴァジュリは、この瞬間を見ることができた……生き返らせてくれたことだけは、アメン・ラーたちに感謝をしていた。


「……やれやれ」


 マンドラは、顔や態度には出さなかったが、フレアを孫のように愛していた。

 預言者という、呪術師の村で占い師のようなことをやっていた。

 よく、タックのおつかいでフレアが顔を出しに来た。

 タックにはナイショで、菓子などを食べさせていた。タックには気付かれていたが、黙認してくれた。

 子供もいないマンドラにとって、フレアとの時間は至福の時間だった。


「本当に、強くなった……あーあ、時間があれば武器の使い方を仕込んでやれたんだが」

「そうさねぇ……ああ、そういやあの子にも、悪いことしたねぇ」

「ハイシャオちゃん、ね。でも、フレアがいれば寂しくないわ」


 ラルゴ、マンドラ、ヴァジュリの三人の身体の一部に、ピキリと亀裂が入る。

 もう、時間が少ない。


「最後まで見守ろうぜ。オレたちの希望をよ」


 ラルゴは、煙草の煙を吐き出した。

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
連載中です!
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― 新着の感想 ―
[一言] ああああやっぱり全員だめかぁ…(´;ω;`)
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